英国の庭から~海外生活ブログです

欧州調査歴25年以上のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

東京の介護老人ホーム見学記

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5月中旬に一時帰国して、認知症の母が入居できそうな介護付き有料老人用施設3カ所とグループホーム1カ所を都内の下町地域で見学しましたので、ご報告。ただし、全国ではもっと多様な事情があると思いますので、その点はご容赦お願いします。

 

 

介護老人ホーム探しのきっかけ

母は今年、85歳。2015年秋に認知症だと診断され、「要介護1」と認定されました。認知症が疑われたきっかけは「物盗られ妄想」です。お財布などのしまい場所が分からなくなると、「盗まれた」と騒ぎ、警察に通報したこともあったそうです。思い起こすと、10年程前から近所の方を泥棒呼ばわりする話をしていたので、どうも時間をかけて進行してきた模様です。

父が2005年の秋に亡くなり、1人暮らしになって10年。社交性もあまりなく、会話が乏しく、その間に飼い猫も死んでしまったりして、認知症が悪化してしまったのでしょう。2015年春に私が英国に来たのも悪化の要因だったようです。

認知症認定前後に、実家を処分し、弟の家の近くのマンションに引っ越しました。英国から一時帰国して引っ越し荷物の片づけを手伝ったのですが大変でした。母から引き取ったものが、私の家に山積みになっています(うーどうしよう)。

弟は自分でマンションを買って、母を住まわせて面倒をみてくれています。弟夫婦には本当に感謝しています。弟もすごいけど、これを許すお嫁さんも立派です。母は決して良いお姑さんではなかったのです。にもかかわらず、二人とも根気よく母の面倒をみてくれています。日本に帰ったら私が面倒を見なくては‥と思っているところです。

 

要介護1とは

 統計では85歳以上の約4分の1が認知症を発症するのだそうです。私自身も認知症になる可能性が高いです。認知症の進行は、その原因やタイプなどによって様々です。

母はまだかろうじて一人暮らしが可能です。少し前までは、外見だけでは普通の老人と全く区別できませんでした。今でも身体的には極めて健康で、体力もあり、同世代どころか体は私より柔らかいし、信号が赤に変わりそうになると、私を置いて先に走っていくことができるくらい、歩くのも走るのも早いです。

しかも、調子が良いときは、極めて鋭い意見をポンポンと言うので、健常者のように思えます。毎日、英国の昼休み(日本では夜8時台)に母に電話するのですが、その時に見ているテレビ番組の内容をかいつまんで、きちんと私に伝えることができます。メモをとることもできるようです。見た情報から色々とアドバイスもしてくれます。ですので、会話だけではどの程度、悪いのか、なかなかわかりません。

しかし、記憶の戸棚から記憶を取り出すことができなくなってきています。色々な記憶がつながらなくなっていて、前日のことはほとんど思い出せません。毎日電話しているのに「久しぶり」だし、冷蔵庫の中からは、椎茸のパックが8個も9個も出てくるし、1週間以上前に買ったお弁当が腐っているし・・と一皮むくとかなりおかしいのです。(お手伝いの方に来ていただいて掃除や冷蔵庫の整理をしてもらうようになりました)

『まだら呆け』という状態がどのようなものか、よくわかってくるにつれ、この病気の難しいところだと実感しました。

 介護認定は、介護を必要とする度合いによって、軽い方から「要支援1~2」と「要介護1~5」の7段階に区分されています。この「要介護1」というのは、自分の身の回りのことの大半はできるものの、運動機能や認知機能、思考力や理解力が低下し、部分的に介護が必要とされる状態です。

食事や排せつなどに介護が必要になると「要介護2」のレベルとなるようです。母は昨年末頃から「要介護2」に近づいてきた感があります。鬱的な傾向も出ているのか、悪い状態のときは、食事や排せつ、着替え、入浴など身の回りのことをするのも億劫なようです。

それが顕著になってきたことで、「介護施設にはどのようなものがあるのか、早めに調べておくほうが良いだろう」と弟夫婦は判断したようです。そして、優良老人ホーム選びに無料で相談に乗ってくださるコーディネータの方(Mさん)を紹介してもらったそうです。

 

認知症に対応した施設にはどのようなものがあるのか 

要介護1の老人向けの介護施設にはどのようなものがあるのか、表にしてみました。そしてわかったことは、現時点で母が入れるような施設としては、介護付き有料老人ホームとグループホームの2種類しか選択枝はありません。特別養護老人ホームはもう少し症状が進み、要介護3以上になった場合の選択肢ですが、公的施設であるため利用料などが低くが抑えられている分、入居を申し込んでも空きがなかなかでないようです。

