英国の庭から

欧州調査歴25年のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

英国史上最悪の帰化植物イタドリ(Japanese Knotweed)

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こちらに来て間もないころ、庭ごみの回収に関する注意事項に「Japanese Knotweedを入れてはいけない」と赤字で書いてあり、これは何のことだろう?と調べてみると「イタドリ」のことでした。

 

その後、折に触れJapanese knotweed (Fallopia japonica)が非常に困った問題としてニュースになり、そのたびにJapaneseの一人としては何とも複雑な気持ちになります。

 

イタドリは、その繁殖力の強さから、英国で最も嫌われる帰化植物なんです。ビクトリア時代に観葉植物として日本から持ち込まれたそうで、英国人がその繁殖力の強さに「しまった」と思った時には、国中に広がっていたようです。もみじやしゃくなげ(石楠花)、しゅうめいぎく(秋明菊)など、英国には他にも日本から持ち帰った植物が多々あり、それらは価値ある鑑賞品種として長らく愛されているのですが、イタドリだけは継子扱いです。

 

嫌われる理由は、半端でない繁殖力のせい。草木ごみに入れてもごみの中で繁殖して腐葉土にならない、根こそぎ抜いても少し残った地下茎から復活してしまう、アスファルトを割って出てくる、竹のような茎が夏の間に2メートル以上の高さに成長するといった繁殖の速さが恐れられる理由です。イタドリの徹底撲滅には、ブルドーザーを使って50cm以上の深さで広範囲に土を剥がして、さらにラウンドアップのような強力な除草剤をまかなければダメとか、いや、除草剤を噴霧したって駄目、茎1本1本に太い注射器で除草剤を注入しなければダメとか、色々な方法がネットに掲載されています。駆除専門業者もたくさんいるからこれは一種の雇用創出となっているのかもしれませんが、駆除というと日本では「白アリ退治」などに使う言葉ですが、ほぼそれと同じ扱い。

 

実際に、イタドリを放置しておくと、不動産価格が下がってしまいます。1981年野生生物と田舎法(Wildlife and Countryside Act 1981)という法律で、田舎でイタドリを繁殖させる(放置する)と違法行為で処罰されてしまうようになり、2013年からは不動産の売却にあたり物件にイタドリが発生していないか報告することが義務付けられました。また、2014年に施行された2014年反社会的行動、犯罪および警察法(2014 Anti-social Behaviour, Crime and Policing Act 2014)でも、庭に生えてきたイタドリを放置するだけで違法であり処罰対象になるとされています。ちなみに、生のイタドリは1990年環境保護法により規制廃棄物に位置付けられており、伐採してごみとして出す場合は、焼却灰にしないとダメのようです。

 

そういうわけで、イタドリ繁殖情報というのが、ウェブ上で公開され更新されています。まるで、鳥インフルとか豚コレラ情報のようです。
http://www.planttracker.org.uk/map/knotweed

 

そもそも、19世紀の英国にはプラントハンターと呼ばれる人々がいて、世界中に出かけては種や苗を勝手に持ち帰ったそうです(それだけでなく、世界中から貴重な文化遺産も)。そうしたツケが今になって出てきているのでしょう。当時の英国人の貪欲さと身勝手さがさ遺した膨大なマイナスの遺産が、中東をはじめ世界各地に今も悲劇をもたらしていることを思うと、「イタドリの逆襲」といった感じで、正直、同情する気にはなりません。まあ、でも、イタドリの繁殖による道路舗装や建物倒壊などの被害だけで年間2億ポンド(2017年の場合)にのぼるそうです。

 

それにしても、日本原産のこの植物、日本で被害の話ってそれほど聞きませんよね?ブタ草やセイタカアワダチソウの話なら良く聞きますが。認識不足だったのかもしれませんが、「イタドリ」というのは、わらびやぜんまい同様、家で煮たり炒めたりできる、愛すべき山野菜だと思っていました。確か高知県の方々など、結構な値段で購入していらっしゃるのではないでしょうか?

 

どうしてこのような違いが出るのでしょう?調べてみたところ、日本にはイタドリの天敵がいるのです。名前もイタドリマダラキジラミ。これがイタドリを全滅させるほどではないけれども、ほどほどに成長を抑制し、バランスが保たれているのだそうです。

 

そこで、英国政府は数年前から日本からこの虫を買い付けてバイオコントロール作戦を展開しているらしいのですが、効果はあまり上がっていない感じです。本日時点の英国のイタドリ情報は以下の通り。ロンドンにもかなり広がっていますね。

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