英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

日本企業に求められる雇用慣行の見直し

経済協力開発機構(OECD)が2018年12月20日、日本の高齢化と人手不足を踏まえ、定年制と賃金制度を改善するようにと日本に提言しました。たぶん日本でも大きく報道されていると思います。

 

提言の内容は、まだ元気で働ける高齢者をもっと活用できるよう、定年を他の先進諸国並みに引き上げるか、もしくは撤廃することです。また、定年後に非正規で再雇用されるケースが多いため、高齢者の雇用においても「同一労働・同一賃金」制度を導入することです。

 

この提言の狙いは、日本的雇用慣行下での、正社員、非正規社員間の不公平、年功序列の見直しです。OECDは出産・育児でいったん退職したり、就職氷河期に日本特有の新卒一斉採用のタイミングで就職できず「非正規社員」となった労働者に対して、昇給もなければボーナスもない状態で使い捨てにしてきたことを問題視しているのです。これが高齢者の再雇用においても同様の問題が予想されるとして、早急な対処を求めています。

 

 私は、特に「非正規社員」の女性を正社員に格上げすることなく、何十年も使い続けて許されている現状が問題だと思います。昨年の今頃、仲が良かった知人から次々に「雇い止めのため、3月末に退職することになりました」というメールをもらいました。彼女達は、同じ企業に15年~20年も勤務した挙句、最後の5年のところで正社員になれると思ったら「あと1年雇うと正社員にしなければいけないからクビ」と宣告されたのです。長年、昇給もボーナスもなくこき使って使い捨て。これが日本の多くの企業の「女性活用」の現状です。

 

こうした、不届きな日本企業の現状に対して、OECDだけでなく、EUも今後改善の圧力をかけてくることが予想されます。実際にEUは2月に発効するEPAの中に労働保護水準に関する条項を盛り込んでいますし、FTA発効済の韓国に対して12月17日、労働者保護改善に向けた要請書をつきつけています。

 

また、英国は、2015年3月に現代の奴隷制を防止する法律である「Modern Slavery Act 2015 (現代奴隷法)」を制定、企業のサプライチェーン全体において奴隷行為がないか、確認し声明を出すことを求めています。対象は英国で事業活動を行う企業・営利団体のうち、年間の売上高が一定規模を超えるもので、日本企業でも約100社ほどが該当、すでに声明を出しています。この声明は1回きりではなく、毎年、見直して声明を出し直さなければいけないし、その都度、改善に向けた取り組みの姿勢を見せなければいけないとされています。

 

昨今、外国人技能実習生の悲惨な話が報道されています。同一労働・同一賃金が当たり前の欧州人からみれば、正規社員、非正規社員、研修生の間で賃金に数倍、数十倍の開きがあるなどということは理解されにくく、外国人研修生の時給400円などというのは「奴隷労働」とみなされるはずです。

 

こういうことを当然としている企業が下請けとして部品などを納入していれば、当然、サプライチェーンのトップにある大企業は「奴隷労働」として報告せざるを得ないでしょうし、そうなれば、英国のみならず世界からの批判の対象となりますので、その下請け企業を切り捨てざるを得ないでしょう。

 

企業の方々から見れば、こうした「外圧」に対して「余計なお世話だ」と思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、私自身は海外転勤のおかげで「雇い止め」のような不愉快体験を免れたとはいえ、四半世紀以上搾取されてきた実感は否めませんから、外からこういう圧力がかかることに大賛成です。外圧でもなんでも、企業が真剣に改善に取り組まなければいけない環境ができれば歓迎です。

  

OECDの勧告については、次のURLをご覧ください。

http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/japan-should-reform-retirement-policies-to-meet-challenge-of-ageing-workforce-japanese-version.htm

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赤い方が我が家のシャクヤク。シャクヤクの花言葉は「怒り」

本文とは全く関係ありませんけど、右のバラはオリビア・ローズ・オースチンです。花付きが良く元気でおすすめです。