英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

いよいよ、EU離脱(ブレグジット その44)

皆様、このところ、帰宅後と週末は引っ越し準備に没頭しておりまして、更新できなくて申し訳ありません。しかし今日、2020年1月31日、いよいよ英国はEUを離脱しますので、それについてご報告。

1月31日のイベント

12月の総選挙で保守党が圧勝した後、法的手続きが着々と進みました。1月23日に英国内法であるEU離脱協定法が女王の裁可を得て成立、1月24日に英国とEUがそれぞれ離脱協定に署名しました。EU側も欧州議会が1月29日に英国とのEU離脱協定を承認、1月30日にはEU理事会(閣僚理事会)が英国とのEU離脱協定締結に関する決定を採択しました。

というわけで、2020年1月31日、EU時間の24時、英国時間の23時、日本時間で2月1日朝8時に英国はEUを離脱します。

離脱派はこの日を大々的に祝いたかったようです。しかし、国内を2分する論争となっていたこともあり、大きなイベントはありません。

離脱派政府の意地として、夜には首相官邸のあるダウニング街がライトアップされるそうです。また、夜10時からBBCの離脱特番が報道され、ジョンソン首相のスピーチがあります。

また、記念硬貨50pが300万枚発行されるそうです。この記念硬貨、1月31日に通貨発行局Royal Mintの見学ツアーに参加すれば購入できるそうですが、調べたところ、すでに予約でいっぱいでした。離脱記念に欲しかったのに。たった300万枚では手元には来ないでしょうね。年後半に700万枚追加発行されるらしいですけど(ちょっと未確認情報です)。硬貨の1枚目は、首相に贈呈されるそうです。

一方、離脱反対派はロンドンアイ(大観覧車)の下で抗議集会を行うそうです。また、反対派のロンドン市は市庁舎で「ロンドンはいつでも開いている」アピールなどを行うとしていますが、反対派の活動も地味目。

国家の祝い事の時につきものの、ビッグベンや教会のベルを鳴らすこともないそうです。これは相当、離脱派から要望があったそうですが。

花火もなし。これは、英国の法律で11月5日~12月31日までの時期しか夜間(夜11時以降7時まで)の花火が許されていないためだそうです。

離脱後、何が変わるのか

英国がEUを離脱して、この連載も今回で終了、といきたいところですが、たぶん継続します。とりあえず、現在の予定では2020年12月31日まで移行期間となり、移行期間中はこれまでと全く変わりありません

英国からEUに物資を運ぶときも(その逆も)通関審査はありません。我が家の引っ越しは2月14日ですので、この時期にオランダに引っ越せるのはラッキーなようです。日本とEUのEPAも移行期間中は変わらず適用されるそうです。

ボリス首相は「移行期間は12月末まで。そのあとは延長しない」と言っています。移行期間終了まであまり時間がありません。

 

移行期間後どうなるのか

英国はEU諸国と「モノの自由移動」を何としても継続させたいと考えています。「そのためにEUとの間に自由貿易協定を締結する、それですべて解決だ」というのが離脱派の説明です。しかし、彼らは大事なことを忘れています。すべての自由貿易協定は、関税率はゼロになっても、通関作業は発生するのです。ということは、自由貿易協定が締結されようがされまいが、EUとの輸出入の都度、これまで不要だった通関のための書類を用意しなくてはいけないということになります。

しかし、日本で貿易を経験されている方なら、FTAやEPA用の書類、とりわけ原産地証明書類をそろえることがどれほど大変なことがご存知でしょう。これはコストとして輸出入品の価格に跳ね返ります。だから来年以降、英国の物価は上がるはずです。

一方、通関業者不足という問題はもっと深刻です。絶対数が足りないのです。それを年末までに養成することなんて不可能です。英国で活動する多くの製品を扱う日本企業は、すでにEU域外国との通関経験を持っており、業者を確保していますから安心ですが、そうでない英国の中小企業はEUへの輸出手段を失い、バタバタと倒産に追い込まれるリスクもあります。恐ろしいことです。

もうひとつ、もっと深刻な問題として、EUが採用し、年々、そのレベルを上げてきたVATの簡素化手続きというものがあります。これも、移行期間終了日から使えなくなります。簡素化手続きと言うのは、英国からEUのどこかの国に輸出したり輸入したりする際、VATを帳簿上だけで支払うという仕組みです。こういったものが今後は輸出入のたびに実際に支払わなければいけなくなります。VATは最終消費者が支払うので立て替えですが、それでもキャッシュを用意しなくてはいけないので、これも事業のコストとなります。

EUとの通商交渉が順調に行っても上記の問題は回避できません。さらに規格の相互承認とか様々な問題があります。

交渉は難航が予想されています。というのは、英国の離脱得を認めたら、英国に続いて離脱しようという国が出てきそうだからです。EU側としては、それを何としても阻止したいので、英国の都合の良い要求には断固応じないでしょう。もっと目に見えないイジメを英国にする可能性もあります。

とはいうものの、英国のEU離脱は「沈みそうな欧州という船を見捨てる本能的なものだ」、と言う説もあります。日本人としてはこのあたりじっくり注視させていただこうではありませんか。(下の漫画がぴったりだってので借用させていただいております。英国の政治漫画、好きだわ。)

 

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Dave Brown画 Independent紙1月31日付