英国の庭から

欧州調査歴25年のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

EU離脱 年明け以降のスケジュール(ブレグジット その9)

英国のEU離脱(ブレグジット)問題は、議会が12月21日から1月6日の間、年末年始休暇に入ったことから、宙に浮いたまま年を越します。

メイ首相が12月11日に予定されていたEU離脱合意案の議会採決を「否決されそうだから」という前代未聞の理由で延期したことは前回、ご報告しましたが、その後の動きと現時点でわかっている範囲の来年のスケジュールについて説明します。

議会採決延期直後、メイ首相はEU首脳を訪ね、離脱合意文の一番問題となっている北アイルランドに関するバックストップに関する部分(※)の修正を要求しました。しかしこれに応じたEUの政治家は一人もおらず、同首相は手ぶらで英国に戻ってきました。

 

その間、与党保守党内から首相に対する不信任案が出て、12月13日に否決こそできたものの、100名以上の保守党議員がメイ首相に不信任の票を投じたことが明らかとなり、メイ政権の権威が完全に失墜した状態です。さらに休会直前に労働党の妖怪コービン党首が「こんどは労働党から不信任案をだすぞぉ」と脅しています。

メイ首相は事実上、死に体に近い状態なのですが、同首相の強みは有力な対抗馬が一人もいないことです。

それにしても、離脱日まであと100日しかないのに、離脱に関してまったく決まっていない状況で、17日間も議会を休会させてしまうこの状況、全く理解不能です。労働党のコービン党首ですら、1週間早めて1月2日から議会を再開したらどうかと提案しています。

現時点での予定ですが以下の通り。

1月7日~議会での審議再開

1月14日の週(1月15日で確定) EU離脱合意案の採決(保守党内100人の反対表明があり、閣外協力の北アイルランド民主統一党(DUP)も反対していますので、現時点で可決の見通しは低いとみられています。)

2月上旬 上述のEU離脱合意案で否決された場合、21日以内に政府は今後の方針を発表しなければなりませんので、2月11日までには方針が発表されるはずです。

(この部分、1月9日に出た動議により、3日以内となりました。1月18日までに方針が出るはずです)

3月29日23時 英国のEU離脱

2020年12月31日 ノーディールではなく移行期間が設けられた場合の移行期間終了日

2022年12月31日 バックストップ(防御策)発効日
 
2月上旬に、政府が発表する方針としては、議会解散総選挙、再国民投票の実施、首相辞任、離脱日延期、EUとの再交渉など諸説あります。現時点では、政府はノーディールのまま3月29日に離脱すると主張しており、「ノーディールに備えよ」という警告を多々発しています。治安強化のため、軍隊なども貼り付けると発表し、12月19日には様々なノーディール離脱対策やガイダンスが大量に発表されました。

しかし、ブレグジットがなくても、この国、ダメダメなんですよ。EU域外からの旅行者は空港での入国審査に2時間待ちの状況だし、クリスマスシーズンには各地の高速道路が何時間も大渋滞しているし、病院のベッドは足りないし、救急車で運び込まれた患者が24時間以上放置されるし、道路は穴ぼこだらけだし・・正直言って、この国は国民が思っているほど、立派な国でも先進国でも、もはや全くないです。きっぱり。

 

ノーディールなどしたら、どう考えても経済も社会も大混乱してしまいます。欧州経済だって下手すると危機にまきこまれるかも。


自国民や長年密接に付き合ってきた同盟国を脅迫するような政治手法をとる国に未来はあるのでしょうか・・・

※ EUの北アイルランドに関するバックストップ(防御策)とは
現在の離脱協定案では、アイルランドと北アイルランド間に物理的国境を設けず「モノの自由移動」を維持するため、2020年12月31日までに何らかの技術的解決策を講じるとしています。もし、この期日までに解決策が講じられなければ、2022年12月31日にバックストップが発効するとされています。バックストップ発効後、北アイルランドはEUの関税同盟に残ります。また、大ブリテン島が北アイルランドと通関なしで「モノの自由移動」を維持したい場合は、大ブリテン島(つまり英国全体)もEUの関税同盟に残ることになります。大ブリテン島については、英国とEU双方が合意するという条件の下、バックストップからは離脱は可能です。しかし、その場合、今度は北アイルランドと大ブリテン島の間に何らかの通関審査を設けることが必要になります。

 

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ザ・サン(2018年11月11日付)