BBCの人気番組Gardeners’ Worldの第13回(6月7日(金)放送)についてご報告。
庭での園芸作業
果樹園にボーダー花壇を作る
番組メインキャスターのモンティ・ドンの庭のロングメドウの果樹園に新たにボーダー花壇を作ります。この庭は全体に粘土質で水はけが悪く、しかも英国では比較的雨の多い地方にあります。果樹園の一角も例外ではありません。
このため、中心部が高い花壇を作り、水はけがよいことを好む灌木類を底に植えました。一方、水が好きな宿根草類はそれより低い位置に植えました。本植えにする時に全ての角度から見て確認するようにアドバイスしていました。
植えつけた植物は次の4種類です。
ニシキギ(クロツリバナ)Euonymus europpaeus Spindle tree
野菜の苗の定植
赤キャベツなどアブラナ科の野菜は定植の時期となりました。
なるべく根土をつけてそっと掘り出し、深くしっかりと感覚を広めに開けて定植します。たっぷりと水をやり、1カ月くらい見守ってやれば、あとはそのまま元気に育ちます。
次いで、6週間前に種を撒いたばかりの豆類(今回はフレンチビーンズのエヴァ)が定植できる大きさになったので、植えつけます。種を撒きぞびれた場合は、今の時期なら直接、畑に種を撒くことも可能です。
この場合、植え付けと同時に支柱も立てて、種をいくつかまいて、育ちの良いものを2~3本残せば、この夏収穫できます。定植したビーンズのつるを支柱に無理の内容そっと誘導してやります。
また、スイトピーも支柱に誘導してやりました。茎が折れないよう注意深くやることがコツです。
このほか、背が高くなってしまったSweet cicelyを生え際から15cm位の高さのところで
刈り取ってしまいました。それにより、その裏側に植えたつるバラへの日当たりや風通しよくなり、一方で、Sweet cicely再びこんもりと生えてくるそうです。
耐寒性のないつる植物の鉢植え作り
今回、ジュエルガーデンに、耐寒性がなく、南国原産のつる植物2種類を大きな鉢に植えることにしました。モンティもこれを育てるのははじめてということでしたが、水はけがよく栄養豊富なコンポストを自分でブレンドし、大き目の鉢に丈夫な支柱を立てて植えつけました。この2つの花の花期は7月後半以降だそうです。
植えつけた2種類の花は以下の2つです。
現在のジュエルガーデンの様子。色合いがきれいですね。
戦友たちを悼む果樹園
第二次世界大戦中、英国など連合軍が ドイツに占領されたフランス、ベルギーなどの奪還をめざして侵攻した有名なノルマンディー上陸作戦は、1944年6月6日に開始され、今年75周年を迎えました。戦勝を祝い、戦没者を追悼する盛大な式典のためトランプ大統領も来日しました。英国ではD-Dayと呼ばれます。この作戦、勝利とされ、映画にもなっていますが、実情は戦死者を多く出したかなり過酷な戦いだったようです。
この部分は期間限定でご覧いただけるようです。
生還兵の一人、デニス・ジョゼフ・デーヴィソン氏が戦後、亡くなった戦友を追悼する意味で作ったのが230本のリンゴが植えられているこの果樹園です。
第一次世界大戦中、北フランスからベルギーに広がる平野に咲き乱れたポピーが戦没者や怪我をした人が流した血にたとえられたように、ノルマンディーに広がるリンゴ園から落ちたリンゴに第一次世界大戦時のポピーのような象徴的意味を感じたそうです。
戦後、戦没した友人達を追悼し、平和を願うぶために何をしようかと考え、リンゴ園を作ることを思いついたのだそうです。
RHS チャッツワースフラワーショーの報告
前回(第12回)放送で、切り花のための農場をご紹介したチャッツワースで、英国王立園芸協会(RHS)主催のフラワーショーが6月5日~9日にかけて開催されました。ここからはその報告です。
主催者RHSから素敵な写真が発表されているので、こちらもご覧ください。
チャッツワースは、ピークディストリクト(マンチェスター近郊)にあるデボンシャー公爵の館ですが、広大な庭園の前庭部分をショーのために開放しています。ショーの構成は、これまでお伝えした、チェルシーやマルバーン同様、大テント、モデル庭園などからなります。
大テントに展示された珍しい植物
最初はプレゼンターのキャロル・クレインが大テントの中の、新種・珍種を紹介しました。
Echium Pininana ”Blue Steeple"
Ciss Discolour Rex Begonia vine
Ciss Discolourは室内植物で、日光にあててはいけません。Delphimium Elatumはデルフィニウムの中でも最も背が高く見栄えがします。デルフィニウムは肥料分が多い用土を好むため、植え付けの時はたっぷり腐葉土を入れること。また、水はけの良い土が好きなことにも注意が必要。
優秀な育苗家賞のナーサリー
毎年、チャッツワース・フラワーショーでは優秀な育苗業者1つを選んでMaster Grower賞として表彰していますが今年選ばれたのはペナード・プランツPennard Plantsです。フランセス・トップヒルが訪問し、農園主のクリス・スミス氏に取材してきました。
同氏の父も祖父も野菜を育ててきて、当然、同氏も植物を育てる仕事につき、ずっと植物を育てることに情熱を傾けてきたわけですが、2006年から英国の野菜や果物の伝統的な品種の栽培に力を入れるようになったそうです。
