英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

ビクトリア時代の生活を見にディケンズ博物館へ

私の職場は、ロンドンのブルームズベリーと言う地域にあります。ロンドンで最も古いシティの西側にあり、19世紀には中流階級の住宅地でした。裁判所や四大法学院など司法に関連する施設が集中していて、現在は法律事務所が多く、地価が高騰して庶民には住みにくい場所になりつつあります。お昼休みなど、会社の周辺を散策すると、18、19世紀の著名人が住んでいたというブループラークを貼った建物が沢山あります。

 

www.aromioakleaf317.com

 さて、昨日の昼は食欲がなくて、職場からは少し離れた場所にベトナム料理屋があったな…と思って、足を延ばしたところ、「ディケンズ博物館はこちら←」という看板をみつけ、ふと思いついて見学してきました。

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ディケンズについては、私は映像化された作品をいくつか見たぐらいで、あまり詳しくありませんので、ファンだったらもっとずっと楽しめると思います。でも、ディケンズが暮らした1830年代の中流階級の暮らしが再現されていたので、興味深かったです。

 

 ディケンズ夫人の刺繍作品が飾られた食堂

チャールズ・ディケンズは英国の作家で、1812年に南部の港町ハンプシャー州ポーツマスで生まれ、1870年に58歳でケント州ハイガムで亡くなりました。1836年に24歳で当時21歳だったキャサリン結婚としました。

この家はまだ新婚時代の1837年から1839年に借りて住んだようです。すでにその頃には作家として成功し始めていたようで、建物は地上4階建て、使用人用のスペースである地階を含めると5階建てとなります。

1階の受付を過ぎて、中に入ると、食堂があります。キャサリン夫人に関する展示物があります。肖像画を見るとかなりきれいな女性です。婚約指輪は小さなトルコ石が並んだデザインでした。

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食堂の様子。展示は季節ごとに模様側されている模様。

しかし、ディケンズというのは、とんでもない男で、同居した妻の妹メアリー(17歳)に恋をしてしまったのです。残念なことにメアリーは1837年に短期間の病を得てディケンズの腕の中で亡くなってしまいます。ディケンズは大ショックを受けて、メアリーを理想化し、これが彼の文学のヒロインに大きな影響を与えたとか。ちなみにこの家は、そのドラマチックな出来事があった家です。

ディケンズ夫妻は結婚17年後、永久に別居した(離婚は当時は選択肢にない)のですが、その理由がディケンズの浮気に耐えかねたとか、キャサリン夫人が心の病でどうしようもなくなったとか様々に言われています。

1階の部屋には、キャサリン夫人が作ったという刺繍の作品や道具入れのついた針刺し(上の写真の左下)なども飾られていました。浮気がちな夫に耐え、次々と妊娠して体調不良の中、部屋に閉じこもって、ろうそくの明かりの下、欝々と作ったであろう作品には、悲哀が漂っているような気がしました。

 

居心地の良さそうなディケンズの書斎

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ディケンズの書斎

2階にあがるとディケンズの書斎です。こちらは、日当たりもいいし、仕事部屋としては中々使い勝手がよさそうです。下の写真のオリーブの飾りのついた水差しはディケンズのお気に入りだったようで、いつも、仕事机の上に花を活けた状態で置かれていたそうです。1840年代にフランス、サヴォアのエクセレバンに湯治に行った時のお土産です。

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リビングルーム

このほか、20代で成功したディケンズは米国を始め、各地を旅行しており、その記録と、作品が海外で出版された様子(日本の漫画版まで)展示されていました。

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左上が花瓶、右はディケンズ氏の正装、中上は髭剃りセット、左下は旅行用机

主寝室は四柱式ベッド

3階は寝室です。何しろディケンズ夫妻は、この家には2年しか住んでいませんから、このベッドが、本当に彼らが使ったものなのか、それともその時代の雰囲気にあうものをもってきたのかはわかりません。しかし、この時代のお金持ちの主寝室の多くにはこのような4本柱のあるベッドが入っています。寒い冬の夜、カーテンを閉じることで、少しでも暖かくする効果があったようです。

 

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さてさて、ディケンズですが、亡くなった妻の妹のメアリーを理想化したからって、これで終わりではありません。キャサリンの他の妹を含む多くの女性に次々に恋をしたようです。

しかし同時に、1953年に一番下の子が生まれるまで10人の子供を産ませているのです(!)。その間、キャサリンは徐々に心の病を進行させて行きました。

今の女性の感覚からすると心の病にならない方がおかしいぐらいの状況です。立て続けの妊娠と出産、たった1回の出産だって産後鬱になったりするのに。そこに夫の浮気・・許せん!

しかし、こういう夫の身勝手は、当時の紳士階級の英国男性では珍しくなかった模様です。いや、現代でも成功して、金銭的な自由度が高くなれば、多くの男が「糟糠の妻」を捨てていますから、珍しい話ではありません。

夫が金銭的に、あるいは社会的に成功するというのは、もしかしたら、妻にとってはいつの時代でも「両刃の剣」と言えるかもしれません。

 

4階は子供部屋(ナーサリー)

4階は、子供部屋と若い親族や子守など使用人の寝室だったようです。子供用の金属のベッド、積み木などのおもちゃや歩行器などがおいてありました。 

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左は洗面台。真ん中は幼児用ベッド、右は紙芝居と洋服ダンス

地下は使用人のスペース

地下は使用人用の広々としたキッチン、台所、洗濯場、勝手口などがありました。台所には、ハーブ類が天井から吊ってありました。

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左はキッチン、右は洗濯場です。

というわけで、駆け足でみてきました。

ディケンズの博物館は他にもケント州などにもあるようです。もう少し、作品を読んでいれば、もっと感動できたのではないかと思いますが、それでも昔の暮らしの雰囲気を味わえました。

この施設の中には素敵なガーデン・カフェテリアがあるそうです。サンドイッチやスープ、ケーキなどが食べられるようです。この博物館のウェブサイトをご覧ください。残念ながら仕事に戻るため、ここはパスしました。

ディケンズ博物館の情報はこちら。

dickensmuseum.com

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玄関。観光客用入り口は右側の扉です。鍵がかかっていませんので押して入ります。

2019年6月21日時点の開館時間、入場料は以下の通りですが、お出かけ前には↑のウェブサイトをご確認ください。 

開館日 火曜~日曜 10時~17時(最終入場は16時)
月曜休(ただし、祝日月曜日は開館)
入場料 大人 9.50ポンド
学生、高齢者 7.50ポンド
小人(6~16歳) 4.50ポンド(6歳未満無料)

 

近所のベトナム料理もおすすめ 

最後に、そもそもの目的だったレストランには、時間切れで寄れずに帰ってきたのですが、もし、安くておいしいベトナム料理が食べたいと思ったら、ディケンズ博物館から5分もかかりませんので、おすすめです。

www.banhmibay.co.uk

ではでは!