米フォーブス誌というのは、色々な世界ランキングを発表し、その順位が上がった下がったと、世界中の偉い人や企業、国の機関が悲喜こもごもになるという罪作りな雑誌です。
さて、そのフォーブス誌が2018年12月に発表したのが、「ビジネスに最適な国ランキング」。なんと驚いたことに、英国が2年連続で首位となったのです。
キャメロン前首相が「選挙に勝ったら国民投票してもいい」と口を滑らしたお陰で国民投票の実施が決まったのが2015年5月。以来、3年以上に亘り、先行き不透明な状態に置かれているにもかかわらず、2年連続首位とは・・・
フォーブス誌によれば、「知的財産権の保護」「イノベーション」「税負担度」「テクノロジー」「腐敗度」「自由度(個人、貿易、金融)」「官僚主義の程度」「投資家保護」「労働力」「インフラ」「市場規模」「生活の質」「リスク」など15の評価項目によって審査し、英国だけが全項目で上位30位に入ったとしています。
しかし、私はフォーブスの評価方法には疑問を感じます。特に、税負担度。これは明らかに間違っています。英国の法人税率は確かに低いのです。英国の法人税は国税しかなく、税率が現在19%、2020年4月以降は17%に引き下げられます。しかし、法人税率だけで国際比較しているから「税負担が低い」などとのん気に評価できるのです。
先日も書いた通り、この国には悪名高い「ビジネスレート」という事業者用不動産にかかる固定資産税があり、この金額が莫大。日本の固定資産税と異なり、大家ではなく店子に払う義務があります。公衆便所にまで課せられているくらいですから、逃れる道はありません。
この結果、少し前にも書きましたけど、ロンドンの小さい店舗のビジネスレートは年間数千万円だし、スーパー最大手テスコなんて、法人税の5~6倍ものビジネスレートを払っています。しかも、法人税と違って、ビジネスレートは固定額で、事業が赤字でも支払わなければいけないのです。これがどれほど事業の負担になっているか。
かねがね書いているお粗末な「インフラ」、使える人がなかなか見つからない「労働力」、テロの恐怖がつきまとう「リスク」、高い家賃と光熱暖房費、まずい食べ物がつきものの「生活の質」も上位30位以内?
あ、ついつい興奮してしまいました。ちなみに日本は19位に甘んじていますが、残念がることはありません。この雑誌のランキングの評価の精度が悪いと上述の理由から私は確信しております。
昨日、英国を代表する掃除機メーカー「ダイソン」が本社をシンガポールに移転すると発表したばかりです。製造拠点を移すだけならわかります。本社をわざわざアジアの小国に移さなければいけないほどの国のどこが「ビジネスのしやすい国」なんでしょう?
2位のスウェーデンに在住の友人にもこの情報を共有したのですが、この国も秋の総選挙以来、首相を選出できず、年明け後の今週、ようやく組閣できた状態です。
移民の増加で治安が悪化し、治安の悪い地域を避けて本社を移転する企業も出始めているところ。元々、物価や人件費、税金が高くてお世辞にも投資環境が抜群とは言えません。
フォーブス誌にはできれば、評価15項目に加え、「食べ物がおいしい」、「天気が良い」、「安定した政治」、「移民トラブルの少なさ」、「通勤電車がまともな時間に来る」、こういった重要な要素も配点に加えてほしいものです。
「ビジネスに最適な国ランキング」1つで全てを評価するのは酷かもしれませんが、フォーブス誌、おびただしい数のランキングを発表していますが、一事が万事、この程度の信頼性じゃないかなぁ・・と思っております(不愉快に思われた方、あら還主婦の勝手なつぶやきです)。