英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

チェルシーフラワーショー2019報告(英国三大バラ園の展示から)

こんにちは!なかなか更新できずに申し訳ありません。日本への一時帰国以来、時差ボケのせいか、あるいはチェルシーフラワーショーに行って歩き回った疲れのせいか、夜10時頃になると睡魔に襲われてしまうのです。休日の日中は庭仕事(主に芝刈り)と夫の綿100%のワイシャツのアイロン掛けに追われております。うるうる・・


さて、2回に分けて、チェルシーフラワーショーのモデルガーデンについてご報告しました。どのモデルガーデンもすばらしく1つ1つ報告したいところですが、何しろこのショウ、BBCが1時間番組で16回に分けて報告するくらい、ボリュームのあるショーなのです。大幅に端折らせていただいて、今日は大パヴィリオン(マーキー)に展示された英国の三大バラ専門苗業者について報告します。

今回、出展していた3つのバラ園です。

 

ハークネスローズ

1879年に英国ヨークシャーで設立され、135年の歴史をもつ英国でも最も古いバラ園の1つです。

https://www.roses.co.uk/

 

ハークネスローズの現社長ピーター・ハークネスは、1994年に薬剤の散布をやめ、「耐病性の強い、育てやすい品種」だけを育成、販売する方針を打ち出したそうです。また、育てやすいように「コンパクトな樹形」にもこだわっています。だからでしょうか、展示スペースもあまり立体的ではありません。以下のような感じです。

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白、ピンク、黄色などにきっちり分けられていて見やすいです。

以下のバラは上段左からEasy Going, Lady Marmaladeのつぼみ、Lady Marmalade

下段左からLynda Bellingham, Hamilton Princess, Hamilton Princessのつぼみです。

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ハークネスのバラ

また、中央部分に置かれた大きな植木鉢にThis Morningが飾られていました。一重の個性的なバラです。大鉢から垂れ差がるように咲かせるというのはおしゃれですね。

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ピーター・ビールス

ピーター・ビールス氏は、2013年に76歳で亡くなるまで、「バラの神様」と呼ばれ英国バラ界の第一人者でした。自身のバラ園で作出したバラに加え、オールドローズやクラシックローズを多く集め、紹介したり、繁殖して販売したことで普及に勤めました。

後継者のイアン・リマー氏の下、引き続き、独自作出のバラ、オールド・ローズ、クラシック・ローズを数多く供給しています。

https://www.classicroses.co.uk/

今回も歴史あるクラシックなバラが数多く展示されていました。展示風景は次の写真をごらんください。

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他社が耐病性の乏しいオールドローズやクラシックローズから手を引き、採算性を重視して自社作出のバラさえ廃番にしていく中、同社は保存価値のあるバラの生産を継続し、愛好者に供給しているのが特徴です。

展示されていたバラのラベルに作出年が出ているのですが、19世紀前半とか20世紀前半のものが多くみられました。古いバラは、ピンク系や白が多いです。2ポンドで購入した230頁のカタログには1,100種類のバラが出ていると書いてあります。

また、2019年の新種としてリバプール・ホープ(Riverpool hope)というバラがお披露目されたようです。その様子については以下のリンクをご覧ください。 

Liverpool Hope - New Rose introduction 2019 | Peter Beales Roses - the World Leaders in Shrub, Climbing, Rambling and Standard Classic Roses

ピーター・ビールス・バラ園の展示コーナーで私が気に入ったのは以下のバラたちです。

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左上からRiverpool hope, Louise Odier, Marjolie Fair

左下 Frilly Cuff, Felicite Perpetue

 

デービッド・オースチン・ローズ

デービッド・オースチン氏は、イングリッシュ・ローズという新しい種類のバラのジャンルを生み出した英国のバラ園芸家の中では世界で最も知られた人です。

https://www.davidaustinroses.co.uk/

残念ながら、昨年12月18日に92歳で亡くなったことから、今回は大パヴィリオンの中央部分に下の写真のようなモニュメントが設けられ、その偉業が称えられていました。

 

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周囲に飾られたバラは、同氏が作出した名花たちです。

こちらは展示スペースの様子。

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シュロップシャーにある同社の庭園のような雰囲気です。

さて、デービッド・オースチン氏、オールドローズとハイブリッド・ローズを掛け合わせて素晴らしい花を作り出し、前述のハークネス氏、あるいは、ドイツやフランスなどの育苗業者同様、より耐病性が高く花付きの良い品種を生み出すことに生涯を捧げました。以下はBBCの育苗場からのビデオです。

www.bbc.co.uk

しかし、同時にオースチン氏はビジネスマンとしても優秀、というか、かなり非情な方だった様に思います。上述のビールス氏が、耐病性に劣るという欠点はあっても古い名花を少しでも多く残して、より多くの人に届けることに力を尽くしたのとは対照的に、自分が作出したバラでも容赦なく廃番にしています。

