ハイグローブの参観は完全予約制
イースター休暇3日目の昨日(4月21日)、チャールズ皇太子の私邸ハイグローブの庭園を見学してきました。
ハイグローブ(High Grove)は、コッツウォルズ丘陵の南の町Tetbury近郊にあります。
見学は完全予約制。先週水曜日にふと思いついて同僚を誘い、予約ページをみたら、イースター中日のせいか、あるいはシーズンオフのせいか、11時半入場のツアーにまだ余裕があったので申し込んでみました(参観料は17.50ポンド)。我が家からは約160キロの距離。朝7時半に出て、遅れないかと、はらはらしながら運転しましたが、渋滞もなく予約1時間前の10時半に到着しました。
↓こちらから、観覧申し込みや、土産物の購入が可能です。ちなみに、未成年者の参観は認められていません。
入り口には表示がなく、あらかじめ申込書に入っている案内を頼りに行きます。Tetburyの町から徒歩40分ほどの場所のようですが、徒歩で来た見学者はあまりいませんでした。2年ほど前の6月に行ったときは入り口が分からず、右往左往して遅刻しそうになりました。門番がいて、写真付きIDを提示し、厳重にチェックされてから入場です。
また、警備上の理由から、敷地内での写真の撮影は許されていません。前回の見学時は車の中に携帯電話を置いていくようにと言われました。今回は、持参しても良いが、機内モードにするようにと何度も言われました。
というわけで、ここに貼り付けた写真は、購入したカタログや、ウェブ上に公開されている情報です。なるべく、私が今日見たものと同じ季節のものを選びましたが、植えられている植物など、年によって少しずつ違っている点、ご容赦ください。
皇太子が無農薬、自然保護にこだわって作り上げた庭
ハイグローブ邸は、チャールズ皇太子が1979年に私的利用を目的として購入した不動産です。もともとの持ち主はハロルド・マクミラン元首相の一家。購入当初、荒れ果てていたものを40年近くかけて庭園として育成したものです。
私が申し込んだのは「Spring Walks(春の散歩)」というものでした。庭園の参観はツアーガイドさんに随行され、説明を受けながらまわるようになっています。
敷地内には、レストラン、土産物店が付属しており、ここでの収益はすべてチャールズ皇太子が設立した慈善団体に行くそうです。ツアーにはいろいろな種類があって、シャンパン&ティー付きとか、サパー(軽夕食)付きのもっと少人数向けのツアーなどがあります。先日、著名カメラマンがガイドとなって、初めてカメラ持参で参加できるツアーが1日限りでありました。もう少しカメラの腕前が良ければ参加したかったぐらいです。
チャールズ皇太子は、才能豊かな人物で、レストラン、トイレの中(1つ1つのコンパートメント)に無数の手書きの絵が飾られています。画集も出しているくらいなので本当に上手。カミラ妃や両親、亡くなったクイーンマザーの絵も飾られていました。
様々なコーナーに分かれた広大な庭園
さて、↓はGoogle Mapですが、1から数字の順にまわりました。
1.殿下からのご挨拶
ツアーは最初に小部屋に通され、5分ほどの「皇太子殿下のご挨拶」で始まります。この庭を造営するにあたって、様々な専門家の意見を聞き力を借りながら、「農薬を使わないオーガニックな庭作り」をめざしたこと、世界の環境汚染を非常に憂慮していることが語られ、最後に「レストランで食事をしておみやげ物を買ってください。全てはチャリティに貢献することになります」とPRして終了。
このビデオは前回と若干違っている内容でしたし、孫の写真も背景に入っていますので、定期的に撮りなおしている模様です。
2.Thyme Walk(タイムの歩道)
ハイグローブ邸の西面に面する長い歩道です。この家の購入時には、半球に刈り込まれ、茶色く色あせたイチイ(Yew)が並んでいたそうです。そこで、10人以上いた当時の庭師たちに新たにイチイを思い思いの形に刈り込むよう頼みました。それぞれの庭師がケーキや王冠などメルヘンチックな形に刈り込み、不思議の国のアリスの舞台ようになったのがこの道です。現在、イチイの剪定には1カ月くらいかからっているそうです。
