BBCの人気番組BBCの人気番組(Gardners'World)の第18回( 7月12日放映分)の内容をご紹介します。
今回は特別プログラムでした。モンティとそのチームは、英国の野生の花の生息地や牧草地(総称してメドウと呼ぶ)の喪失とそれに伴い、野生生物もまた生存を脅かされている現状を訴え、さらなる野生生物の減少や絶滅を避けるためにガーデナーができることは何かについて視聴者に語りかけました。
英国はもともと国中がメドウに覆われた国でした。しかし、戦後その97%が失われてしまいました。それによって1エーカーあたり300種はあるとされる植物は減少し、昆虫も約400種、さらにそれを食べていた野生生物も数を減らし、絶滅の危機にあるのです。
番組では、まず英国のメドウの役割と、そこに住む野性生物の生存状況について専門家に聞きました。
専門家達はメドウの減少に強い危機感
番組プレゼンターの一人、アダム・フロストはリンカーンシャーに行き、ワイルドライフ・トラストのマーク・スコフィールドに会いました。同氏は生態系をサポートする上で野生の花が咲くメドウは重要だとし、将来の保全を懸念していると語りました。
メドウを失ったのは集約農業、化学肥料の多用などが積み重なった結果ですが、それにより、野生の植物から蜜や花粉を得ていた野性生物も減ってしまい、エコシステム全体が崩壊してしまったのです。家に例えて言えば土台の部分を失ったことになります。メドウが3%しか残っていない事実を重大に受け止め、庭を持つ人が少しでもメドウを増やすことができないか考えてみる時期だと結論づけました。
モンティは、英国のメドウを保護しようと言うチャリティ活動“プラントライフ”を率いる植物学者のトレバー・ダインズ博士に話をききました。同博士はメドウは昆虫を育むだけでなく、風景を豊かにし、耕作地への水分調節や土壌中に炭素を還元する働きをしていると説明しました。草が作り出すタンニンやアミノ酸などが自然の肥やしをつく出しており、地下水の耕作地の土にも運ばれていくとしています。下は英国のメドウに多い植物です。
皇太子の私邸ハイグローブ邸のメドウ保護の取り組み


モンティは、チャールズ皇太子の私邸ハイグローブに行き、そのヘッドガーデナー、デブス・グッドイナフ氏にインタビューしました。デブスは11年前からここのヘッドガーデナーです。
ハイグローブ庭園には、美しいメドウが広がっています。なぜ、メドウをここに作ろうとしたのか、さらに皇太子が開始した野生のメドウ保存のための活動コロネーション・メドウ・イニシアチブについても聞きました。


皇太子のメドウはこの物件を私邸として購入してすぐ、つまり30年前に作られました。メドウはイエロウラトルやオックスアイデイジー、レッドクローバー、そして草を含む様々な植物で埋め尽くされています。ちなみに今年はハイグローブの庭が一般人の見学用に開放されて25年目になります。
皇太子がこの屋敷を買った当時は、広いメドウを作るということはあまり一般的ではありませんでした。なぜ皇太子がこういう選択をしたのかといえば、それは彼が、戦後~80年代にかけて野生のメドウの95%が耕作、薬剤散布、所有者の変化などによって喪失したことに気づいたからです。それを抑止したいと考えました。そして、ハイグローブで自分が実践することによって人々に示したいと考えたのです。
そこで自然科学者で自然保護主義者でもあった故デイム・ミリアム・ロスチャイルド女史に相談しました。この方は、長年、自分が作り出したシードミックスを使ってワイルドフラワーメドウを庭、高速道路、公園などに入れるよう活動をしてきた人でした。
皇太子は、彼女のアドバイスを取り入れそのシードミックス“Farmers’Nightmare”を撒きました。それは1年草のミックスでしたが多年草を加えて蒔きました。その中にはポピーやヤグルマソウなど濃い色のあるものが入っていて、華やかさが出ました。しかもその大半は土地グロスターシャーの自然のものでした。
