英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

1月29日以降、何が行われるのか(ブレグジット その15)

ブレグジットの次の山場は1月29日(火)です。1月21日にメイ首相が提出した代替案(PlanB)に対する投票が下院で行われます。また、PlanB発表後、1月25日までに19本の修正動議が下院議員から提出されました。これも29日に議論され、全部かどうかはわかりませんが投票に付されるようです。どれをどのような順番で議論し、採決するかを決めるのは、バーコウ下院議長だそうです。引き続き大活躍ですね。

 

その後は、メイ首相は再びEU首脳との交渉に出かける一方、政府案や議員が出した修正案を盛り込む討議や作業が行われます。そして、2月26日を期限として、EU離脱案に関する「意義ある投票」を再び行わなければいけません。

 

ブレグジットについては、相変わらず対立が続き、まとまる気配はありません。さすがに、政治に対する中立性を貫いてきたエリザベス女王からも1月24日、異例のメッセージが発せられました。BBCの報道からそのまま引用すると、サンドリンガム婦人会のスピーチで「互いを攻撃せず、異なる視点を尊重すること。一緒に共通点を見つけようとすること。そして全体像を見失わないことです」と述べたそうです。

www.bbc.com

 さて、今日は大雨かつ強風、腰も相変わらず痛いので、家でじっくり、現在のブレグジットの状況についてまとめてみました。以下はかなりマニアックな話になりますので、ご関心がある方だけお読みください。

 

EU離脱に関するプロセスが難しいのは、通常の英国法の議会審議プロセスとは異なり、「2018年EU離脱法」(2018年6月26日施行)という国内法で定められた手順に従っているためです。EUとの合意案に関するスケジュールを定めているのは、同法13条です。それをさらにややこしくしているのは、同条項に対して超党派の議員が提出した動議が可決修正され、どんどん日程が変わっているからです。この先、さらに変更の動議も出ています。

ご関心のある方は、↓「2018年EU離脱法」。審議プロセスは13条。

European Union (Withdrawal) Act 2018

 

独立シンクタンクInstitute for Governmentによると、「2018年EU離脱法」13条に昨年末、政府によるEU離脱合意案が1月21日までに議会で承認されなかった場合、他の法案審議では、修正動議を提出する権限を持たない下院議員でも、ブレグジットに関しては動議を出すことができるという条文が追加されたのだそうです。その結果、1月21日~1月25日の間に19本の動議が議員から提出されたのだそうです。

 

提出された動議のうち、比較的重要そうなものが新聞で解説されていますが、それを見ますと、今、一番注目を集めているのはYvette Cooper労働党議員が、超党派の議員たちの支持を受けて提出した「議会バックストップ案」と呼ばれるもの。(バックストップとは「用心のための策」という意味)

 

19の法案は、詳細部分が微妙に異なるだけで、大きく次の6種類となります。

 

1.ノー・ディール拒否
Caroline Spelman保守党議員が提出。党を超えて賛成多数となる可能性があります。

 

2. 離脱日の延期

Rachel Reeves労働党議員が提出。2月26日までに議会合意が形成されなければ、離脱日の延期手続きをメイ首相に求めるものです。延期期限を定めていないところが、この動議のネックで、同様の動議が別の議員からも1月21日より前に出ています。

 

3. 政府の優位性を停止(議会バックストップ案)

 上述のクーパー労働党議員が、超党派の議員たちの支援を受けて提出したのがこれです。「政府議事はすべての 会議において優先権を有する」ということを定めている下院規則第14条(Standing Order 14)を2月5日以降、停止するというものです。

 

それにより、議会案が政府案に優先され、メイ首相の「EU離脱法案」に替わって議員グループが提出する「第3号EU離脱法案」が優先されるたのだそうです(私のボケ始めた脳と乏しい英語力で理解したつもりの情報ですので、間違っていたらお許しください)。

 

「第3号EU離脱法案」には2月26日までに議会がEU離脱法案について合意に達しない場合、メイ首相に対して、9カ月間の離脱延期をEUに通告するよう命じる条項が入っています。

 

