英国の庭から~海外生活ブログです

欧州調査歴25年以上のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

ブレグジットの行方は依然、混とん(ブレグジット その39)

前回、ブレグジットについてご報告してからあっという間に2週間以上が過ぎてしまいました。細かいエピソードは多いのですが、今のところ大勢に変化はありません。相変わらずボリス首相は「(ノーディールでも)10月末に離脱する」「EUに延長をするくらいならドブで死んだほうがまし」と言い張っています。しかし、「議会の長期閉会は違法」とする最高裁判決が9月24日に下り、首相の立場はいよいよ難しくなってきました。10月末まで首相でいられるのかな?という感じです。

議会閉会は違法と最高裁が判断

前回、ボリス首相が異例の5週間の議会閉会を女王に申請し、認められたとご説明しました。それにより9月10日から議会は閉会していました。

これを法律違反と考えるグループが別々にイングランドとスコットランドの裁判所に提訴し、イングランドではロンドンの高等法院が「政治的な問題であり、裁判所で判断すべきではない」という判決を下し、スコットランドの民事控訴院は「議会閉会の決定は違法」とする判断を示していました。

実は同様の裁判が日本でも行われており、日本の最高裁は「統治行為論」、つまり「高度に政治性を有する問題については、裁判所の権限外である」という一般庶民からみると理屈としか感じられない理屈により、司法判断を回避しています。詳細はこちらのサイトで勉強しましたのでご関心のある方はご覧ください。

イギリス最高裁が下す世紀の判断 - 憲法秩序における政治と司法の緊張関係 -(田上嘉一) - 個人 - Yahoo!ニュース

政府は、最高裁も同様に司法判断を回避するだろうとみていたようです。そのため、スコットランドの判決を不服とする上訴を最高裁判所に行い、ボリス首相は悠々と外遊の旅にでていたのですが、その判決が9月24日に下りました。

その結果は最高裁の11人の判事が一致して「議会閉鎖には十分な根拠がなく、違法」と判断したというものでした。

この判決は、ボリス首相が女王に対して、嘘の助言を行ったことを、遠回りに証明しているのですが、最高裁の判決文は慎重に作られており、首相が嘘をついたとは明言していません。議会を長期に解散するだけの十分な理由を示していないとだけしています。

もし、「嘘をついた」と断定されれば、国家反逆罪となりますから、時代が時代なら斬首刑、中世の英国なら「首吊り・内臓抉り・四つ裂き」の刑となるところです。ともあれ、メディアは「ボリス=嘘つき」一色ですし、野党側がこれに勢いを得て、首相に退陣を迫ることは明白でしょう。

以下はボリスに騙されたと嘆く女王の漫画ですが、「あなたが騙された最初の女性じゃないよ」というサブタイトルがついています。

f:id:ouiouigarden:20190926134640j:plain

Daily Mail 9月25日付 Paul Thomas画

さっそく9月25日から議会再開

判決を受けて9月24日、さっそくバーコウ議長が議会を招集しました。ちなみにバーコウ議長ですが、9月9日の閉会間際に10月末の退任を発表しています。下の漫画は、バーコウ議長を先頭に議会に戻る議員達。

<評伝> 「オーダー!」のバーコウ英下院議長、貫いた独自路線 - BBCニュース

f:id:ouiouigarden:20190926142421j:plain

9月25日付 テレグラフ紙 Patrick Blower画

さて、再開された初日の議会は惨憺たるものでした。

再開早々、ジョフリー・コックス法務長官が、この人はボリス首相に議会閉会は違法でないと助言した人物なので当然、引責辞任を迫られているわけですが「この議会は死んでいる。解散する勇気もない」と逆切れ発言をし、野党側の猛反発にあいました。

夜にはニューヨークから急遽帰国したボリス首相が参加、「政治に関する問題について裁判所が判断をするのは誤り」と開き直りました。

首相は3時間にわたって言いたい放題、これに対する野党の応酬で議会は大荒れとなりました。特に形勢が悪化著しい保守党議員による暴言に対して、野党議員が一斉に憤慨、議会ではタブーとされた用語が飛び交う非難の応酬合戦となりました。

ボリス首相は「不信任案を出してみろ」と挑発もしたのですが、野党側はそのあたりは結束しており、「ノーディール阻止の道が確保できなければ、解散はさせない」という戦略のようです。

このため、少数与党のボリス政権としては打つ手がなく、それがなおさら不満を高めているという状況です。

この日の議会の様子は、BBCのローラ・クンスバーグ政治担当編集委員「開いた口がふさがらない」と呆れた旨のコメントしているほどでした。翌9月26日の朝刊各紙には「恥を知らない男」をはじめとする首相批判が満載です。

f:id:ouiouigarden:20190926143324j:plain

9月26日付、ガーディアン紙

最高裁判決後、ポンドが急上昇

ところで、最高裁判決の直後、ポンドが対ドル、対円でも急上昇しました。つまりボリス首相によるノーディール強行のリスクが遠のいたという判断です。

しかし、実際にノーディールにならないためには、EU側を説得できる内容の離脱案を英国側が出すか、すでにEUが認めたメイ首相の離脱案を議会が承認するほかありません。ちなみに、ボリス首相が主張する、北アイルランドのバックストップ条項をはずした「離脱協定」案を認めるかどうかについて、欧州議会は9月18日、認めないとの採決をしています。

離脱延期は、英国側だけでなく、EU側の承認も必要ですが、これ以上離脱延期を認めても意味がないとする強行な意見がEU側でも高まっています。

英国議会は何とか首相に離脱延期申請を出させようと焦っているのですが、肝心の首相にその気がなく、さらにその申請を出してもEU側が認めるとは限らない状況ですので、10月末にノーディールで離脱する可能性は依然としてちっとも低くなっていないのが現状のようです。引き続き注視していきたいと思います。