英国の園芸本や種袋の裏側をみると、たいていジョン・インズ(John Innes)の用土を使うようにとの指示があります。袋の正面にJohn Innes No.1などと大書されているものがどこのガーデンセンターでも売られており、少し前まで、これはMr.Innes率いる園芸用土専門メーカーの製品だと思っていました。ところが、実際に買ってみると、買う店によって品質にばらつきがあり、袋をよく見ると色々なブランドがJohn Innes のロゴをつけていることがわかりました。
これはどういうことだろうと思って、調べたところ、ジョン・インズ氏は19世紀後半にウィンブルドンの南東、マートンに住宅団地を建設した実業家で、コンポスト開発には関与していませんでした。不動産事業で成した財の一部を学校か園芸研究所の設置に充てるよう遺言し、それを受けて20世紀初頭に作られたのがジョン・インズ園芸学研究所(the John Innes Horticultural Institution)で、今でも世界的な植物学の研究所だそうです。戦後、同研究所はマートンからノーフォークに移転しましたが、その研究所が1930年代に開発した園芸用土がジョン・インズ・コンポストだそうです。
コンポストはローム土(泥土と砂が半々にまじりあった土)、ピート、砂(あるいは小石)と肥料を主たる成分とした万能園芸用土で、同研究所は、用土配合フォーミュラを無償で公開し、利益は受け取っていないそうです。
現在、ジョン・インズ・コンポストは主に次の6ブランドが製造しているようです。アイルランド産ピートモスを主要材料の1つとしていたせいか、その半分以上はアイルランド企業です。Bord na Móna (アイルランド)、Bulrush(北アイルランド)、Erin(アイルランド)、Westland(アイルランド)、Levington(サリー州)、J.Arthur Bowers(リンカーン州、2015年からWestland傘下)。
用土の配合フォーミュラは以下の通りで、用途によって6種類あります。
ただし、上記は1930年代の配合で、良質なロームが入手しにくくなり、各社はロームの代わりに腐葉土など代替となる土を混ぜているそうです。先日も書いたとおり、ピートモスの採掘により環境を破壊するといった批判もあり、脱ピートモスも進んでいます。
また、英国王立園芸協会のサイトでは、上記に配合に加えて、さらに肥料を追加するよう、勧めてています。
私自身もジョン・インズの種まき用土というのを購入し、種まきや挿し木に使ってみましたが、特別優れた土という印象はありませんでした。種まき用土にもかかわらず、未発酵の大きな木片とかプラスチック片などが混ざっていたりして、若干品質に疑問も。
今回、あれこれ調べて、メーカーごとに品質が違うということがわかりましたので、別のメーカーの製品はもっと質が良いかもしれません。