BBCの人気番組Gardeners’ Worldの第12回(5月31日(金)放送)についてご報告。
チェルシーフラワーショー特番のため、1週空けての放映となった今回、番組メインキャスターのモンティ・ドンが、新しくボーダー花壇に苗を植え付けたほか、ズッキーニを植え付けました。早咲き種のクレマチス、ロンドン中心部の屋上庭園、中部イングランドのチャッツワース館の切り花専用庭園、アリウムが満開のアランデル城、つつじのコレクションで知られるレオナルズリー庭園が紹介されました。
内容は以下の通りです。
- 庭の作業から
- 早咲きクレマチスの魅力
- ロンドンの中心に作られた屋上庭園
- チャッツワース館(宮殿)の切り花庭園
- アランデル城ではアリウムが満開
- 世界有数のつつじの収集を誇るレオナルズリー庭園
- 今週の作業
- ゐからコメント
庭の作業から
香りのある黄色い花を基調とした新しい花壇を作る
モンティは前回放映時から自宅の庭Longmeadowのパティオの敷石を剥がす作業を始めていました。石造りのベンチが置いてある素敵なコーナーだったのですが、実際に人が座ることはあまりなく、むしろ花壇にするほうが良いと思ったそうです。
新しい花壇は黄色い花を基調とし、それに対象的な紫、シルバーブルーなどの宿根草を合わせるというものです。メインの黄色として選んだのはデービッド・オースチン作出の黄バラVanessa Bellとヘメロカリス(デイリリー)のCorkyです。これにエキノプスリトロ(ルリタマアザミ)Echinops ritroという1mほどの丈に育つ紫系の植物と、よりシルバーの色合いが強いエリンジウムEryngium × zabelii( sea holly) 'Jos Eijking' を植えこみました。
我が家は駐在員家庭で、もう次の転勤も決まっていますので、こういうスケールの大きな模様替えは番組で見て楽しむだけなのですが、色の取り合わせは参考になりますね。
ブロッコリーを抜いてズッキーニの苗を植える
ブロッコリーはこのところ、その豊富なビタミンと抗がん作用のおかげで人気が回復し、主枝に大きな花蕾がつくタイプのほか、スプラウトタイプも良く育てられています。さて、モンティの菜園では、冬から春にかけて収穫したブロッコリーが成熟して花をつける、とうが立ってしまいました。
そこでで抜くことにしてその後釜がズッキーニです。畑にコンポストを軽く載せて整え、植えつけます。あまり混ぜなくても分解して土に入っていくそうです。アブラナ科からウリ科と違う種類にかえることが連作障害を避けるポイントです。
さて、ズッキーニ(イギリス英語でcourgette)は、英国では様々な種類の種や苗が売られています。育てるのは簡単で苗を植え付けてから3~4週間で収穫が始まるそうです。1つの苗が1メートル四方に広がること、一人につき1つの株で十分なことから、数多くは植えません。モンティによれば、実があまり大きくならないうちに収穫する方が美味しいとのこと。(英国のソーセージ位のサイズで収穫するように、とのことでした。日本の粗挽きウィンナーの1.5倍位だと思います)
また、ズッキーニは水を好むので、植える場所はすり鉢状に掘って、その底の部分に植える、水がたまるくぼみを周囲に残すようにします。畑でも大きなプランターでも育てられます。
早咲きクレマチスの魅力
番組キャスターのニック・ベイリーは早春に咲くクレマチスを見にイングランド北東部ダーリントンにあるソーントン・ホール・ガーデンズを訪れました。
この部分は、日本でもビデオがみられるようです。良かったら見てください。
https://www.bbc.co.uk/programmes/p07bznf3
クレマチスは、ギリシャ語のクレマ(ぶどうの蔓)を語源とするつる植物です。原種だけでも約300種以上があるといわれ、その分類方法も様々ですが、英国王立園芸協会(RHS)は剪定時期によって3つのグループに分けています。