道には20種類以上のタイムが植えられています。そこにわすれな草の青とミニ水仙など黄色が混ざって咲き乱れ、満開の八重桜とマッチして大変美しい光景となっていました。
上の写真はTripadvisorから
庭園には巨大なオリーブオイルの甕や彫刻などがあちこち置かれていました。こういった品物は外国の王族や要人などからの贈り物だそうです。お断りすると失礼なのでありがたく受け取っては、庭に置いたり、あちこちに飾っているそうです。
ここから林のようなところに向かう広がった草地は、野原のような風情でした。水仙、ムスカリ、マグノリアのシーズンはほぼ終わりつつあり、桜、アネモネ、チューリップ、わすれな草、ブルーベルなどが最盛期を迎えていました。また、見たことがないような洒落た形の小ぶりの水仙や純白の水仙など遅咲きの水仙もみごとでした。このあたりの植木鉢は深紅のチューリップと水色の忘れな草の組み合わせが多く、素敵でした。
3. Stumpery(切り株の再利用)
林のような鬱蒼とした空間に入ると、紅葉しないのに赤いタイプのもみじがあちこちに植えられていて、日光に輝いていました。そうした中、嵐で倒れた切り株を集めてオブジェのようにして飾った(Stumperyと呼ばれる技法です)一角があり、圧巻でした。次の写真は、皇太子の祖母(クイーンマザー)にささげられたモニュメントで、やはり倒木からとった材料を使って作られているようです。
上の写真はTripadvisorから
4. 養鶏場
Highgroveは庭園だけでなく、牧場も兼ねており、この場所は鶏を放し飼いにしているスペースです。鶏も人間様より手厚い扱いを受けていて立派でした。
年
5.Azalea Walk(アザレアの遊歩道)
ここはチャールズ皇太子がゆかりのあった人物の胸像が飾られているコーナーです。恩師、親交のあった人物の胸像や愛犬のお墓があります。さらに、つきあたりには、狩りの女神ダイアナの像まで飾ってありました。
6.四方をレンガ塀で囲まれたキッチンガーデン
皇太子が邸宅を購入する前から壁に囲まれたキッチンガーデンは存在したのですが、壁が倒壊していたそうで、わざわざ近隣の住民などに呼びかけ、古い昔のレンガを集めて壁を修復したそうです。
英国にはこうした壁で囲んだ庭を造る伝統があります。これは、壁で囲むことで北風を遮り、その部分は温度が高くなり、その中の方が作物が良く育つためだそうです。中のレイアウトは上空から見ると英国を構成する4つの国の旗になるようにデザインされています。
リンゴの花が満開でした。また、大鉢に植えられたオレンジ色のチューリップとわすれな草の組み合わせが美しくぜひ真似したい感じでした。
7.Wildflower Meadow(野の花の牧草地)
1982年に庭園デザイナー ミリアム・ロスチャイルドによって作られた野の花を自然に咲かせた場所です。ここは建物の南側にあたりますが、門の中にはSundial Gardenという小さいながらフォーマルな庭があります。
Sundial Garden(日時計の庭)
8.ハイグローブ邸の正面玄関
館内は公開されていませんが、玄関前を眺めることができます。正面玄関前にに広がる牧草地には馬が放牧され、かなたにTetburyの町の教会の尖塔が見えます。
邸宅の周囲には、正面に置かれているような大きな植木鉢が各所に置かれており、邸宅の南面のSundialガーデンには皇太子が好きなMauve(薄く灰色がかった紫色)の八重咲のチューリップが植えられていました。
9.樫のパヴィリオン
樹齢200年のレバノン杉が、病害で倒木せざるを得なくなったので、その根を中心に樫でパヴィリオンを作ったそうです。何でも持っている皇太子ですが、物や人への執着が強い人なんだなぁと感じました。