このミックスを撒く場合、デブズさんは、いつも1平方メートルなど小さい面積で試すよう勧めています。またできれば秋のうちに、遅くてもクリスマスまでに撒くのをお勧めしますとのことです。
種蒔きの時期は9月ならもっといいでしょう。なぜかというと、それらの種は凍結することで発芽の可能性が多くなるのです。植えたらその後はとにかく見守るだけです。雑草などが生えてきたら、手で抜きますが、とにかく見守ります。
花が咲いたら種を集め、それを撒き耕作面積を倍にできます。花が終わったら、短く刈り込みます。もし、すくものがあれば、それで枯れた葉を除去します。また、土地がやせていればいるほどうまくいきます。
コロネーション・メドウ・イニシアチブのリンカーンシャーの庭
皇太子が呼びかけたコロネーション・メドウ・イニシアチブは、全国に新しい牧草地を作るという活動です。皇太子は女王のジュビリー即位60周年の年(2002年)に全国60のカウンティに1つずつ、60の地所をメドウにする計画を作りました。その結果、今では88の新しいメドウができました。
番組は彼自身の裏庭で野生の花を育て、不毛の畑を繁栄する牧草地に変身させた並外れた男に出会いました。ハリー・ターナーがその人です。
もともとリンカーンシャーには、白い石灰質の土地に黄色いサクラソウ、カウスリップCowslip(日本名、キバナノクリンザクラ黄花九輪桜、Primula veris、下の写真の右上)が群生し、咲き乱れていたのだそうです。
彼が耕作をし大麦や小麦育てていた時の畑は下、左上の写真のように奏した黄色い花がどこにもなくなった状態でした。18年前にその土地をコロネーション・メドウを管理する財団ワイルドライフ・トラストに売却し、彼はボランティアとして管理の手伝いをすることにしたそうです。
彼の活動は、20年間にわたって、リンカーンシャー周辺の野生のカウスリップから種子を収集しては撒くというものでした。 カウスリップの種を集め、植えて回っているのです(上の写真の右下)。うさぎにたべられても、根気よく植え続けたのです。その結果、リンカンシャー・ウォルズに地元の花が咲き乱れるメドウが戻ったのです。ワイルド・ライフ財団のケビン・ジェームズはハリーの活動が私たち全員にインスピレーションを与えてくれると語りました。
グレート・ディクスターガーデンで野生生物が増える
番組プレゼンターの一人、アリット・アンダーソンはイースト・サセックスのグレート・ディクスターガーデンを訪れ、ヘッドガーデナーのファーガス・ギャレットにあいました。
グレート・ディクスターガーデンは名園として知られ、多様な植栽で有名です。この多様な植栽により、野生生物が増えているということがわかりました。最近では、1903年以来、サセックスでは発見されていなかった新種のクモが同庭園の石の下から発見されたことを、全英蜘蛛協会に来てもらって確認したほどです。
類型学者であるアンディ・フィリップス氏は、庭園の中にある池や腐った切り株などが昆虫類の住居となり、生物が育つ環境を作り出しているのだと語りました。個人の庭であっても植栽を多用にしたり、土塀や石垣などによって、生物多様性を庭に与えることができます。殺虫剤を撒くことだけがガーデニングではありません。
英国で生息する蛾は2500種類、蝶が60種類ほどですが、蛾の中には、この庭の苔を好んで食べる種類がいるのです。蛾は鳥の餌になるので重要です。
グレート・ディクスターガーデンのみならず、街中でも郊外でもいくつかの個人の庭が集まれば同様の効果があるとフィリップス氏は語りました。エリゲロンでおおわれた石垣なども生物にはとても良いとのことです。
モンティは英国には2,300万人の園芸家がいますので、これらの人々が庭に池やメドウを作れば、その効果は絶大だと力説しました。
トレンタム・ガーデンのオーナメンタルメドウ
