オーストリア旅行2日目はウィーンで過ごし、娘の希望が選んだ美術館と博物館をめぐることにしました。
今回の旅行中、この日が一番暑く、終日晴れて、最高気温が34度まで上がりました。最高気温が20度以下のロンドンから来たもので、午後になると疲れてきました。夕方、ベルベデーレ宮殿に行こうと計画していましたが、ちょうど、何かの祝日にあたり、2時過ぎ頃からリンク道路が閉鎖され、路面電車が運休になっていました。
観光意欲は萎え、「お茶したい」「できれば、有名なカフェテリアで」「ザッハートルテ食べたい」とそればかりを母娘で唱えるようになりました。
その結果、2日目の日程は以下の通りとなりました。順にご報告します。
- セセッシオンでクリムトの壁画をみる
- ナッシュマルクトを見物
- カール教会とカールプラッツ駅
- ウィーン市犯罪博物館はグロかった
- アウガルテン工房&博物館に行く
- ルートヴィヒ財団近代博物館(NUMOK)
- ウィーン名物のプチポワンを見る
セセッシオンでクリムトの壁画をみる
クリムトは19世紀末アールヌーボーを代表する画家であり、「分離派」と呼ばれる芸術家グループを率いていました。そのグループが自らの作品を展示するために築いたのがこのセセッションです。
天井に「金色のキャベツ」と呼ばれる月桂樹の葉をモチーフにした飾りがあり、建物入口にも丸く刈り込まれた月桂樹のトピアリーが飾られています。
外側の外壁にも飾りが彫刻されています。中には、クリムト壁画が描かれた地下室、広い展示スペース、2階の展示室などがあります。
セセッシオン https://www.secession.at/en/visit/
開館:火曜~日曜 10時~18時 月曜休み。
入場料:大人9.50ユーロ、学生6ユーロ
場所はKarlsplatz駅からすぐ近くです。
地下室は、会議室のような雰囲気の部屋で、天井近くの壁に絵が描かれていました。この壁画は、クリムトがベートーベンの交響曲第9番をモチーフに連作で壁画として作成したもので、ベートーベンフリーズと呼ばれる連作です。ベートーベンフリーズについては、次のウェブサイトが詳しいので、ご関心がある方はご覧ください。
【美術解説】グスタフ・クリムト「ベートーヴェン・フリーズ」 - Artpedia アートペディア / わかる、近代美術と現代美術
2階にはニュージーランドの彫刻家フィオナ・コナーの特別展が開催されていました。
上の右下の写真です。本物そっくりで無造作に床に置かれているので、最初彫刻とは気が付きませんでした。写真の他にも本物そっくりのごみ袋とか、トンカチやペンチなどが無造作に床に置かれていました。詳細はこちら。
https://www.secession.at/en/exhibition/fiona-connor/
彫刻は大変良くできていました。作るのも大変だし、材料費もかかったと思います。しかし、重いので、漬物石とか文鎮に使う以外、役に立ちそうもありません。
「現代芸術」というのはしみじみ私には理解が難しいです。この作品よりも職人さんが作る実際に役に立つ道具の方がよほど美しいと思います。特に日本製品の場合、使いやすさを追求して機能美を併せ持つようになっていますから、この作品よりよほど芸術性が高いのではないかと、正直思いました。
1階の大きなホールには針金のようなもので作られた現代アートが飾られていました。しかし、残念ながら、私は芸術的な感性が乏しいようです。名画を見ても人の顔や衣類、背景に描かれた品物などに目がいってしまったり、モデルの人生などに関心が向かいます。
娘は正反対。作品を通じて、芸術家が訴えようとした何かに興味があるようです。そして、評価が決まった芸術作品はおもしろくない、とも言います。というわけで、娘が選んだ近・現代美術館は、私には理解不能な部分が多く、もしかしたら、あとであれこれつぶやきますけど気に障ったらごめんなさい。
ナッシュマルクトを見物
さて、ここから夫のお気に入りの壮麗なカール教会へ行きましょうと、ふと右手をみると、市場が広がっています。そうだ、そういえばここにナッシュマルクトという有名な食品市場があるんだった。食い意地の張った私たち母娘、食事の時間にはかなり早かったのですが見てみることにしました。
新鮮な野菜、果物、肉、魚介類、お菓子やパン、乾物、スパイス、お茶やコーヒー、雑貨などの店が並んでいます。野菜については、パプリカ料理の本場ハンガリーから住民が多いせいでしょうか、パプリカの種類の豊富なこと!