「第14条」停止案としては、もう1件、Dominic Grieve保守党議員が提出した動議もあります。こちらは、重要採決が行われる2月12,26日、3月5,12,19,26の6日だけに絞って政府の優位性を停止するというものです。(全部火曜日です。火曜日は重要採決の日だったんですね)

 

4. 党による拘束なしの投票

Hilary Benn労働党議員が提出した動議で、EU離脱委員会が提示した様々な選択肢について党による拘束のない議員投票(indicataive vote)を求めています。これも賛成多数で可決される可能性があります。

 

5.アイルランドのバックストップに関する政府への要求

Andrew Murrison保守党議員による、「バックストップ措置に2021年末までと期限を明記する」、Graham Brady保守党議員による「アイルランド・バックストップ措置の代替案を設ける案」、いずれもメイ首相にEUに対して交渉するよう求めるものです。この2つは、政府の考えに合致しており、メイ首相に交渉のマンデートを与えるものなので、すんなり可決、あるいは投票なしで採用されるとみられています。

 

6.各党の代替案

 労働党の代替案「ノルウェー型離脱」
これはコービン党首が提出した労働党による代替案です。ノー・ディール拒否。関税同盟に残るというノルウェー型の離脱をする。第2国民投票も含めいくつかのオプションを認めるといった内容です。移民政策を自由にできず、EUへの拠出金も求められますから、メイ首相の離脱案より大きく後退するわけで、労働党内離脱派議員が離反する可能性があります。

 自由党の代替案

ノー・ディールの拒否と第2国民投票(People's vote) 自由党に11議席しかないので、インパクトはありません。

 

 

このように色々と案は出ているのですが、結局、どの案だと何票獲れるかという数合わせになっています。Guardian紙が1月22日付で、議会の票数がどのように割れているかをまとめていましたので、ご紹介。

 

現在、下院の中で投票資格がある議員は639名です(議長4名と登院しないシンフェイン党員7名をのぞく)。その過半数ですので320票で可決となります。

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Guardian紙1月22日付記事から作成

さて、一番左のノー・ディール反対、離脱日延期案は331票とれそうですので、これは可決される可能性が高いです。


メイ首相の離脱案ですが、今後のEUとの交渉でアイルランド問題で多少の譲歩を引き出し、DUPを満足させることができ、強硬離脱派に対して「反対したら、もう金輪際、ブレグジットできなくなるわよ」という脅しの効果が出た場合という前提条件付きで(注1)強硬離脱派とDUP(いずれも赤字)の票がとれると可決します。

 

第2国民投票の可能性ですが、これは、かなり可能性が低く、政府と労働党の両方がすると決めない限り(赤字の部分)、可決されません。議員のプライドもありますし、また、バクチを打つことになりますので。

 

関税同盟付きの離脱というのは、労働党が出したノルウェー型代替案ですが、北アイルランド問題はなくなりますが、EU離脱の意味をなしません。「ノー・ディールになるかも」の脅しが効き、政府と労働党が妥協しまくり、強硬離脱派を完全に切り捨てた場合に成立します。

 

ここまでお付き合いいただいた方、お疲れさまでした。自分の理解にはなりましたが、本当に不毛な話ばかりでむなしい。

 

上記のとおり、離脱日は延期になり、ノーディールにならない可能性が高いと思われます。でも、こんな面倒くさいプロセスを経なくても、メイ首相は自分の意志で離脱日の延期も、ノーディール回避もできるんですよね。ひどい話です。

 

既に各地域の空き倉庫の4分の3以上が埋まっており、あわてて在庫の積み増しを図っている企業にパニックが広がっているそうです。空き倉庫(多くは中・東欧に工場を移転した企業の跡地など)の持ち主はここぞとばかり、「10年契約でなければ貸さない」と強気の姿勢だそうです。倉庫を借りる場合、家賃だけでなく、保険料とか付随する支出は莫大です。企業にとっては大きな損失ですよね。

 

保守党の支持者は企業経営者が多いですから、多くの保守党支持者がメイ首相のやり方に強い不満を持っており、同首相が党首でいる限り、献金しないと言っているそうです。

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Evening Standard紙2019年1月25日付 By Andy Davey

 

https://www.standard.co.uk/news/london/the-evening-standard-political-cartoon-by-christian-adams-a3530851.html