名称 種類 認知症対応
介護付き有料老人ホーム 民間
グループホーム 民間
特別養護老人ホーム(特養) 公的 可(要介護3以上)

老人向け施設としては、以下のものもありますが、認知症の受け入れを主としていないため、施設によって認知症患者を受け入れるかどうかがまちまちだったり、入居できてもケアの質はあまり高くないようです。

また、介護老人保健施設(老健)はリハビリにより在宅生活復帰を目指す施設であり、進行するだけの認知症には向かなそうです。

名称 種類 認知症対応
従来型有料老人ホーム 民間 施設による
サービス付き高齢者向け住宅 民間 施設による
ケアハウス 公的 施設による
介護老人保健施設 公的

 

当然のことですが、民間と公的施設には利用料に大きな差があり、月にして10万円以上の差があります。また、利用料は地価に比例していますので、同じ都内でも山の手の一等地だとかなり高額になります。施設の設備も利用料と比例して価格が高くなれば、立派になります。

弟が経済的な部分を試算してくれました。年金で収まる範囲が理想的なのですが、それだと公的施設しか利用できません。上述の通り、認知症患者が入居できる公的施設である特別養護老人ホームに入居するには要介護3でなくてはいけません。さらに要介護3と認定されても、待機者が多いはずですので、すぐに入居できるとも思えません。

そこで、1.弟の家から通いやすい場所にあること、2.預金を切り崩して補てんしながら入居可能なこと、という条件のもと「介護付き有料老人ホーム」3カ所と「グループホーム」1カ所を見て回りました。

 

施設のどこをみるべきか

回った3カ所の「介護付き有料老人ホーム」は、この分野に極めて詳しいMさんがこだわりを持って選んだ施設でした。順にA,B,Cとしておきます。Aの入り口でMさんと待ち合わせて、施設を見学させていただきました。

Aは、建設会社のOBの方が事業を起こされたとのことで、洒落た建物でした。大変人気があるようで、現在、空きはありません。

Bは、教育関連サービス大手の介護事業で、ソフト面からも積極的に取り組んでおりスタッフの研修にも熱心なようです。Aに比べてアットホームな雰囲気でした。同じく空きはありません。

Cは、従来からある介護関連企業の大型介護施設で、広く、価格設定には他にない、最初に一時金を払うと生涯、毎月の利用料は定額と言うサービスがありました。サービス内容は他の二つ同様、良かったのですが、アクティビティが若干古い印象でした。壁に展示されている入居者の作品は小学校低学年の「こどもの日」の展示物をみているような雰囲気で、母が嫌がりそうな気がしました。

 

ともあれ、介護保険法が2000年に施行されてほぼ20年、日本の介護施設が世界の福祉先進国と同様の水準にまで成長していたことには驚きました。私は仕事の関係で、20数年前に北欧などの福祉施設なども見たことがあります。祖母はもう25年ほど前に94歳で亡くなったのですが、1980年代後半に祖母のために母と自宅近所の老人ケア施設を見学にいったことがあるのです。当時の施設の印象は暗く、個人の自由もありませんでした。個人の自由が確保された北欧の施設を見てきた私からみると、とても入りたいと思う場所ではありませんでした。

しかし、今回、訪問した施設、特にAの施設などは弟が「自分で入りたい」というほどの瀟洒な内装と設備でした。

それぞれの介護付き有料老人ホームが提供するサービスは、介護保険法で最低限のサービスの内容が決まっていることもあり、ある一定のレベル以上で共通していました。

例えば、安全関連の設備であるバリアフリー構造、スプリンクラーの設置、耐震構造、24時間スタッフが常駐していて安否の確認をしてくれること、協力医療機関から月2回、医者が派遣されたりということです。衛生面では、施設の出入りの際は必ず手を洗ってうがいをするといったルール、部屋の掃除は週2回、シーツの交換は週1回などです。さらに、症状が進んで一人で入浴できなくなれば、介助もしていただけます。看取りサービスがあるところもあります。入居者の部屋は個室で、自分の家具も少しは持ち込めます。近所のスーパーなどにも毎日、付き添いの方がついてくれて買物に行ったり、外出もできるのです。

詳細は次のサイトが非常に詳しいので、ご関心がある方はご覧ください。

https://www.minnanokaigo.com/guide/type/roujinhome/kaigotsuki/

 