マーケットの入り口に並ぶ鮮魚料理のお店がおいしそうで、「夕方また来よう」と、娘と話していたのですが、この日は土曜日で営業時間は17時まで、金曜日に行くべきだったと後で知りました。結局、今回の旅行中は行きそびれてしまいました。がっかり。
営業時間:朝6時~19:30(月~金)朝6時~17時(土曜日)日曜・祝日休
カール教会とカールプラッツ駅
さて、道草を散々食った挙句、カール教会へ行きました。この教会の前は広場になっており、市民の憩いの場となっています。日が高くなって急速に温度が上昇していたためか、ホースで広場に散水していて、水しぶきをくぐって教会にたどり着くような感じでした。
この教会は18世紀にマリア・テレジア女帝の父親カール6世によってペスト平癒祈願のために建立されました。典型的なバロック式の教会で、中も荘厳です。
教会を出て、駅に向かうと右手に古い駅への入り口が見えてきます。建築家オットー・ヴァーグナーによって19世紀末(1898年)にアールヌーボースタイルで建設された入口です。いたずら書きがなければもっと良かったのですが。
ウィーン市犯罪博物館はグロかった
さて次はどこに行こう?ということになり、ゲテモノ好きの娘とウィーン市犯罪博物館へ行くことになりました。
火曜~日曜、祝日 10:00-17:00 月曜休み。開館時間は日によって変更あり。
大人 6,00 ユーロ 18歳までの生徒(ID提示必要) 3,00 ユーロ 子供無料
ここは、オーストリア凶悪犯罪史の博物館です。17世紀以降のオーストリアの著名な事件(ほとんと殺人事件)について1つ1つ事件の概要と犯人の肖像画や手配図、凶行の様子などの絵が展示されていました。
ここは、実にグロかったです。
説明の大半がドイツ語でしたが、単語が難しい。独和大辞典でも全部の単語が調べられるかどうか。しかもオーストリアの凶悪事件なんてほとんど知らないし。サスペンスや推理小説を書かれる方で、次の小説でどれくらい凶悪犯罪にしようかと構想を練るにはお勧めです。
しかし、ゲルマン特有の律義さで集められた展示物のグロさに若干恐怖をかんじました。しかも、いくら何十年以上も前とはいえ、気の毒な殺人犠牲者の顔入りの被害写真、プライベートな体の部分をここまでさらして良いものか・・
特に、前半はまだ、事件を報じた新聞の手書きの挿絵入りというレベルなのでいいのですが、現代に近づくに連れ、犯行現場の白黒写真、さらにカラー写真へとエスカレートしていきました。こういうのが好きな方はどうぞ!