同氏が選んだのは、heritage&heirloom(遺産&家宝)と呼ぶような品種で、かつては長い間、広く作られていたのが、何らかの理由で商業生産からはずれてしまったが、英国の風土や特にその地域の気候にあっており、英国の家庭菜園用にはむしろ適している品種です。
こういったものの種や苗が入手しにくくなっていることに着目、生産してきました。かわいい種の袋に入れてRHSで販売しています。
同氏は風味が良い植物に力を入れており、特に気に入っているのがUgni Molinae (Chilean Guava Plant)です。この植物は南米(チリ、ペルー)原産でビクトリア時代から人気がありました。その実はビクトリア女王が大好きだったそうです。グーズベリーに似た実ですが味はずっと甘くおいしかったそうです。
また、特に気に入っているのが、唐山椒 Zanthoxylum simulans(Sichuan Pepper)だそうです。さらにお茶の木も育てています。今年のチャッツワースフェアには非常に甘い、”Just add cream“と言う名前のイチゴも出品しています。
英国の庭にお勧めの樹木
プレゼンターのジョー・スウィフトは、展示されていた木の中から英国の家庭の庭にお勧めの木を3本選んで勧めていました。(日本の家には大きすぎだと思いましたけど)
平均的サイズの庭におすすめだそうです。7メートルもの高さになるのですが。
クラブアップル Clubapple Malus ”Peter Red”
庭画小さい家にお勧めだそう。姫リンゴです。それでも高さが3~4メートルになるんですけど。
鉢植えで育てられる種類だそうです。日本の家にはこれでしょうか。でも鉢から出したら巨大化しそうです。
モデルガーデンの紹介
キャロル・クレインからはモデルガーデンについても紹介があり、銀賞を撮った次の庭の植栽を紹介していました。
Derby College: Find Yourself…Lost in the Moment
以下の花が植えられていました。庭の様子は上記のリンクをご覧ください。
フランセス・トップヒルが紹介したのはRHSのモデルガーデンで以下のもの。昆虫に多くの花粉をあたえること、色合いがブルーや紫などのグラデーションとなっていて美しいこと、水を有効に使っていることなどをほめていました。
RHS Garden for Wildlife: Wild Woven / RHS Gardening
球根専門ナーサリーを訪問
ジョー・スウィフトはチェシャーのウォーリントンから出展していたナーサリーのバート・ブランカーズ氏を訪問しました。同氏は南アフリカ共和国に生まれ、オランダに育ちました。乳牛の世話をしたり、ガーデンセンターで働いて、19歳でオランダから英国に来ました。このナーサリーでは、今年は1万8,000株のアリウムを育てています。ナーサリーの名前はペトリコール・バルブ・スペシャリストといい、アリウムやベゴニアなどを専門に育てています。
よくお客さんから1年目は大きく咲いたのに2年目は大きく咲かないという相談を受けます。
アリウムの場合、種から十分な大きさの球根となって花が咲くまでに5年、さらに2年くらいしてようやく大きな花が咲き、その翌年、小さくなってもまた肥料をやって世話をして球根が太れば咲く、これは自然のサイクルなので仕方がないのですとバート氏。また、アリウムは非情に水はけがよく、明る苦日当たりの良い場所が好きだとのこと。
オーニソガラム サンデルシーは切り花として人気があり、切り花の状態で3~4週間、切らなければ2カ月くらい咲き続けます。冬越しは、霜にあてないだけではなく、乾燥して、室温のところで育てると翌年もまた花を咲かせます。
つつじ類(Rhododendrons)の庭に行く
プレゼンターのニック・ベイリーはつつじを見るためウィルトシャーのボーウッドハウスガーデンを訪問しました。
つつじ類の魅力は、交配しやすく次々に新しい品種を生み出すことができることです。栽培上の注意点は湿気の多い酸性度を好むことで、植え付け前に土の酸性を見ることが必要です。
下の種類は鉢植えに向いた1メートルぐらいのサイズに成長するものです。土質も調整しやすく、色合いのバリエーションも豊富で楽しめるでしょう。
週末の仕事
1.トマトを地植えにする。日当たりの良い場所がよい。
2.何週間か前に植えた多年草を間引いて育ちのいいものを小分けのプラグ苗用ポットにうつす。種蒔きがまだの場合、まだ間に合うのでこれから蒔く。。
3.緑肥(コンフリー)を高さ10cm位のところで切って刻み、バケツに3週間くらいつけておく。質の良い緑肥ができるが、匂いが臭いので覚悟してください。
4.パラダイスガーデンにハナニラを受け付ける
ゐからのコメント
今回も盛沢山でした。勉強になるけど、ちょっとまとめるのが大変です。写真を全部やめてしまえば早いのですが・・
英国の戦没者追悼のニュースを見ると、私はいつも複雑な気持ちになります。戦勝国では、「戦没者は、その命を犠牲にして国を守った。今の我々があるのは彼らのおかげ」と称えられ、盛大に追悼されています。
私の母方の伯父は同じ戦争で学徒動員され、米軍が工場を爆撃し、16歳の若さで生き埋めとなり、亡くなりました。戦没しなければ、60年ぐらいは人生を楽しめたかもしれないのに、今、伯父が生きていたことを覚えているのは認知症の母だけです。
敗戦国の戦没者には、何の栄誉もなく、ただ歴史の闇に消えていくのです。軍人ではないので、その霊魂は英霊でもないし、どこかの神社に祀られることもありません。同じことはドイツの戦没者にも言えるでしょうが、本当に無駄死にです。誤った指導者を選んではいけない、とつくづく思います。