英国の庭から~海外生活ブログです

欧州調査歴25年以上のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

保守党大勝で1月末のEU離脱が確定(ブレグジット その43)

こんにちは!ゐです。私は総選挙投票中の12日夕方に英国を発ち、13日午後15時過ぎに羽田空港に到着しました。

高度1万メートル以上の場所でうつらうつらしているうちに、総選挙の開票は終わり、ボリス・ジョンソン首相率いる保守党が地滑り的大勝利となっていました。

今回は総選挙の結果と今後についてまとめてみました。

小選挙区制と労働党&自由党の調整不足のせい

まず、選挙結果からです。下表の通り、保守党は改選前の議席を大幅に上回る67議席増となり大勝しました。一方、労働党は40議席を失うという歴史的な大敗を喫しました。EU離脱阻止を全面に掲げた自由民主党も9議席減と大敗、ジョー・スウィンソン党首自身が落選しました。スコットランド国民党(SNP)は保守党から7議席を、労働党から6議席奪う形で大勝利しました。(スコットランド全体では58議席)

政党 議席数 得票率(%) 増減
保守党 365 43.6 +67
労働党 203 32.2 △40
スコットランド国民党 48 3.9 +13
自由民主党 11 11.6 △9
民主統一党 8 0.8 △2
シン・フェイン党 7 0.6 0
プライド・カムリ 4 0.5 0
緑の党 1 2.7 0
ブレグジット党 0 2 0
イギリス独立党(UKIP) 0 0.1 0
その他 3 2 △29
合計 650 100  

選挙戦終盤には、すでに保守党勝利は予想されていたのですが、67議席増というのは勝ちすぎです。

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Peter Schrank画 12月15日付 https://twitter.com/Cartoon4sale/status/1206172767017742336

実際に上記の投票率をみればわかるように、保守党支持率は50%を下回っています。それなのに、議会の過半数を超える大勝となったのは、小選挙区制のせいに他なりません。

小選挙区制であることは最初からわかっていたのだから、野党側は保守党の対立候補に票を絞って保守党を勝たせないようにするといった戦略を練るべきだったのです。

実際に反保守党支持者に多くが、このままでは保守党が勝ってしまう、「賢く投票しよう」と訴えていたのです。しかし、肝心の労働党と自民党の両党首がイデオロギーにこだわり、そうした協力には全く関心を示さず、保守党を勝たせるように行動してしまったのです。

今回の選挙前にはボリス首相に嫌気がさした保守党の古参議員が多数引退したり、ベテラン議員が何人もノーディール阻止法案に賛成した理由で9月に保守党を追放され引退しており、そうした選挙区で、野党側には保守党から議席を奪還できる可能性があったのです。しかし、そのほとんどの選挙区で奪還できませんでした。

本来「勝てるはずだった」選挙で、大敗した労働党のジェレミー・コービン党首は辞任する意向のようです。ただし、その時期はまだ発表されていません。

ブレグジット報道に飽きた英国民

今回の選挙でわかったことは、この選挙の争点が、やはりブレグジットだったということです。そして、多くの人が、3年以上にわたって連日報道されたブレグジットの話題自体にうんざりしていたということでしょう。また、国民の半数以上が、既にEU離脱を受け入れ、もはや離脱撤回を望んでいるわけではないということです。

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Bob Moran画 12月15日付 https://twitter.com/Cartoon4sale/status/1205936832892080128

英国民がこう考えた背景には、EU離脱によって具体的にどのような影響が自分たちに及ぶのか、正確に説明されていないということがあります。

政府や離脱派の実に卑怯な部分であり、英国民にとっては不幸なことですが、もはやどうしようもありません。

だから、投票日直前にボリス首相案で離脱した場合の地域経済へのマイナスのインパクトがリークされたスコットランドの住民は、EU離脱派ではなく、英国離脱を標ぼうするSNPに投票しました。

その一方で、日本も同様ですがTwittersやSNSので情報を得ている人は有権者のごく一部に過ぎず、大衆は大手新聞やテレビの情報を鵜呑みにしているということもよくわかりました。

さらに、英国民のブレグジットに対する姿勢の裏には、その国民性があると思います。投票日の少し前、仕事の関係で訪問した英国の中小企業の方は、「EU離脱は大変残念なことだ。でも、戦時中もそうだったが、大きな困難の時には、きっと誰かが妙案を出してくれるものだ。EUを離脱して、仮に関税がかかっても、すでに北米などへの輸出をしているので、それと同様になるだけだ。大丈夫」と語っており、何とも楽観的なことに改めて驚いたのです。

