英国の庭から

欧州調査歴25年のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

議会はノー・ディールでの離脱を否決(ブレグジット その21)

昨晩に引き続き、今日も午後7時頃にブレグジットに関する重要採決が行われました。毎晩のことなので、正直、飽きちゃったのですが、一応ご報告。

 

今日は事前の予告通りメイ首相から「3月29日にノー・ディールの状態でEUを離脱しない」という議案が提出され、採決が行われる予定でした。しかし、首相の議案には「ただし、英国がEUと何らかの形で合意しない限り、ノー・ディールで離脱するという法的な規定は残っている」という但し書きが付いており、これを不満とした動議や、それに関連した修正動議が提出されました。

 

その中から、バーコウ議長が討議するものを選び,その中に保守党のスペルマン議員から提出された「いかなる場合でも、ノー・ディールでは離脱しない」という文言を追加する修正動議が入っていたのです。しかし、今後の交渉余地を狭めかねない、として保守党内で同議員に対し説得が行われ、同議員が動議を引き下げたところ、労働党のクーパー議員がその修正動議を引き取る形で再提出、採決されるという異例の形になりました。そして、それがメイ首相の意志に反して312票対308票という4票差で可決されたのです。

 

メイ首相は前日、党内拘束を外して投票させると約束していたのですが、政府の意図に反する形の議案に替わってしまったことから、保守党院内総務が急遽党員に対して拘束をかけることにし、反対票を投じるよう指示しました。これにより保守党内は大混乱、ノー・ディールに反対の議員が賛成に投じたほか、閣僚議員が棄権、結局,321票対278票で可決されました。

 

こうしたやり方に党内でも反発が広がり、投票直後に閣僚が一人辞任しています。

 

ともあれ、「3月29日にノー・ディールの状態でEUを離脱しないし、いかなる場合でも、ノー・ディールでは離脱しない」という議会決議が成立したわけですが、これには法的拘束力はなく、ノー・ディールのリスクがゼロになったわけではありません

明日14日に行われる延長期間に関する採決の結果により初めて3月29日にノー・ディールで離脱しないことが確定するのです。

 

今回のやり方を見て,しみじみ呆れるのは、この期に及んでまだ,「ノー・ディール」という脅迫手段を手放したくない、という姿勢です。そこには、自分が勝つことしかありません。国民の生活も経済も関係なし。

 

しかも、メイ首相は「来週中に自分の合意案に賛成しないと,延長期間は長いものになる」と脅すようなスピーチを行い、現状の離脱案のまま、もう一度来週20日に「意義ある採決」を行う可能性を示唆しています。旗色が悪くなった強硬離脱派を何とか取り込めないかと期待しているようです。これだけ敗北しても辞めるそぶりも見せないし、そのしぶとさたるやゴキブリ並み。

 

ちなみに、今日はまた、それとは別に保守党内の離脱派と残留派が提出した折衷案「モルトハウス妥協案」も採決にかけられ、それには「5月22日までの離脱延期」という期限が盛り込まれていたのですが、賛成164票、反対374票で否決されました。

 

政府、ノー・ディールの場合の関税率表を発表

さて、ノー・ディールの不安が払しょくされないまま、政府は連日のように「ノー・ディールに備えるように」という文書を配信しているのですが、今朝7時過ぎ、短期的な関税率表が発表されました。

 

それをみると、食品と一次産品の一部を除き、80%以上の品目が関税率ゼロです。これは、ノー・ディールになれば、ポンドが急落し、輸入品の価格が急上昇して、物価が上がるのを避けるためではないかと思います。一見すると大歓迎と言いたいところですが、しかし、長期化すれば、ただでさえ脆弱な国内産業は輸入品と競争できなくなるでしょうし、新たに他国とFTAを締結しようとしても、相手国はそれに応じる理由がなくなりますね。欧州のシンガポールをめざすということでしょうか・・

 

また、アイルランドとの国境を開けっぱなしにするとなっています。EU域外企業は英国に商品を輸出し、英国からアイルランドに運んでEU市場に関税なしで輸出することも可能です。はて、どうなることでしょう???

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Guardian 2019年3月13日付Emma Bee画