さて、「うー」だの「げー」だのいいながら、地下の展示スペースから上がってきたた私たち。しかし、中庭に出て日の光を浴びたらすっかり忘れて、ランチの時間だということに気が付きました。(どういう神経だ?と責めないでぇ)
そこでlunch near meで検索してみました。
歩いて10分ほどの場所に何件か地元の人向けのカフェテリアがあり、その中の1つに行ってみたところ、正解でした。
Ignaz Jahnと言う店です。
http://www.ignaz-jahn.at/en/menu/
アウガルテン工房&博物館に行く
食事の後は、そこから歩いて10分弱のウィーン磁器工房アウガルテン&博物館に行きました。午前中の博物館とは対照的に明るく、高級な雰囲気です(日本のデパートの陶器売り場のよう)
アウガルテンは1718年に設立された欧州ではマイセンに次いで古い陶磁器窯です。それまでは圧倒的に技術水準の高い中国(景徳鎮)や日本(伊万里、鍋島)から磁器を輸入していた欧州各国の王室ですが、マイセンの成功以降、競って陶磁器工房を自国内に設立しました。アウガルテンはハプスブルク家のための工房です。絵柄など、工房設立当初は東洋風だったのが、西洋風になり、繊細なバラの花や勿忘草などの透明感のある絵付けと白磁が繊細かつ優雅で人気です。
私は90年代に英国にいたころ、陶器の絵付けを習っていました。その経験からいうと現代風の一色とか無地のものよりウィーンのバラシリーズの「手書きのバラ」は難しく、職人の腕が必要だと思います。もし同じお求めになるなら、手書きの花などの製品をおすすめします。もちろん、好みが優先ですけど。
日本人向けの公式サイトもあるようです。
https://www.augarten.com/en/augarten-world/augarten-porcelain-museum/
開館時間:博物館とショップ 月曜日~土曜日 10時~18時 日・祝日休
工房はアウガルテン公園の真ん中にあり、暑くなければ緑豊かで気持ちの良い場所でした。ちなみにアウガルテンの右隣りは、ウィーン少年合唱団です。厳重に施錠されているので、中は見えませんでしたけど、こちらもファンなら記念写真をとりたくなるような施設でした。
店舗は、以前はシュテファン大聖堂のはす向かいの一等地に構えていたのですが、売れ行きが落ちたせいか、あるいは地価高騰のせいか、店をたたんでしまったようです。デパートや高級食器屋さんにも入っているでしょうが、全種類を一度に見て選ぶのなら、こちらに来る方が良いようです。なお、こちらにもカフェテリアがありましたが、ランチの直後ということでスルーしました。
ルートヴィヒ財団近代博物館(NUMOK)
再び地下鉄にのって、ウィーン・ルートヴィヒ財団近代美術館(MUMOK)へ。この美術館は。ミュージアムクォーターの中にあります。表面を石で覆われた建物からして斬新です。暑かったので、入口のある2階に上るだけで、ヘロヘロになってしまいました。
開館時間:月曜日14時~19時 火曜~日曜日 10時~19時 木曜日のみ閉館は21時
入場料:一般12ユーロ、木曜日18時~21時のみの入場は8ユーロ
27歳未満の学生は6ユーロ
この美術館は、近代美術、現代美術の1万点のコレクションを有しており、その中にはピカソやアンディ・ウォーホルらの作品も含まれているのだそうです。
が、私には価値がよくわからず、まさに豚に真珠状態・・・
入ってすぐの大きな広間で行われていた特別展は割と良いと思いました。
“Vertigo Op Art und eine Geschichte des Schwindels 1520–1970”というものでした。訳すと
オプアートとだまし絵の歴史という感じでしょうか?(上の写真の左下2枚)
https://www.mumok.at/en/events/vertigo
パターンと装飾展
https://www.mumok.at/en/events/pattern-and-decoration
彫刻家のニキータ・カダン展
https://www.mumok.at/en/exhibition/nikita-kadan
彫刻家のフリードリヒ・キースラー展
https://www.mumok.at/en/events/friedrich-kiesler
ドリット・マーグライター展 視覚システムと空間構造の芸術家
