ブレグジットについて、企業が一番困っていることは政治・経済の先行きが見通せない状態が国民投票前から既に3年以上続いていることでしょう。明日、離脱合意案が下院で否決されるとその期間はさらに長引くことになります。(※明日と書きましたが10日15時30分にメイ首相は翌11日の下院での議決延期を発表しました。さらに長引きそうです。)
先行きが不透明であれば、余計なコストがかかります。事業計画は何種類も考えなければいけないし、そうでなくても難しい投資の判断はさらに厄介です。
ノーディールとなりEUと英国間に関税が発生したら大変なことになると以前お伝えしましたが、不足したらすぐに困るもの、特に生鮮食品などについてはクリスマス以降、大手スーパーなどが在庫の積み増しを図ると言っています。なんでもBBCの委託で、Imperial College of Londonが実施した調査では、2分通関に余分な時間がかかるだけでドーバー海峡とロンドンを結ぶM20という高速道路は10マイル近い渋滞、4分かかると29.3マイルの渋滞となるそうです。
https://www.imperial.ac.uk/news/186530/how-imperials-findings-post-brexit-borders-caught/
医薬品企業、大企業の下請けで重要部品を作っている企業など、なければ命にかかわる、ないと多くの関連企業に影響が出る、といった製品を供給しているところは、既にノーディールを見越して3〜6カ月以上の在庫の積み増しに着手していると聞いています。そのための倉庫や輸送、その他諸々のコストの増大はばかになりません。
こうしたわかりやすいものとは別に、EUにはCEマーキングを始め、様々な安全基準があり、それを満たさないとEU市場では流通できませんが、英国の認証機関で取得した規格や基準に関する認証が離脱後のEUでは無効になってしまうと言われています。日本企業がどの程度、英国の認証機関でそうした認証を取得しているかわかりませんが、英国企業の大半は英国で取得しているでしょう。取得済の認証をドイツやフランスで改めて取りなおすとしたら、莫大なコストと労力がかかります。EU側の製品を英国に輸出する場合も同様です。
英国で取得した認証、EU側で取得した認証をお互いに認めるように約束して流通させるのが一番良いのですが、そのためには両者間で相互認証協定を締結しないといけません。しかし先日合意した協定にはそれにはほとんど触れられておらず、離脱後の移行期間の交渉に期待するしかありません。しかし、移行期間があるのかないのか、相互認証に関する交渉がいつ行われるのか、現時点では全く見通しがついていません。
上述の待ったが効かない製品を輸出している企業(特に大手企業など)は、ここでもノーディールを想定して大陸側の国で認証の取得し直す作業を始めているそうです。
こうしたコストは誰が払うのでしょう?企業はかかった経費を消費者に転嫁しますよね?グローバル企業なら当然、世界中の消費者に転嫁すると思います。もちろん、日本の消費者だって例外じゃないと思います。
連日、議会やメディアで政治信条だの党利党略にこだわり、無意味かつ無責任な主義主張を繰り返しているだけの英国の政治家、さらにそれを許す「政治ショー」が大好きな英国民に対し、正直怒りを覚えます。