英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

メイ首相の離脱案、3度目も否決(ブレグジット その27)

3月29日は本来なら英国がEUを離脱する日でした。しかし、幸か不幸か、英国はEUに残ったままです。

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Bob Moran, Daily Telegraph紙(2019年3月29日付 )

そして議会では 、政府のEU離脱案のうち、EUと合意したEU離脱協定の部分だけが切り離され、採決にかけられました。「意義ある採決2.5回目」と呼ばれています。これまでの2回と違って政治宣言部分がないからです。

 

切り分けられた理由は、バーコウ下院議長が全く同じものを2回採決するのは議会ルール違反という判断を示したためのようです。

 

過去に2回、否決されたのに、その一部とはいえ、またしても採決にかけたのは、どういう計算によるものでしょう?問題の「バックストップ」の規定はもとからEU離脱協定に入っていて、その部分は全く1回目と内容が変わっていないはずなのに、「自分が辞職する」と仄めかせば、同情票や首相辞任を要求していた強硬離脱派の譲歩を引き出せると考えていたのでしょうか?ダメ元で賭けてみるといったところかもしれませんが(下の漫画をご覧ください)。

 

残念ながら、今回もまた344対286と、58票差で否決されました。そしてEUが提示した3月末までに合意案の承認を取るという条件が満たせないため、5月22日の離脱延期はなくなりました

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Brighty"Holy Craps" https://twitter.com/cartoon4sale?lang=en

さて、これからですが、議会は4月1日に今後の方針について再度、「indicative vote 示唆的投票」を行うそうです。一方、EU側はトゥスク議長が緊急首脳会合を招集し、4月10日に開催されることになりました。このどちらかで建設的な案が出ないと、4月12日にノー・ディールで離脱することになります。

しかし、ノー・ディールの可能性は、あまり大きくないというのが、多くの専門家の見方です。

 

フランスのマクロン大統領などは、「英国にノー・ディールで離脱させろ」とうそぶいていますが、どうでしょう?すでに始まっている税関ストやユーロスターの大混乱をみても、どうやら離脱準備が整っていないのは(というより国内のコントロールが効かないのは)、英国ではなくてフランスのように見えます。とばっちりを受けるのはフランス国民であり、ベルギー国民でしょう。カレー近辺の渋滞はとんでもなく長くなるはずです。

 

しかも、ユーロはポンドより早いペースで下落中。EU経済は英国経済よりも実は脆弱。ドイツが風邪を引けばEU全体が寝込んでしまう構造なのです。米中の貿易摩擦、新興国の伸び悩み等々の理由でドイツ経済が調子を崩し始めているのをEU各国の首脳はかなり深刻にとらえていると思います。ノー・ディールでさらに経済にマイナスの影響が加わるのはよしとしないでしょう。というわけで、嫌味こそ言っても、4月10日の首脳会議でEUがノー・ディールを選択することはないでしょう。

 

さて、英国議会はどのような方針を選ぶのでしょうか?いくつか予想されています。

1つは、関税同盟に残留し、メイ首相案よりソフトな条件で離脱する

2つ目は、第2国民投票実施

3つ目は、解散総選挙

4つ目は、ノー・ディールでの離脱

5つ目は、50条の撤回

1は前回の示唆的投票で僅差だっただけに可能性はあります。ブレグジットで目指した「主権の回復」効果はかなり小さくなるかもしれませんが。

議員の総取替ができる総選挙を願う人も増えています。でも、自分の議席を守りたい議員は総選挙は嫌なはず。しかも、保守党内にはメイ首相の下での選挙は不利と見る党員が多いのです。

そうなると解散総選挙ではなく、第2国民投票が選択されるかもしれません。労働党も、コービン党首本人は選挙で勝つ気まんまんですが、彼の人気を支えていた若者が急に離れつつあるという報道も散見されます。もうちっともCoolじゃないということらしいです。

50条の撤回請願は、3月30日朝の時点で5,983,392票に達しています。600万票を前に足踏み状態。

 

<追加>

3月30日になって、メイ首相は、EU離脱案の4回目の議会での採決を行う意向を表明したそうです。それに失敗すれば、「解散総選挙」だそうです。同じ議案を3回も否決されるというのは、常識的に考えて、こういう票読みというのは、事前に院内総務とかそういう人がやっているはずで、たぶんそういう人たちから「厳しいです」と言われても「自分はやりたい」と議案の採決を首相判断で強行してきたのでしょう・・今回は「ノー・ディール」と「解散総選挙」という抱き合わせの脅迫で議員に迫ろうというのでしょう。みっともないですが、もしかしたら、通るかもしれませんね。とはいえ、議員だって、選挙区区民が見守る中、この離脱案は国民のためにならないと思って反対票を投じてきたわけで、最後に解散総選挙で脅されたからと、これまでの判断を覆すものでしょうか・・・?

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BobMoran https://twitter.com/bobscartoons

上の漫画はデイリーテレグラフに掲載されるもののようです。「この女性は学ぶことがない」と書かれています。下はガーディアン紙。こちらはすでに執念だけの状態。

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Martin Rowson Guardian 3月29日付

というわけで、来週は重大な決定をすることになり、またまた山場だそうです(いったいいつまで山場が続くのでしょう?)