10. Shand Gate(シャンド門)
庭園入り口がShand Gateと呼ばれるようになったとの説明がありました。Shandとは、カミラ妃の実家の姓で、2014年に事故で亡くなった同妃の実弟マーク・シャンド氏に捧げられたコーナーとなっています。同氏は象の保護に力を入れていたそうで、象の形をしたトピアリーが育成中でした。実をいうと、Highgrove庭園はあまりカミラ妃の気配が感じられず、むしろ、どこかダイアナ妃の気配も漂っている感じがしたのですが、ここにきて「なるほど」と思った次第です。
というわけで、一通り回った後、付属のレストランで昼食を食べ、お土産を買いました。レストランも清潔で黄色のテーブルクロスがかかっており雰囲気が良かったです。価格は周辺のパブ並みで、同僚も私もグーラッシュGoulash(ビーフシチューでした。パプリカは入っていなかった)とパンというセットを頼みました(14.5ポンド)
土産物屋さんも、かわいいグッズが多くて、私は植木鉢が多かったので興奮してしまいました。Highgroveのロゴの入った植木鉢シリーズがかわいかったのですが、なぜか鉢底穴がなく、鉢カバーにしかならないので断念しました。しかし、地元のPotteryが作ったイチゴの浮彫のついたテラコッタの植木鉢が買ったばかりのイチゴを植えるのによかったので購入。バラや宿根草の苗、雑貨なども売っていて、同僚はHighgrove柄のミニトートを購入していました。
Highgrove Shop | Luxury Food, Drink & Unique Gift Ideas
今回は冬ということもあり、夏の花が咲かないと、見栄えがしないCottage Garden(コテージガーデン), Meditarranean Garden(地中海風庭園), Carpet Garden(絨毯の庭:中東風庭園)と言った場所は端折られていました(だから夏よりも入場料が10ポンド位安かったと思います)。それでも、花の数も多く、随所に皇太子のこだわりが感じられ満足しました。
無農薬でどうやって管理しているのか
お客の一人から、「どうやって無農薬で管理しているのか」という質問が出たのですが、それについては、ガイドの方はあまり説明してくれませんでした。しかし、「殿下が多々書物を書かれているので、お読みください」ということだったので、どのような本が出ているのか見てみました。
Amazon UKでHRH The Prince of Wales gardenと入れて検索したところ、次の本が出てきました。(色々な本を書いていて、これはほんの一部です)一番下の本(中古)が安く、今回の疑問に沿っている気がしたので注文。
ついでに、Amazon JPを検索したら、一番上の本については、英国では売っていない電子版が本国とは違って、破格に安い価格で売っていました。もしかして英国では遠慮してここまで破格にできないのかしら?こちらはポチしてしまいました。
この本をみてびっくり。Highgrove庭園の写真が1月12月まで月ごとにエッセイと共に掲載されていて、土産物屋さんで5ポンドで購入した申し訳程度のカタログより10倍以上の写真の量。(カタログを買うより,↓の本の方がずっとお得です。今、95%引きだそうですので、ご関心があれば、ぜひどうぞ!)
8月に再訪することを検討中
4月、6月と訪問した庭園ですが、写真が撮れないことを除けば、やはり満足度が高い庭です。
そして、写真を見るにつけデルフィニウムが満開の時期に再訪したくなってきました。昨日聞いた説明では7月は皇太子本人が滞在することが多く7月は30日と31日しか開いていません(滞在日は公開されません)つまりこの庭は7月がベストということですね。こうなると、この日をおさえるか、8月に開いている日を予約するのがよさそうです。
誰か一緒に行ってくれる人を探さないと(片道200キロくらい走るので、一人だと退屈で、眠くなっちゃうので)。