英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

とりあえず3月29日の離脱は延期(ブレグジット その24)

ブレグジットが予定されていた3月29日まで10日を切った3月20日、メイ首相から正式に離脱延期を求める書簡がEU側に届けられ、3月21日~22日にブリュッセルで開催された欧州理事会(EU首脳会議)で審議されました。その結果、EU側は次の2つの条件付きで延期を認めるとしました。
1.英国議会が3月25日の週にEUと合意済みのEU離脱協定案(メイ首相の離脱案)を承認すれば、5月22日までの延期を認める。
2.3月25日の週にメイ首相の離脱案が議会で否決、または承認を得られなければ4月12日までは延期を認める。
3月29日にノー・ディールで離脱することはなくなりましたが、4月12日以降にノー・ディールで離脱する可能性は依然残っており、可能性はむしろ大きくなっています。

 

3月25日以降のいつ、再び「意義ある採決」が行われるか、政府はスケジュールを発表しておらず、また採決が行われない可能性が高いという記事も出ています。

 EU離脱案自体は内容が変わっていないことから、バーコウ議長が示したとおり、採決は議会ルール違反となる可能性が高いです。政府は議長が独断で反対しているかのように責めていますが、ガーディアン紙によれば、議長が反対する前に労働党議員から同じ疑問が呈されていたそうです。そもそも、否決された議案を脅しながら何度も採決にかけて賛成票を増やそうとするのは、お粗末過ぎて話になりません。

 また、仮に採決が行われるとしても、3月20日の夜、メイ首相が行った議会を非難する口調のスピーチ(実際に聞き直すと、はっきりそう言ったわけではなく、「次は議員が決める番だ」と述べただけなのですが、聞きようによっては「自分は悪くない、悪いのは議員よ」とも受け取れ、そう報道されている)を行ったもので、離脱派、残留派、保守党、労働党を問わず議員が猛反発。可決の可能性は低いです。さらに、メイ首相の退任を求める声も議会内外を問わず高まっています。

 また、現在、政府に「離脱50条の撤回」を求めるオンライン嘆願が殺到しており、すでに3月23日朝の時点で400万人を超えたということです。

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もともと残留派だったロンドンの夕刊紙、イブニングスタンダード紙は3月23日にロンドンで行うデモ行進に参加するよう呼び掛けました。イブニングスタンダード紙は3月21日付の記事で「メイ首相、風向きが変わったのを読め」「50条を撤回しろ」など強い調子で首相を批判しています(3月21日付)。

上記の写真は実際の行進の様子(写真の出所はロイター)。主催者側は100万人が参加したとしています。実際に参加した人のツィートをみると、あちこちで行進しようとしたが、人が多すぎて動かなかったそう。それでも多くの人が「やるべきことはやった」と帰路についたそうです。 

キャメロンの向こう見ず(reckless)な国民投票で始まった英国のEU離脱は、メイ首相のrecklessな「ノー・ディールによる離脱」に終わる可能性が高いことから「行政府の暴走をいかに止めるか」という動きに変化しつつあります。議会制民主主義という政治の形を発達させ世界の民主主義の手本となってきた英国、ここで新たな手本を世界に示すことができるでしょうか?

各紙は、残留派で超能力者のユリ・ゲラー氏(私の世代の人にとってはなつかしい、スプーンを念力で曲げて見せた人)が「自分のテレパシーでメイ首相がEU離脱するのを止めて見せる」と約束したと大きく報道しています(笑)。

 今日(3月23日付)のガーディアン紙は、内閣府が作成したという秘密文書「ノー・ディール時の計画」を入手したと報じています。かなり混沌とした状態を予想している模様。これから読もうと思っています。ご関心がある方は、こちら。

 Secret Cabinet Office document reveals chaotic planning for no-deal Brexit | Politics | The Guardian