英国の庭から

欧州調査歴25年のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

ポールズデン・レイシーの魅力(その2)

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ポールズデン・レイシー(ナショナル・トラスト)の魅力は、庭に加えて、100年前の社交界が華やかだった時代の様子や、そこに仕えた召使たちの様子が邸内の展示から垣間見ることができる点です。執事や従僕、女中などの使用人の世界は、ダウントン・アビーという日本でも放映された人気ドラマで詳しく描かれていますが、まさにその世界です。

 

この屋敷は、1906年、スコットランドのビール醸造者として財産を築いたウィリアム・マキューアンが娘夫婦に買い与えた屋敷です。もともとは14世紀頃に築かれ、当時の持ち主の名前をとってポールズデン・レイシーと呼ばれるようになったようですが、今、訪問する私たちが見ることができるのは最後の当主で、マキューアンの娘であり、エドワーディアン(エドワード7世治下の時代)の時代に社交界の女王だったマーガレット・ヘレン・グレヴィル夫人が整えた邸宅の様子です。

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マーガレット・ヘレン・グレヴィル夫人

マーガレットは、英王室のメンバーや当時の政治家、有力貴族をここに招き、もてなしていました。宿泊客の中でももっとも有名なのは現エリザベス女王の両親であるジョージ6世夫妻(映画『英国王のスピーチ』のモデル)です。ヨーク公夫妻だった彼らが新婚旅行先として約2週間滞在したそうです。

 

マーガレットは、財産に恵まれ、英国の多くの有力者と親しく付き合っていましたが、幸せな人生とはいえなかったようです。両親が不倫関係にある時期に生まれ、両親が正式に結婚したのはマーガレットが20歳を過ぎてからのことでした。両親から溺愛され、夫であるグレヴィル男爵との仲は良かったものの、自身は一人っ子、子供にも恵まれず、夫はがんのため、43歳という若さで亡くなってしまったのです。遺産を受け継ぐ子孫がいなかったことから、邸宅はナショナルトラストに遺贈され、遺言に基づき庭園の一角に埋葬されました。その近くに10匹以上の歴代の飼い犬の墓地があり、犬達が彼女の数少ない家族だったという孤独を物語っています。

 

邸内には、やはりダウントン・アビー同様、第一次世界大戦中に病院として接収された記録も展示されており、興味深いです。キッチンは明るい黄色でモダンな雰囲気でした。敷地内の農場から新鮮な乳製品や野菜がとれて、それをロンドンの邸宅にも毎日運ばせていたそうです。

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↓1階のサロン風の部屋には衣装やティーセットがおかれており、素敵な雰囲気です。

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↑おいしそう。クリームのたっぷり挟まったスコーンが人気だったようです。

邸内は12月になると、クリスマスらしく飾り付けられて素敵だそうです。機会があれば行ってみたいと思います。