英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

1月29日の議会の投票結果(ブレグジット その16)

29日の23時過ぎに書いたページですので、少し修正します。この日、議会(下院)で行われたのは、メイ首相が先週提出したPlan Bに対する動議を7本選び、採決するものでした。メイ首相のPlanBそのものについての投票はありませんでした。7本は、バーコウ議長が選び、同議長が決めた順番に討議が行われ採決が行われました。

 

残り12本は討議もされずに議長の一存でボツになったようです。

 

結果は次の通り。

1. 労働党代替案 否決 反対327 賛成296

2. スコットランド国民党&プレイドカムリュ代替案 否決 否決327 賛成39

3. グリーブ議員の6日間だけ政府優位を廃止 否決 反対321 賛成301

4. クーパー議員の2月6日から政府優位を廃止、3月29日の離脱日延期 否決 反対321 賛成298

5. リーブス議員の2月26日までに方針が決まっていなければ離脱日延期 否決 反対322 賛成299

6. スペルマン議員のノーディール反対 可決 賛成318 反対310

7. ブレイデイ議員の新しい北アイルランド代替案を交渉 可決 賛成 317 反対301  

 

結局、可決されたのは、ブレイディ議員が提出した、北アイルランド問題に関してバックストップ以外の代替案をメイ首相に出すように求める動議と、ノーディール反対案だけでした。これを受けてメイ首相はEU首脳と交渉することになります。しかし、英国での採決の3分後にはEU首脳から離脱協定の再交渉には応じないとの声明が出されています。

 

可決されたノーディール反対案は法的拘束性はなく、メイ首相は引き続きEUに対して「応じなければノーディール」という脅迫を続けることになります。

 

メイ首相から政治的優位性を奪う2案はいずれも残念ながら否決されました。

離脱日延期案も否決されたので、上記の「ノーディール反対」は可決されたものの、ノーディールにならない保証はどこにもなく、一歩、ノーディールに近づいたことになります。

 

北アイルランド問題ですが、EUが再交渉に応じるかどうかが今後の注目点となります。EU首脳の中から、「物理的国境を設けないことを保証する「バックストップ」なんて技術的に不可能」との発言が多々出ていますから、新たな代替案を考えるという方法はあるのかもしれません。

 

 

 さて、クーパー労働党議員は、採決で敗れたものの、メイ首相のウソを列挙し、「あんたの言うことは全く信用できない」と真っ向から斬りかかり、「労働党首はこうでなくっちゃ」と拍手喝采を浴びたので、次期労働党首(つまり次期首相)の可能性が一気に高まりました。

 

また、昨日、BBC2で、デビッド・キャメロン前首相が無策失策を重ねて国民投票になだれ込んだ経緯、EU首脳陣の再三の反対予告を無視した経緯、最後にメイ首相がだめ出しをした経緯がばっちりと証言付きで報道されています。BBCをご覧になりそびれた方はインデペンデント紙が紹介しています。

https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/tv/reviews

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2019年1月29日付 Evning Standard メイ首相がいろいろ出してますがEU側がダメと言っている図

https://www.standard.co.uk/news/london/the-evening-standard-political-cartoon-by-christian-adams-a3530851.html

 

今回の結果を見ると、保守党の強硬離脱派からも離反者がでなかったことから、メイ首相が党内コントロールに成功したことがわかります。翌日の朝刊各紙をみましたが、「メイ首相は2週間の交渉チャンスを得たけれども、EUが応じる可能性は低く、次の大敗北が待っているだけ」という論調が多かったように思います。産業界も一様に冷ややかです。とはいえ、右寄りの新聞などには「メイの勝利、玉はEU側へ」とメイ首相を称える論調もみられました。 

 

ともあれ、次は2月12日2月14日が山となるようです。そのあたりまでは、この不毛な話は考えないようにしようっと(笑)そうじゃなくても天気が悪くて寒いし・・

 

しかし、日本人だから言える言葉だと思いますけど、北アイルランドをあきらめる、あるいは、これに失敗したら北アイルランドを失うといった発想は英国人にはないのでしょうか?もし、これが日本が朝鮮半島に持っている領土だったとして、同様の状況なら、英国は日本に「領土をあきらめろ」と忠告するに違いないですよね?

 

週末にBBCの記者が「ブレグジット問題が膠着状態なので、アイルランドも一緒に離脱してくれないか」とアイルランドの女性閣僚に聞いていましたが(もちろんアイルランドの閣僚は即座に却下していましたけど)、文書や約束だけで物理的国境に代わる保証をするのは絶対に無理だと思いまねぇ・・ 

 

翌30日の新聞の漫画をご紹介。

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Daily Telegraph 2019年1 月30日付ブリュッセルの店先で「閉店だ」と断られるメイ首相