あっという間にオーストリア滞在も最終日となり、2日目に行きそびれてしまったベルベデーレ宮殿に朝一番に行きました。4日目は短時間ながら、話題が多い場所を見学しましたので、2回に分けてご報告します。
ベルベデーレ宮殿とは
ウィーンもいろいろと見どころがありますが、やはりウィーン初めての方は、
1.シュテファン大聖堂~ホーフブルク宮殿の旧市街一帯、
2.美術史美術館、
3.ベルベデーレ宮殿
この3つは必見です。これに、余裕があればカール教会周辺とシェーンブルン宮殿を追加し、更に余裕があれば、ウィーンの森やプラーター遊園地などを加えるという感じかなぁ‥と思います。
さて、このベルベデーレ宮殿ですが、ハプスブルク家によって作られたものではなく、フランス王家にもつながる名門サヴォア公家の一員であったプリンツ・オイゲンの夏用の邸宅として作られました。プリンツ・オイゲンの本名はオイゲン・フランツ・フォン・ザヴォイエン=カリグナンといい、王家とほぼ同格にあったサヴォア公家の男性ということでプリンツの称号をつけて呼ばれていたようです。
オイゲンはフランス語のウジェーヌと言う名前のドイツ語読みです。サヴォアは、スイスのレマン湖の南に広がる一帯の公爵領です。プリンツ・オイゲンの両親はサヴォア家の分家のソワソン伯爵夫妻です。母親がフランス王ルイ14世の寵姫の一人だったので、そのご落胤ではないかと言う説もあります。
プリンツ・オイゲンは次男坊で伯爵領を継ぐこともできなかったので、成人して軍人になりました。しかし、何らかの理由で母国フランスではなく、神聖ローマ帝国の軍隊に入り、一生のほとんどをフランスと戦って過ごすことになりました。各国の有力諸侯の多くが親戚だったこと、軍才もあったことから重用され、名将と呼ばれるようになりました。しかし財産を残す子供はなく、邸宅は姪が相続した後、ハプスブルク家の所有となりました。プリンツ・オイゲンが活躍した時代は、女帝マリア・テレジアの父カール6世の時代です。


ベルベデーレ宮殿は庭を挟んで上宮と下宮からできています。どちらも美術館として使われており、現在、ベルベデーレ宮殿には3つの展示スぺースが設けられています。上宮は近代の美術品が中心、下宮はオイゲン公が集めた中世・バロックの芸術品が展示されています。他に近くにオランジェリーと厩舎があります。また、ベルベデーレ21と言う別館が宮殿の外側(南)に作られており、そこでは現代芸術が展示されています。いずれも国宝級ですが、今回は時間が足りなかったため、上宮の近代美術だけをみることにしました。
次のウェブサイトで美術史美術館同様、全所蔵品について説明がされていますので、ぜひご覧ください。(それぞれの絵のところにもURLをつけておきます)
https://www.belvedere.at/en/permanent-collection
バロック絵画の多くは下宮に
宮殿の中に入り、天井を見上げるとバロック風の華やかな絵が描かれています。
まずはバロック絵画のある一角から。バロック絵画の多くは下宮にあるようです。
下の絵はもともと美術史美術館の所蔵品のようで、残念ながらベルベデーレ美術館のウェブサイトに説明は出ていません。当時の宮廷画家だったカール・フォン・ブラースの「1749年の演習」と言う絵です。マリア・テレジア女帝とその世継ぎヨーゼフ王太子が軍隊に接見した様子が描かれています。
モネやゴッホの佳作も
印象派の絵画もありました。どちらもいい絵ですね。
Eine Allee in Monets Garten in Giverny – Werke – Digitale Sammlungen
Die Ebene von Auvers – Werke – Digitale Sammlungen
クリムトの名作が勢ぞろい
しかし、やはりベルベデーレ上宮の最大の特徴は、クリムトの絵画がふんだんにあることです。特に風景画をまとまってみることができるのはすばらしいです。
「接吻(1908年)」




左から順に
開花したポピーBlühender Mohn (1907年)
ヴァイセンバッハの森の家Forsthaus in Weißenbach I (1914年)
ひまわりの咲く農家の庭Bauerngarten mit Sonnenblumen (1907年)
ひまわりSonnenblume (1907/08年)


ソニや・クニプスSonja Knips (1897/98年)
フリツァ・リードラーFritza Riedler (1906年)
クリムトの他、晩年のクリムトが高く評価したものの、これから成功の道が始まろうという矢先に、スペイン風邪(インフルエンザ)で28歳で亡くなったエゴンシーレの作品「死と乙女」(1915年)もありました。
特別展「速さと滑らかさ」展から
上宮では、5月23日~9月8日の期間、油絵の「速さと滑らかさ」と名付けた特別展をやっていました。趣旨を完全に理解できなかったものの、面白かったのでご紹介。
同じ雲を扱っても、作家や雲の様子によって違っていて面白いと思いました。
左:夕暮れの雲 Caspar David Friedrich
右:雲の習作 Adalbert Stifter
いずれもEdmund Mahlknecht画
左:ザルツカマーグートの家
右:山の湖の風景
Theodor von Hörmann画
上:ツナイム近くのエスパルセッテンの畑Ⅱ
下:ツナイム近くのエスパルセッテンの畑(大)Ⅳ
Das große Esparsettenfeld in Znaim IV
ベルベデーレ宮殿の開館日と入場料
美術館の所要時間ですが、上述しました通り、見ごたえのある美術館で、上宮、下宮、ベルベデーレ21の全てを見ると1日コースです。上宮、下宮、21、厩舎、オランジェリーなど通しで見るチケットがあると思いますが、以下は上宮だけのチケット代です。
上宮については、次の通り(2019年7月時点)
Belvedere宮殿(上宮)
開館時間:9 時 – 18時(金曜日のみ21時まで)
入場料:
成人 € 16,00
65歳以上 € 13,50
27歳未満の学生 € 13,50
19歳未満無料
Vienna City Cardでの割引価格 € 14,50
ではでは!次は最後の訪問先であるホーフブルク宮殿についてご報告します。