ライム・パークはナショナルトラストの屋敷の1つです。「高慢と偏見」は、BBCが1995年に制作・放映した4回のドラマで、アカデミー賞を受賞した英国の俳優コリン・ファースの出世作として知られる名作です。
そのドラマで、コリン・ファースが演じたヒーロー、Mr.ダーシーの豪邸ペンバリー館としてロケ地に使われたのが、今回訪問したライム・パーク・ハウスです。今回の旅行の主目的地でもあります。
場所ですが、テルフォード近くのデービッド・オースチン・バラ園から北上すること120km、マンチェスターの南ストックポートの近郊にあります。朝には快晴だったのですが、到着する頃には残念ながら雲りになってしまいました。
ロケでは館の外観を使用
ライム・パークの敷地は広く、おそらくナショナルトラストの屋敷の中でも最も大きくて豪華な館の1つだと思います。何しろ門から敷地内を車で5分ほど走らないと本館に到着しません。徒歩なら1時間弱はかかるでしょう。
こちらは、屋敷が最もきれいに見える角度です。ドラマの中で、ヒロインのエリザベス(リジー)がうっとりと眺めたのもこの角度。
ドラマの撮影では、この建物の外観と敷地の庭、敷地内の池、中庭などが使われました。邸内の様子はここではなく同じピークディストリクトのナショナルトラストの館サドベリーホールが使われたそうです。
こちらは上の写真とは反対側から見た館。正面の土手が下っているところから右手に池が広がっています。ドラマの中では、シャツごと池で泳いで上がってきたばかりで、ずぶぬれのMr.ダーシーがリジーと遭遇するのですが、その遭遇地点がこのあたりです。(ちなみに、この池のシーンは色々な映画でパロディ化されています)
この池は、Mr.ダーシーがリジーと遭遇したときに後ろに広がっていた池です。彼が泳いだ池は同じ敷地内ながら、別の場所にあって日没のため行かれませんでした。
上の右は、上記のビデオでMr.ダーシーが駆け下りてきた中庭の階段。
英米女性に人気の「高慢と偏見」
さて、「高慢と偏見」について少しご説明しましょう。これは19世紀初めの女性小説家ジェーン・オースチンが書いた恋愛小説です。初対面で互いに反発を感じた男女が恋に落ちていくという話で、ヒーローは若くて長身でお金持ちというロマンス小説の王道です。
この小説がどうしてこんなに人気なのか、わかりませんけど、この200年程、英米女性が最も好きな小説の1つです。英国では長年、英語の授業に取り入れられており(丸々読まされるそうです。男の子は嫌でしょうね)、英米の女性のかなりの比率がMr.ダーシーのとりこになるのだそうです。
1995年版にコリン・ファースがMr.ダーシーを演じたこのドラマが毎週日曜日の夜放映されたときは、月曜日の朝のクラフトのクラスに行くと、60歳過ぎたおばあちゃんたちがみんな大興奮。何しろ放映時間中は街中から通行人が減ったと言われたほどのヒットでした。
その時、おばあちゃんたちに勧められてビデオを買ってみたのがコリン・ファースとの最初の出会いです。
さてさて、ドラマの中では、このライム・パークはMr.ダーシーの居館ペンバリーとして描かれています。リジーがこの館を訪れたのは、ダーシーのプロポーズを断った後のことです。ダーシーのことを「プライドが高い鼻もちならない奴」と思い込んでいたのが、相手側の事情や自分の家族の欠点などが薄々わかり始めて、相手を少しずつ見直し始めた時期です。
ちょうどその時、たまたま叔母夫婦とこの地方を旅行してまわっていたリジーは、ダーシーの居館の近くに停留し、叔母夫婦に誘われて、ダーシーが留守中だと聞いて見学に行ったのでした。当時、こういう富豪の館は公開されていて、いつでも見学客を受け付けて、家政婦が案内していたようです。
ところが、留守だと思っていたダーシーが1日早く、帰宅していて、遭遇してしまったのです。慌てて帰ろうとしていると、まだリジーに心残りだったダーシーが急いで着替えてかけおりてきて、で屋敷の魅力から何から総動員してリジーの気をひこうと涙ぐましく奮闘するという場面です。
一方、リジーの方でも、壮麗な館、使用人やテナント(借家人)に対する公正で思いやり深いという家政婦の逸話、さらにこれまでと打って変わって、親切なダーシーにみるみる惹かれていったのでした。
館はイメージ通りで、やっぱり行って大正解でした。もっとも、ドラマをご覧になったことがない方でも、館自体がとても素敵で十分楽しめます。今回、時間の都合で行かれなかったのですが、サドベリーホールも見たいので、また来ようと思います。
18-19世紀の贅沢な暮らしぶりがわかる邸内
さて、ドラマには入ってませんでしたが、豪華な邸内をぐるっとみてまわりました。この館は古く14世紀から20世紀まで、同じリー(Legh)というジェントリ(郷紳)の一族によって引き継がれてきました。この一族は、地主、軍人、政治家を多く輩出してきたようです。
館が現在のような威容になったのは、18世紀の当主トーマス・リーが大規模な改築をしたからだそう。産業革命の時代に外国を旅したトーマスの人生について、詳しい説明と展示がされていました。
館にはカフェテリアや売店があり、「高慢と偏見」グッズも売っていました。
チャッツワース館近くのインに宿泊
さて、その日の宿は、ライム・パークから40キロほど離れた、次の目的地であるチャッツワース館の近くのインにしました。ライム・パークを出るとすぐに日が暮れ、到着する頃には雨が降り始めていました。
到着したのはパブ風のインで、まだ5時過ぎだというのに、地元客の車で駐車場が一杯。これは期待できそうです。
パブチェーンのインです。
通された部屋はダブルでシャワー付き(同僚はお風呂付だったそうです)。
ここは1泊たったの43£、朝食別で、6.95£。夕食に同僚はラムのパイ、私は、ラムのカレーにしました。(若干味は薄めでした)
これが朝の入り口の風景。これまで英国旅行の時はホテルかB&B中心だったのですが、食事も安くておいしいし、外に出かけなくていいから楽だし、この旅行ですっかりインにはまってしまった私です。
さて、次回は『プライドと偏見』(2005年)、『ジェーン・エア』(2011年)、『ある侯爵夫人の生涯』など、19の作品のロケ現場として使用されたデヴォンシャー公爵の邸宅の見学です。ではでは!
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