そのとき、私は以前、交通違反研修で聞いた「英国の交通違反者講習で学んだ事故に至る心理」の話を思い出しました。

その内容は以下の通り。

1.楽観主義(これは、人間に本能的に備わっているもので、楽観的にとらえる機能が崩れると精神的にきついのだそうです)

2.経験主義(これまでトラブルがなかった経験から多少の違反をしても大丈夫、あるいはこの程度なら問題ない、と思ってしまう)

3.自己尊重教育の成果(これは英国の教育の弊害で、子供のころから励まして褒めて育てるので、常に「自分は悪くない」と思ってしまうのだそうです)

こうしたバイアスにより、小さな交通違反を繰り返したり、注意力散漫になったりして、運が悪いと事故につながっていると警察は分析していました。

まさに今回の選挙行動もこれと同じだと思いました。さらに、こうしたバイアスに加えて、英国人特有の博打好きもあるように思いました。つまり、「よくわからないけど、ここはいっちょ、勢いがありそうな奴に賭けてみる」という賭け事好きのあれです。もしかしたら当たるかもしれません。外れることもありますけど。

英国は豊かな国です。資産家がカジノに出かけて大損しても、それは彼らの勝手。貧乏な日本人である私が心配する筋合いではないのかもしれません。

ボリス首相のEU離脱協定で1月末にブレグジットが確定

さて、保守党が大きく過半数を上回った下院では、秋にボリス首相がEU側と合意してきた離脱案に基づき、公約通り1月31日に離脱することが確定しました。その後、英国は2020年12月末までの移行期間に入り、その間にEUとの今後の在り方について、ボリス首相の離脱案通りとなれば、EUとの間に自由貿易協定(FTA)を締結しなければいけません。

しかし、これは相手のある問題です。EU側が今、一番恐れているのは、EUの各種規制(環境保護、データ保護、労働者保護、金融面での透明性確保等々)などの基準を英国だけ緩くして競争力を強め、その結果「英国独り勝ち」になることです。そうなれば、続々と後を追いたい国が出てくることでしょう。だから、EU側は英国に対して譲歩したがらないと思います。

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Dave Brown画 Independent紙 12月14日付  https://twitter.com/Cartoon4sale/status/1205522299895603207

しかし、英国は交渉すれば通るものと思っている。このギャップがどう埋まるかはわかりません。

英国側が持っている交渉の玉の中でEUが喉から手が出るほど欲しいと思うのは巨大な漁業専管水域ぐらいです。あとは英国の6,600万人の消費者。しかし、後者は生鮮食品とか英国にとって不可欠なものばかり輸入しているので、英国側にとって交渉手段にならないと思われます。むしろ輸出しない、とナポレオンのような戦術に出られたらたちどころに経済が破綻してしまうでしょう。

下の漫画は自分の嘘で首を絞められるボリス首相。

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Dave Brown画 12月14日付  https://twitter.com/Cartoon4sale/status/1205856152933810176

しかもこの1年の交渉をみれば、EU離脱後の二国間協定のような膨大な量の交渉をたった11カ月間で終えるとは思えません。しかし選挙でボリス首相は、2020年12月までの移行期間を延長しないと公約しています。

もっとも大ウソつきなので、また撤回するかもしれませんけど。撤回したときには約30人と目される強硬離脱派議員が反発するでしょうが、仮にその30人が造反しても下院の過半数を得られるほどの大勝利だったので、たぶん移行期間は延期されるかもしれません。

そういうわけで、ノーディールでの離脱の可能性はかなり低くなりました。英国とEUが移行期間を延長する場合、2020年6月末までに双方が決断し、合意していないといけません。延長できず、かつ2020年12月末までにFTAが発効しなければ、ノーディールでの離脱はあり得ます。 

スコットランド独立に道を開くスコットランド独立党の躍進

EUとの交渉難航に加えて、今後注視したいのが、英国からのスコットランド独立を主張してきたスコットランド国民党(SNP)の躍進です。今回、選挙期間中にブレグジットによってスコットランドが一方的に不利になるとの調査結果がリークされたこともあり、もともとEU独立を選択していなかった、この地域の不満は高まっています。以前から英国から独立してEUに再加盟することを訴えてきたSNPが圧勝したことは、スコットランド独立に住民がゴーサインを出したという意味にも捉えられます。

ボリス政権への不満などから、今後どのような展開になっていくのか、行かないのか注視したいところです。

北アイルランドについては、まだ詳細な運用に関する取り決めすらできていないようです。アイルランドがEU域内に事実上残った場合、スコットランド住民の不満は計り知れません。アイルランドと北アイルランドの合併を夢見る人もいればそれを暴力を使っても実現しようとしたり、阻止しようとする人も出るかもしれません。テロリスクも含めこちらも注視が必要です。