グループ1:花が早春に咲くため、剪定が必要な場合は、花後すぐ、春半ば~終わりに剪定行う
花は前年に出たシュートに咲きます。「旧枝咲き」
常緑種、早咲き種、モンタナ種、アルパイン種、マクロペタラ種など
剪定は、枯れた枝、樹形を調えるといった理由がなければ不要
グループ2:剪定を2月、最初の花が終わった直後に行う
前年出たシュートに5~6月に大輪の花を咲かせ、夏の終わりに今度は、今年の春出たシュートに花を咲かせます。「新旧両枝咲き」と呼ばれます。
グループ3:剪定は2月。
今年出たシュートがぐんぐん伸びて夏の半ば以降、大量に花をつけます。シュートはこんがらがりやすいので、誘引が不可欠です。また、春の2月の剪定は強めに行います。グループ2と3の中間種もあります。「新枝咲き」と呼ばれます。
英国にクレマチスが輸入されたのは、16世紀にスペインからのビチセラ種(グループ3です)が最初だったそうです。その後19世紀になって日本、中国などから大量に新しいクレマチスが持ち込まれヴァリエーションがさらに広がったそうです。
今回は、グループ1の早咲きのクレマチスを紹介しています。
一番代表的で、よく見かけるのはモンタナ種です。下の写真の下段、左側のグランディフローラClematis montana Glandiflora、さらにその下の写真はニックが最も好きだというリンゴの花の様な色合いのアルマンディ・アップルブロッサムClematis Armandi Appple Blossomなどです。大変大きくなり、3~4m、アップルブロッサムなど6mになるそうです。これらの特徴は他の花が咲く前の時期に咲いてくれること、寒さに強いことです。ただし、耐暑性が低いので、日本の南の地域では若干難しいかもしれません。
このほか、アルピナ種のブルー・ダンサー、マクロペタラ種で作出されて間もないスパイキーSpiky、コリアーナ種のBroughton Brideなども紹介され、2~3メートルと、モンタナ種ほど大きくならないので、他の植木とからめたり、鉢植えなどにも向いていると言っていました。ところで、このSpikyを作出したのはオランダのクレマチス農園J. van Zoest B.Vのようです。
下のClematis rehderiana Nodding virgin’s bower は、珍しく黄色い花をつけるタイプです。グループ3の遅咲き種ですが、モンティの庭の大きな木に添わせるよう植え付けていました。クレマチスを植え付ける際、注意すべき点として、深めに根の下に保水性の高いコンポストを敷いて植えつけること、30~40cmは壁から離して植えるようにとありました。クレマチスは水分を多く必要とするのですが、あまり建物に近いと雨があたらず十分な水分が取れないから注意するように、ということでした。
ロンドンの中心に作られた屋上庭園
都市化が進む中、2030年には英国の人口の92%が都市に住むことになると予想されています。ストレスの多い生活の中、緑とのふれあいをどのようにしていくのか、その答えとして提案されているのが、屋上緑化です。ロンドンの金融街シティの中心部にある120Fenchurch Street(フェンチャーチ街120番地)の屋上に作られた庭園をアリット・アンダーソンが訪問しました。
屋上庭園は公開されています。
屋上庭園は、そこが15階という高さにあることを忘れてしまうような、緑豊かな空間に作られています。私も自分のビルの屋上にこんな庭があったら毎日散歩しに行くかも(お弁当を食べに行くかも)と思います。
植物の管理という意味でいえば、強風や強い日差しなど、厳しい環境のようで、藤など丈夫な植物が選ばれていました。今後このような庭園が増えていくにつれ、それに適応した植物も生み出されていくのかもしれません。
チャッツワース館(宮殿)の切り花庭園
チャッツワースは、デボンシャー公爵夫妻の居城です。映画のロケにも何度も使われていますので、ご存知の方も多いでしょう。