ただし、建物の作りやアクティビティ、中の雰囲気などは、運営する会社の特徴や考え方、方針がかなり出ているようでした。

介護ホーム選びのコーディネーターのMさんから、どういったポイントをみるべきか、教えてもらいました。主に次の点です。
 a. 価格 (一時金や月々の利用料)
 b. 家族との距離(家族が住んでいる場所からの通いやすさ)
 c. アクティビティ(レクリエーションなどの日々の活動内容)
 d. 施設の設備、作り
 e. 医療体制
 f. 雰囲気

 このほか、Mさんは、その施設長が、きちんとスタッフをコントロールできているかどうかも見るべきポイントだと話していました。それぞれの施設は、施設長の方が案内してくれることが多いのですが、実際に各部署で働いているスタッフとの接触風景やスタッフの様子でかなり色々なことが伝わってきて、施設長がしっかりしている人だとやはりそれがわかるのです。

また、壁には入居者の作品やポスターなどが張り出され、それでもアクティビティの内容や雰囲気が伝わってきます。その結果、アクティビティなどにもかなり差があることがわかりました。

こういった介護施設には、様々な理由で介護が必要となった人が入居しているのですが、やはり一番大きな比率を占めるのが認知症患者だそうです。また、訪問した施設は比較的開所してからの年月が浅いため、自立して生活できる要介護度1から2の入居者が多かったです。これは、いったん入居すれば亡くなるまでその施設で過ごすこと、入居者は年を取るにつれ、介護度が高くなっていくこと、運営期間が長い施設ほど、入居年数が長い=介護度が高い人が多くなるということです。また入居者の比率は女性の方が高いというのも特徴でした。

アクティビティの内容の最近の傾向は、入居者が現役時代から得意としていたこと、興味をもっていることなどを引き出して、役割を与えて、といったアプローチを試みるようになってきているようです。しかし、古いタイプの施設では、小学校や幼稚園のようなアクティビティが中心だったりもします。もちろんそこには人手が足りているかどうかが大きくかかわってくるし、それは利用料にも比例したサービスなのですが。

ともあれ、こうしたソフト面での認知症や高齢者へのアプローチについては、もしかしたら、欧米の方が進んでいる可能性があるような気がしました。英国に戻ったら調べてみよう思いました。そして、英国では、日本とは違った取り組みが始まっていることもわかりました。大変興味深いので、こちらはもう少し調べて、別途ご報告します。

介護付き有料老人ホームを見た翌日、グループホームも見に行きました。介護付き有料老人ホームとの大きな違いは、医療サービスがつかないことです。その分価格が安くなります。また、部屋のサイズも小さくなりました。とはいうものの、価格はまちまちなようで、訪問したグループホームの場合、前日訪問した「介護付き有料老人ホーム」と比較して、さほど大きな価格の差がない一方で、施設としてはちょっと落ちた感じでしたので、価格面でのお得感は大きくありませんでした。次に書く、母の説得という観点から考えると少し難しそうな気がしました。

 

一番の課題は、入居者本人の意志

さて、そうなると次の問題は、実際に母を入れることができるのか、ということになってきます。Mさんもおっしゃっていたし、英国人の友人に話してもやはりそうなのですが、誰でも「介護施設には入りたくない」ものなのです。そして、認知症になったからといって、何もかもわからなくなるわけじゃないのです。「まだら呆け」というのは、本当に「まだら」で、普通に何でもできるときが、まだ、かなり大きな比率を占めているのです。これは日常の能力だけでなく、感情や思考もそうなのです。

だから、我が家の課題は、今後空きが出たときに、どう母を説得するか、ということになりそうです。ネックとなるのは、
1.高い、もったいない
2.自分はまだまだ大丈夫
3.そういうところに入ると自由がなくなる
などの抵抗です。これを、論破し、説得しなくてはいけません。

実際に、素敵な施設をみせて、「ここに入ったら、いつも誰かが相手してくれて、もう寂しくないよ」と説得できる可能性もなくはないのですが・・

と、いうわけで、AとBにキャンセル待ちの予約を入れて、英国に戻ってきました。空きが出たという連絡が来たら、試しに母に見に行ってもらおうと思っています。認知症の旅は長く、先が全然見えません。そうこうする間に自分も仲間入りしてしまうかも。

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Gardeners’World第11回でMontiが植えていた白い花、うちにも咲いていました。