英国の庭から~海外生活ブログです

欧州調査歴25年以上のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

合意なきEU離脱にまい進する英国の憂鬱 (ブレグジット その35)

 

今、ブレグジット問題はどうなっているのか

しばらく、ブレグジットの話題から遠ざかっていました。今、ブレグジットがどういう状況にあるかというと、

1.EU離脱期限が10月末に延期されたこと、

2・メイ首相がが6月7日に保守党党首を辞任し、7月23日に選出される「次期首相」に今後のかじ取りが託されたこと、

この二つの理由から、全く進展していない状況です。

 

次期首相は誰がなるのか

問題はこの「次期首相」。保守党は、6月20日までに5回の同党所属国会議員の投票(無記名なので、メイ首相の夫ですら、妻がだれに投票したか知らないそう)し、最終的に本命のボリス・ジョンソン前外相とジェレミー・ハント現外相の二人が残りました。

この2名について、全保守党員による郵便投票で勝敗が決められる予定です。結果が発表冴えるのが7月23日。

BBCによれば保守党の党員数は、ブレグジットの投票後、3万人程増えて16万人、その20%がイングランド南東部在住(人口比ではこの地域は全英国の14%)、女性は30%。65歳以上が40%、白人が70%、3分の1が年収5万ポンド以上、5分の4が離脱支持、64%が合意なき離脱を支持しています。また、北アイルランドには党員はほとんどいないそうです。つまり、全く民主主義的とは言えない選出方法です。

かつての栄光を夢見る懐古趣味の勘違いオヤジたちが、未来ある若者を無視して英国の将来を決めてしまうのです。これは恐ろしいことです。

 

何一つ良いところがないジョンソン候補

本命のジョンソン外相ですが、一言で言って、英国版トランプです。いや、トランプ以下かもしれません。これほど、各方面から叩かれる首相候補も珍しいのですが、外国人の目からみても、この男に良い点はひとつもありません。(きっぱり)

英国人のおそらく多くの人から見ても、やはり良い点を見つけることは難しいようです。ロンドン市長をしていたころは、面白い、わかりやすいと人気があったようですが、嘘つき、無責任、方言癖、ギャンブル癖、女性癖の悪さなど、およそ良い話を聞きません。記事捏造でタイムズ社を解雇されたこともあります。

同氏については「マーマイトのようだ(発酵食品で日本の納豆やくさやのように好き好きがある)」と評されたりしています。そのせいかどうか、一部の保守党員には「若い頃のチャーチルのよう」「チャーミング」と映るようで「彼しか、やれる人はいない」と最後の期待を託されているのです。

 

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Patrick Blower https://twitter.com/Cartoon4sale

期待外れのハント候補

一方、ハント外相、これまで大きな失言は「EUなんて旧ソ連みたいなものさ」というこの1回だけでした。この発言だけで、外相としての適性が問われるレベルのミスです。とはいえ、ジョンソン候補に比べれば、多少まともかも・・とみられています。

しかし、選挙戦が盛り上がるにつれ、ジョンソン候補と競うように公約合戦をし始めたのです。ジョンソン候補が年収5万ポンド(約700万円)以上の人の所得税を減らす公約を打ち出せば、それに対抗するように法人税引き下げを掲げるといった様子。いずれも財源にアテがあるわけはなく、無責任、この上ありません。エスカレートするにつれ、保守党外の評価も落ちてきました。

 

ノーディールも辞さない両候補

ジョンソン候補は、もともと強硬離脱派で、だから、保守党の離脱派に支持されているわけですが、それを意識して、先々週、「10月末に合意なしの離脱も辞さない、やる(離脱)か、死か」と発言しました。翌日の新聞はそのセリフが踊っていました。

ところがこの男、とにかく臆病で発言に一貫性がないのです。会見内容なんて聞いていると、途中から何を言っているのか、わからなくならます。新聞に叩かれると翌日には「合意なしの離脱は数100万分の1の確率だ」と前言を修正しました。

ハント外相も国民に訴えたところで、保守党員の票を集めなくては意味がないと考えているのでしょう。「ノーディールは避けたいが、やむを得ない場合は、ノーディールでも離脱する」と発言するようになりました。従って、英国の次期首相が就任するとEU側が妥協しない限り、英国は10月末にどんな悪条件でも離脱するのです。

 つまり、今、これまでで一番、10月末にノーディールで離脱する可能性が高まっているといえます。

 

議会には阻止できないのか

春の国会では、「ノーディールでの離脱はしない」という決議が可決されています。しかし、タイムズ紙が今の状況を受けて、6月26日、27日の2日間にわたって”Everything you need to  know about no-deal”(ノーディールについてあなたが知っておくべき全てのこと)という特集記事を掲載したのですが、26日に掲載された政治的手続きによると、2018年EU離脱法の規定に基づき、英国が10月31日に離脱することは、決定事項であり、次期首相と議会が合意しない限り、それを延長するようEUに申請できないのです。

EU側は、3月同様、延期申請が出れば、彼らは自分たちのせいでノーディールによる経済的悪影響の責任を負わされたくないので、再延長を認めるかもしれないが、もはや認めないかもしれない・・という状況です。

 次期首相に離脱延期の意志がない以上、EU側が再交渉に応じようと(応じないとEU側は言い続けていますが)応じまいと、10月末には離脱することになります。

 この極めて危うい状況をなんとかしようと、ノーディールで離脱した場合には、政府の主要部局の予算を凍結するという法案が2度ほど議会に提出されましたが、1回目は否決、2回目も7月1日に、バーコウ下院議長によって却下されてしまいました。

 こうなると、議会は7月22日に次期首相が選出された直後に、不信任案を提出するしか、方法がありません。しかしながら、野党側も一枚岩ではなく、また保守党と閣外連立を組んでいるアイルランドの民主統一党(DUP)が保守党を支持すれば、不信任案も否決される可能性があります。また、仮に不信任案が可決されても、それから選挙をして、保守党を倒して、EUに延長を申し入れて、となると間に合うかどうかは疑わしいです。

 

残留派は指をくわえて待つしかない状況

What UK thinks と言う団体による世論調査によれば、EU離脱は正しいか、誤りかという問いに「誤っている」と回答する国民が多数派になりつつあるそうです。最新調査では正しいが41%、誤っているが47%となっています。

In hindsight, do you think Britain was right or wrong to vote to leave the EU? – What UK Thinks: EU

しかし、「誤っている」と思う国民がどうあがこうと、もはや、英国の将来は、時代錯誤の離脱強硬派の保守党員の手によって離脱に着々と歩んでいるのです。しかし、危機感はあまり感じられません。例年同様に夏休みがそろそろ始まりそうです。

日本人の長年の憧れだった英国の民主主義は、この程度ものだったということです。 

タイムズ紙のまとめの後編「各分野への影響について」は次のページをどうぞ!

 

www.aromioakleaf317.com

 

ではでは!