その公爵夫妻の広大な庭のごく一部を占めるキッチンガーデンのさらにその一部の1エーカーの切り花専用ガーデンのヘッドガーデナーがベッキー・クローリーさんです。
切り花は、屋敷の花瓶に活けることを目的としていますので、茎が長いもの、水揚げが良いもの、そして公爵夫妻が最も重視する季節感のあるものという観点で選ばれています。
花の種類は多々あり、一年草、多年草、宿根草、灌木類など様々に組み合わせていますが、個人の庭であれば、一年草が使い易く、お勧めだと話していました。中でも、チューリップは、毎年新しい球根を植えて、使い捨てにするそうです。そのため少しでも茎の部分を長くとるために球根ごと抜いてしまうそうです。
庭からとる切り花としてお勧めなのは、チューリップのほか、ラナンキュラス、スイートピー、コスモス、ダリアなどです。
この部分も独立したビデオが公開されています。
https://www.bbc.co.uk/programmes/p07bzmdz
アランデル城ではアリウムが満開
アランデル城には、番組キャスターのキャロル・クレインが訪問しました。以前、アランデル城のチューリップが圧巻とお伝えしたことがありますが、チューリップが終わってほどなくアリウムが満開となるんですね。
アランデル城は、ノーフォーク公爵夫妻の居城です。お城のウェブサイトはこちら。
アリウムはネギの仲間ですが、食用、観賞用含めて700種類位あるそうです。様々なアリウムが植え付けられており、チューリップもまだ残っているようです。
アランデル城については、過去の記事もご覧ください(3本も書いている)。
アランデル城内は、歴史の宝庫 - 英国の庭から~海外生活ブログです
アランデルは街も楽しい - 英国の庭から~海外生活ブログです
世界有数のつつじの収集を誇るレオナルズリー庭園
庭訪問の最後はジョー・スウィフトが訪問したレオナルズリーガーデンです。
この庭は、ロンドンの南、ウェスト・サセックス州ホーシャム近郊にあり、昔は世界中からつつじ類を集めた名園として知られていたようです。しかし、諸般の事情から9年前に閉鎖され、打ち捨てられていたのを、2017年にアフリカ出身の女性起業家(人材派遣ビジネスで成功された方)ペニー・ストリーターさんが購入、整備してこの春、再開にこぎつけたとのこと。
こんな庭が、ナイマンズガーデンの近く(ガトウィック空港の南)にあるとは知りませんでした。つつじはすでに本国で絶滅してしまったものも含め、450種類もあるそうです。
今週の作業
生垣のトリミング
大幅に剪定するのではなく形を整える
宿根草の刈りこみ
チェルシーチョップと呼ばれ、夏半ば以降に咲く多年草の高さ半分くらいのところで、刈ることで、コンパクトで整った形になる。合わない植物もあるので、次のページをご参照。
How to Do the Chelsea Chop - BBC Gardeners' World Magazine
ソラマメの剪定
ソラマメにつくアブラムシが発生するので、先端の不要な葉を剪定して減らすことで、アブラムシの餌を減らすことにもつながる(?そうです
夏から秋に咲く一年草の種蒔き
ゐからコメント
今回も長々とお付き合いいただきありがとうございました。英語の勉強を兼ねてきちんと全部みてメモをとってまとめるのですが、ここに書ききれない園芸のコツなどがまだあります。本編は放映権の関係で英国外では見られないかもしれませんが、一部については、独立したビデオとして、長期にわたり、英国外でも見ることができるようです。とてもきれいですので、ぜひご覧ください。
また、今回ご紹介した庭は公開されています。アランデル城は鉄道でロンドン、あるいはガトウィック空港から日帰りで往復可能です。レオナルズリー庭園も鉄道とバスまたはタクシーの組み合わせで同様に日帰りで往復可能です。レンタカーをすれば(特にガトウィック空港で)、両方1日でまわることもできます。チャッツワースは、鉄道だけですと、日帰りは難しいのですが、湖水地方やピーク地方などと組み合わせたオプショナルツアーなどで訪問可能です。