英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

英国の交通違反者講習で学んだ事故に至る心理

今週はいつも以上に疲れた週でした。1つは毎晩遅くまで議会でブレグジットの採決が行われたものでLIVEをみて夜更かししてしまったこと、もう一つは火曜日に交通違反者運転講習に参加したことによります。今日はこの講習についてご報告。

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講習で渡された冊子

 <何の規則に違反したのか>

2月にでウィズリーガーデンに行き、気持ちよく過ごして、数日経ったある日、「交通違反」の通知が来ました。

英国には街中、道路などに無数に監視カメラ(cctv)が設置されています。路上には、スピード違反やさまざまな規則違反を捉えるカメラが設置されていて、取り締まりを強化しており、これが立派な歳入源。だから最近、どんどん新しいカメラが設置されて、運転しにくくなっています。
さて、今回もそんなカメラにばっちりとられてしまったわけですが、実は私、交通違反講習は初めてではなく、2年ほど前にも受けたことがあります。そのときは、近所の4車線道路を日曜の朝7時過ぎに時速50キロほどで走っていて、スピード違反となりました。その道の最高速度が30マイル(48キロ)だということに気が付いていなかったのが敗因。

警察からの通知には、本来は3点減点と100ポンドの罰金だが、初犯につき2時間の講習を受ければ、罰は見逃してやると書いてありました。当然、受講料97ポンドを払ってありがたく英国のスピード制限の仕組みを学んだのです。

英国の道路は、脇に1軒でも家があれば、どんなに道が広くても市街路扱いとなり最高時速が30マイル(48キロ)となります(例外あり)。以来、スピードカメラに細心の注意を払って、先日もスピードを守ったつもりで帰ってきたのでした。

しかし、カメラは思いがけないところにあったようです。私の犯した罪は”failed comply with highway code red/green arrow / lane closure light signals”。通知書をみると、前回の「スピード違反講習」とは違う”What's Driving Us?"という名前の講習があるそうです。前回同様、参加すれば(受講料97ポンド)、100ポンドの罰金と3点減点は見逃してくれるそう。「ブログのネタになるぞ」と夫に励まされたこともあり、参加してきました。

道路交通規則は”The Highway Code”と呼ばれます。高速道路だけじゃなく、道路全般の規則の意味です。

さてそれに違反したものの、実は私、通知書を読んでも何に違反したのかよくわかっていませんでした。最初は信号無視かと思ったのですが、そんな記憶もないし、黄色で通り抜けたせいかな‥と思って、休み時間に講師の先生に聞いてみました。

すると、高速道路への合流道路の上方に、走って良いレーンといけないレーンの表示があり、どうやら私はその日、走ってはいけなかったレーンに進入してしまった模様。たぶん前の車についていったのかもしれません。

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場所は国道から高速道路に入るSlip roadと呼ばれる長い合流道路で、他の車も高速でどんどん走っているところです。コーンが置いて走っていけないと表示してあればともかく、何もなければわかるはずないじゃないですか!罠にはまったような気分。

 

<よくわかっていなかった英国の交通規則>

1.黄信号の意味

今回の講習で長年英国に住んでいながら私は肝心なことを誤解していたことを学びました。それは、信号の色の意味です。英国の信号は赤-赤黄ー緑ー黄色ー赤という風に変わります。さて、まずこの黄色ですが、英国ではyellowではなくてamber(琥珀色)と呼びます。

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英国政府サイトから

琥珀色は『止まれ』の意味なのだそうです。日本では「注意して進め」と習ったような気がしたのです。しかし、これも誤解で、調べたら日本でも黄信号は「止まれ」。「止まらなくてよいのは、急ブレーキをかけると安全に止まれない場合のみ」というきまりで、黄信号で走り抜けると罰金対象だそうです。知らなかった。

黄色信号は止まれ!注意して進めは間違いなので注意|交通事故弁護士ナビ

さらに英国では、青信号は「進め」ですが、条件付きで、進行方向が開いている場合のみ進んでよいのだそうです。進行方向が開いていないのに、後ろからクラクションを鳴らして威嚇するというのは減点対象。(これも知らなかった)

英国の十字路には、停車禁止の網目模様が描かれているのですが、この中に入って停止して良いのは右折するときだけ。左折や直進のときは、進行方向が開いてなければ進入してはいけないのだそうです。また、道路の脇にジグザグが書かれているところは駐停車禁止。学校の入り口前に書かれていて、孫を迎えに行って停車したところを撮られたおばあちゃんもいました。

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左が十字路、右が学校前。

 

<講習はグループによる討論形式>

 講習に参加したのは23人。スピード違反以外のほとんどの交通違反の人が来ていて、その参加理由は19種類もあったそうです。

 さて、その23人が4つのテーブルに分けられて、2時間、講義を聞いたりテープを見ながら一々話し合って意見をまとめて発表しなくてはいけないのです。このプロセスが英国の学校の授業と同じで、面倒くさい(英語だし)。

講習は

1.違反内容、

2.交通規則知識のおさらい、

3.規則を守るためにはどうしたら良いか、

4.心の乱れの影響とそれをコントロールするにはどうしたらよいか、

5.注意力散漫による事故を防ぐために心がけることは?

という順に進みました。

テーマごとに話し合い、受け身で聞いているだけではダメなところが日本の免許更新講習と違うところです。

さて、今回の講習で面白いと思ったのは、英国人が事故に至る心理です。参加者全員に「10段階で自分の運転マナーを評価する。1が最低、10が最高、5が中間とすると自分はどこにいると思うか」という質問がされました。すると殆どの人が7~9を選びました。どの講習でもこういう結果になるそうです。

本来、平均の5になるはずが、誰もが自分に甘い評価をする。その理由は心理的なもので、3つのバイアスがかかっていることによるのだそうです。

そのバイアスというのが

1.楽観主義(これは、人間に本能的に備わっているもので、楽観的にとらえる機能が崩れると精神的にきついのだそうです)

2.経験主義(これまでトラブルがなかった経験から多少の違反をしても大丈夫、あるいはこの程度なら問題ない、と思ってしまう)

3.自己尊重教育の成果(これは英国の教育の弊害で、子供のころから励まして褒めて育てるので、常に「自分は悪くない」と思ってしまうのだそうです)

こうしたバイアスにより、小さな交通違反を繰り返したり、注意力散漫になったりして、運が悪いと事故につながるということだそう。

英国人のこのバイアス・・ちょっと英国のブレグジット交渉スタンスにも通じるような気がしました。

ブレグジットといえば、講習で4.の心の乱れに関する部分で、参加者に「あなたの運転に気が散る要因となるものは何か」という質問がされました。そこで、多くの人が「ブレグジット」と答えたのが印象的でした。そして2番目は”ワイフ!”と答えた人がいて、爆笑でした。

というわけで、講習は終わり、無罪放免となりました。