番組プレゼンター、ニック・ベイリーはスタッフォードシャーのストークオントレントにあるトレンタム・ガーデンに行き、そこで野生動物の利益のために個人の庭でどのように、そして何を育てることができるかをガーデナーのキャロルに聞きました。
キャロルによれば、ここは、オーナメンタルメドウ(装飾的な牧草地)として厳選した植物を植えているそうです。それによりより長い期間(6月末から11月の初霜まで)、華やかに咲く花を楽しめるのです。
具体的には、ヤグルマソウ、ポピー、異なるタイプのデイジー(こちらは多年草です)を植えています。例えばオックスアイデイジーなどです。
他にもファシリア、コレオプシス・ティンクトラなどを植えています。
メドウは管理が比較的容易ですが、それでも何か特別な工夫をしているのか、と言う問いにキャロルは、この部分の土地は大変痩せているが、薄く腐葉土を敷き、そこに種を撒いて放置するだけだと答えました。その後は水やりもせず、ただ、育つにまかせただけだそうです。ニックは、このサイズの庭を見せられるものにしようと思ったら、何十回も水遣り、支柱を立てたりといった世話が必要なのに、それをしないでこれだけの景観を作り出せるのは素晴らしいと感嘆することしきりでした。
キャロルからのアドバイスとして、もし一般の人が自分の庭でメドウを作りたいなら、もし、大きな土地を持っていれば、1年草か多年草の種をまき、もし、小さな庭しかなければ、芝を少し小さくして、隣家との塀の下の部分などに、メドウの種の混合を撒くと良いでしょう。
ワイルドライフとトラディショナルが共存した庭
番組プレゼンターフランシス・トップヒルはハートフォードシャーに行き、エコロジカルなデザインで知られる2人のガーデンデザイナー、ジム&ジョエル・アシュトン兄弟(バタフライブラザースと呼ばれている)に会いました。二人はワイルドライフをデザインの中心に据えることで知られています。
番組で紹介された庭は半エーカー強の面積を持ち、ハートフォードシャーのビショップスストートフォードの中心にある庭です。スタンステッド空港のすぐ近くで、都会にも近いにもかかわらず、ワイルドライフの宝庫です。
この家の持ち主ナイジェル&ジル カービー夫妻は、2014年にワイルドライフガーデンと同時に、フォーマルおよび草本植物の植えられた庭が欲しいと兄弟に注文したそうです。フォーマルガーデンとワイルドライフガーデンは併存できるということが、この例をみるとわかります。
メドウ向きの植物
プレゼンターのキャロル・クラインはデボンの自分の庭で、どのような植物を選べば自宅の中にメドウを作るような効果があるのか、説明しました。次に紹介する植物は、花粉や蜜が豊富で、虫や鳥の個体数を増やすのに大きな貢献をすることができます。キャロルはコツとして、より多くの種類の植物を植えることだといいます。
以下が紹介された植物です。
週末の仕事
- 遅咲きの一年草の種を撒く(カレンデュラやヤグルマソウなど)秋に開花して楽しめる。
- あまり整理しきれない。枯れた分をきりもどすけど、野生生物のためには雑草は少しぐらい残して良い。
- 竹を切って虫のホテルを作ってやる
- 庭に座ってワイルドライフを楽しむ
- 1m四方に何種類、どれくらいの植物が生えているかを調べてみよう。それにより、何匹位の蜜蜂を支えているかがわかる。
ゐから
今年、いろいろな庭にいくと、メドウのコーナーが作ってあることが多く、ブームなのかと思っていましたが、こういう背景があったということがわかりました。今、英国の自治体などに対して、お金をかけて花壇に植物を植えるより、管理が簡単で、生物多様性にも資するメドウにするよう王立園芸協会などが勧めているとも聞きました。
放置してもせいぜい50cmから80cmくらいにしか草花が育たない北の国ならではの活動という気もしますが、新しいトレンドということで、お読みいただければ幸いです。