https://www.mumok.at/en/node/72730
カフェ・ハンジィ
https://www.mumok.at/de/events/cafe-hansi
全部見て回りましたけど、またも、現代芸術は全然わかりません。どれもそれなりに手間暇かけて作ったものだと思うのですが、朝のブロンズの日用品と同様、私には価値がわかりません。特に絵の具をキャンバスにぶちまけただけのように見えるいくつかの作品は?です。美術界で名前が売れさえすれば、その後は墨の瓶を壁に立てかけたキャンバスにぶつけただけでも「芸術作品」と呼ばれるんだなぁ、という印象。
しかし、全館歩いたら疲れてしまいました。美術家の外に出たら35度はある感じ。このミュージアムクォーターの正面に初日に行った美術史美術館と自然史博物館があり、その間を通り抜けると、リンク通りに出ます。ここから路面電車に乗ってベルベデーレ宮殿に行き、ウィーンの街を一望する予定でした。
が、リンク通りに出たところ、何やら不思議な雰囲気が・・そう、自動車と路面電車の通行が止められて、人々が行進しようとしていたのです。何かのお祭りのようです。抗議行動のような雰囲気ではありません。
暑いせいもあり、足もくだびれて、急速に観光意欲が失せてしまいました。リンクのちょうど北東側にはホーフブルク王宮があり、王宮を抜けた先にはコールマルクト通りという王宮前通りがあります。
その通りの王宮よりの端近くに有名なデーメルという王妃や宮廷女官たちが行きつけにしていた高級菓子屋というかカフェがあるのです。(日本にも支店があります)
とりあえず、甘いものを食べよう・・ということで、デーメルに向かいました。
ところが残念なことに、デーメルの座席はいっぱい。席に着くにはしばらく待たなければいけないようでした。というより、入り口の周りで中をのぞいたりしてみたのですが、空いている席は見つからないし、こういう混んでいる店の常として、店員がお客と目を合わせないようにしているので撤退。
そこで、有名なホテルザッハーのカフェテリアに行ってみました。歩いて10分ほど。ホテルザッハーは有名なザッハートルテを生み出した老舗です。
https://www.sacher.com/en/original-sacher-cake/sacher-cafe-en/cafe-sacher-wien-3-2/
しかしこちらはさらに長い外国人観光客の列。その後ろに並ぶのも疲れているし、煩わしくなりました。ちょうどガイドを見ていた娘が、この2店よりおいしいと書かれていたカフェ・モーツァルトが同じホテルザッハーの並びにあるよ!というので、そこにしました。その後の経緯は前々回書いた通りです。とりあえず、足を休ませて、冷たいものが食べられたのでよしとしました。味もおいしかったです。
カフェを出るとすでに6時近く、もう美術館などは閉館の時刻なので、あきらめてウィーンの街をそぞろ歩くことにしました。何しろ暑いので、気力がなくっなってしまって。だらだらと最大の商店街であるケルントナー通りを歩いていたら、残念なことにここはドイツ語圏。お店はすべて土曜日18時にしまって日曜日は休みなのです。ガーン!
となると、あとは夕食を食べてホテルに戻るしかありません。茫然とベンチに座って、眺めていたら、街角に水道の蛇口があちこちに設置されていて、旅行客も市民も空いたペットボトルを持ってきて水を汲んで飲んでいました。そうか。ミネラルウォーターを買わなくてもいいんですね。
さて、5時頃、大きなパフェを食べて、お腹もすかず、どこかに食べに行く気力もなくなり、「どうしようかぁ」と娘と話していたところ、通りすがりにNordseeという、ドイツ語圏を中心に展開するシーフード中心のファストフードレストランがあったのを思い出しました。そういえば、朝シーフードを食べたいと言っていたのでした。そこで、Nordseeにより二人で一皿のエビフライをつまんでホテルに戻りました。
ウィーン名物のプチポワンを見る
今回の旅ではあまり、買い物をしませんでした。というのは、何度も来ていて、アウガルテンも買ったことがあるし、あれこれ購入済のわりに使いこなしていないのです。しかし、昔から刺繍に興味がある私。ウィーン宮廷刺繍のプチポワンには興味があり、自分でも数点、作ったことがあります。
そこで、通りすがりに専門店2店のショーウィンドウをチェック。下の写真の左上のバッグは特に細かく1cmあたり225針だそうです。