英国は今、トイレ不足が危機的な状況にあるそうです。外出先で使えるトイレが少なくて、通勤途上の駅にもほとんどありません。
身近にトイレがないというのは大変です。英国人は大柄な人が多く、それに比例して膀胱の容量が大きい人が多いのでしょう。職場のビルでも、トイレの改装などと言って、3カ月ぐらい使えなくなることがよくありますが、日本人ほど文句を言わず別の階に行きます。でも、頻尿トラブルがある人、高齢者、子供、妊婦などにとっては近くにトイレがないのは、EU離脱なんかよりよほど差し迫った危機です。
日本だと、ほぼ全ての駅にはトイレがあります。公園にも公衆便所があることが多いです、しかし、英国では駅だからといってトイレがある、あるいは使える保証はありません。さらに言うと、喫茶店でもトイレがないことが多い。トイレに行きたいからお茶を一杯・・などという方法も、旅行客だと使えないことが多いです。
これはすでに社会問題化していて、英国トイレ協会(British Toilet Association)やいくつかの団体がトイレを増やす活動をしています。同協会によれば、英国の公衆便所は過去10年間で4割も減ったそうです。
地方自治体側はトイレ閉鎖の理由として、公衆便所は犯罪の温床になる、ドラッグ愛用者のたまり場になると説明していますが、これは大ウソ。EUが進めてきた財政赤字削減の影響で歳入難に苦しんだ結果、維持管理に費用が掛かる公衆便所を切ったのです。
現在、英国の各地方自治体(平均人口1万2,500人)の公衆便所は15個(実際に用を足せるお便器の数)というのが平均だそうです。また、公衆便所の設置をやめた自治体も多く、特にコーンウォールの自治体は大半がやめてしまったそうです(田舎なので野原で十分と言う意味かしら)。頻尿のトラブルを抱えている方は、英国の地方に旅行される場合は、お気を付けください。
公衆便所だけでなく、客商売の店でも、客用トイレを設けていないことには理由があります。
それは、英国特有の事情として、この国には「ビジネスレート」という悪名高い税金があり、それが英国の地価上昇に連動して高騰しているのです、英国で最近、小売店がバタバタ閉店に追い込まれている理由の1つがこれです。ビジネスレートは、事業用不動産にかかる固定資産税ですが、大家が払うのではなく、店子に払う義務があるのが日本と違う点。数年に1回(直近は2017年)、評価額が見直され、評価額×面積×約2分の1が年間のおよそのビジネスレートの額です。
ロンドン中心部の一等地だとその金額は途方もなく高く、日本の小さめのコンビニ位の大きさの店舗のビジネスレートが、1年あたり2~3,000万円位になります。顧客用のトイレを作るよりその部分を商売に使う方が良いですよね。このビジネスレート、驚いたことに電柱や広告塔、公衆便所にまで課せられています。
トイレ不足に対して、患者団体などから国会議員に陳情が寄せられた結果、昨年10月に発表された2019年4月からの予算案に初めて「公共用トイレ(店舗など公共に使えるようにしているものも含む)にはビジネスレートを非課税とする」という画期的(?)な文言が組み込まれました。果たしてこれによりトイレが増えるかどうか、見守りたいと思います。
★英国内を旅する方へのアドバイス★
トイレを見つけやすい場所としては、次のところがあります。
1.ナショナルレイルの主要ターミナル駅
2.大型の観光施設(博物館、美術館、ナショナルトラスト、イングリッシュヘリテージなど)
3.デパート、大きいスーパーマーケット、ガーデンセンター等大型小売店
4.空港、ドライブイン
5. パブ、レストラン
喫茶店の場合は、頼めば鍵付きの従業員用トイレを開けてくれることが多い。
このほか、ウェブサイトで探すという手もあります。
The Great British Public Toilet Map
他にアプリなどもあるようです。
また、うちの夫によりますと、ロンドンのシティ周辺だと、Bankの近くの王立証券取引所(RSE)のトイレ、Canary Wharf駅のトイレ、この二つは、ホテル並みの豪華さだそうです。また、Cannon Street駅のトイレ、Moorgate駅の近くのM&Sのトイレあたりも使いやすいとのことです。ご参考まで。
↓ローマ時代にはすでに公衆便所があったことを考えると、英国はお粗末ですね。