確かに少ない品種を大量生産すれば、収益は上がるでしょう。しかし、私の愛するパット・オースチンが廃番になった話は、たぶん何度もここで嘆いていますけど、それ以外にも、私の大好きなアブラハム・ダービー、キャスリン・モーリー、スイート・ジュリエット、シャリファ・アスマ、名花の数々を入手不可能にした罪は重いです。(あー腹が立ってきた)。

パテントが切れた品種は、自由に栽培して良いという意思表示?なのかもしれませんが、散々、魅力を唱えて売ってきて、自分の都合で「やーめた」ってあり?ジェネリック医薬品のように、パテントの切れた名花ばかり格安で栽培して提供してくれるバラ園はできないかしら・・

さてさて、そんな内心の憤りを抑え、では、どんなバラに力を入れているのか、じっくりみてみました。

全部の写真を撮りきれませんでしたのでまずは名前から。

Winchester Cathedral, Gartrude  Jekyll, Munstead wood, Queen of Denmark, Queen of Sweden,  Queen Anne, Princess Anne、Lady of Shalott, Dame Judi Dench, The Lark Ascending,

それから以下の写真の左上からRoald Dahl, Hyde Hall, The Mill on the Floss, Gertrude Jekyll, Boscobel、Shropshire Ladです。

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このほか2019年の新種として次の2つが紹介されました。上がややモーブっぽいピン中心部にオレンジ色が入るEustacia Vye, 下がワインレッドに近いGabriel Oakです。

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この2つ、そうですねぇ・・Eustacia Vyeは、これまでになかった色合いです。もう片方のGabriel Oakもきれいです。私情が混ざって恐縮ですが、廃番にされてしまった数々の名花と比べてみると、若干インパクトに欠けるような気がします。特にGabriel Oakは過去に発表された他の同系色の花とどこがどう違うのかよくわかりませんでした。でもきれいでしたけど。

イングリッシュガーデンにおけるバラの存在

バラは英国の国花でもあり、イングリッシュ・ガーデンのフォーカルポイントとなる重要な存在です。マーキーの中央に英国有数の造園業者Hillier&ガーデンセンターでもあるThe Stihl Hillier Gardenの大展示スペースで配られていたパンフレットの中に正しいバラの選び方のページがありました。

それによれば、バラを庭の中でどのように位置づけ、どのように飾るのかによって選び方は違うとしています。特に英国は、日本と違って、猛暑や熱帯夜がありませんから、初夏~霜の時期まで、休みなく咲かせることになります。また、日本ほど、真冬に強剪定しませんし、地温が低めなので、どうしても日本のような花付きは期待できません。

このため、オースチンローズなどでも3本ずつ植えることを勧めていますし、私の家の近所の家など一度に15本買って一列に並べて植えるとか、買い方の潔さはなかなか個人の日本人には真似できません。↓近所のLady of Shallotが15本並ぶ家。冬に裸苗を15本まとめてAustin Rosesから購入したそう。こういう潔さはなかなか真似できません。

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Hillier Gardenではお勧めのバラとしてオースチンの次のバラを挙げています。つるバラの代わりとして丈が伸びやすいが管理しやすいバラとしてThe Generous Gardener, The Pilgrim、The Lady of the Lakeを、バラのボーダー(よりコンパクト)向きとしてGertrude Jekyl, Emiy Bronte、色の組み合わせを楽しむバラとして青い花と組み合わせると美しいピンクのバラとしてOlivia Rose Austin、Darcey Bussellを、薄紫のカンパニュラと合わせると良いとしてGolden Celebrationなどを提案しています。

 

バラは食事でいえば、ステーキとか焼き魚のようなメインディッシュ的存在です。昨今、英国でも、野菜のお浸しのような付け合わせ的な植物や、手間のかからない多肉植物に人気が集まっていますが、それでもメインはメイン、やはりバラは迫力があります。とはいうものの、実は私、ピーター・ビールスの展示でも、デビッド・オースチンの展示でもメインのバラの間に配されていた、古いランブラローズの類に惹かれてしまいました。写真におさめてきたので、ご覧ください。
左上からBlush Noisette、Wichurana Ramblers, Francis E Lester, Cornelia,Fericite Perpetueです。

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 というわけで、バラのコーナーの報告とさせていただきます。

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 ↑オースティンロのコーナーで撮った写真ですが、名前を記録するのを忘れてしまいました(札をみそびれてしまったのです)