世界最高峰の園芸フェアとして知られるチェルシーフラワーショーが5月21日~25日の期間、ロンドンで開催されました。5月22日(水)に見に行ってきましたので、何回かに分けてご報告します。
チェルシーフラワーショーとは
チェルシーフラワーショーは王立園芸協会(RHS)が主催する園芸フェアです。元々の正式名称がグレート・スプリング・ショー(the Great Spring Show)という名前で、ロンドンに春を告げるイベントとして知られています。
入場者数は例年16万人6,000人です。これは5日間の累計の人数で、チケット発行の上限として設定されているものです。
英国内だけでなく、世界中からお客が来るのが特徴です。また、公開前日に王族やセレブ、スポンサー、展示者などが招待されるガラという日があります。しかし、これは会期に含まれません。
また、会期中の最初の2日間はRHS会員限定公開です。私は会員なので、毎年会員初日に出かけていたのですが、今年はもたもたしていて、3月に気が付いた時には会員初日は売り切れ、あわてて2日目午後を購入しました。毎年、チケットは3月末頃までにほとんど売り切れてしまうようです。
全ての展示は評価対象
このフラワーショーには様々な展示がありますが、その最大のハイライトは26のモデルガーデンです。それに次ぐハイライトは、グレートパヴィリオン、あるいはマーキーと呼ばれる中央大テントです。その中に今年は87の育苗業者や園芸団体がブースを出展しました。このほか、248の企業が店舗を出しており、園芸用品などを購入することができます。ただし、チェルシーでは生木や苗の販売は原則として認められていないようで、会場で注文することになります。
モデルガーデン、育苗業者、店舗はそれぞれ、その内容、展示方法などが審査され、モデルガーデンと育苗業者には、金、銀メッキ、銀、銅の賞が与えられています。また、店舗には★の数(最高5個)で評価が与えられています。
BBCも全16回の特番
ちなみにチェルシーフラワーショーですが、園芸ファンだけでなく、国民広くから関心を寄せられている証だと思うのですが、BBCが開催期間前から連日なんと16本もの特番を組んでいます。ご関心のある方は次のページをご覧ください。
モデルガーデンの一番人気はキャサリン妃デザインの庭
さて、今日はショウの目玉であるモデルガーデンについてご説明しましょう。モデルガーデンは、大きさによって3つの部門に分かれています。一番大きいショー・ガーデンが11(この中に(およびRHSが提供する2つのフィーチャー・ガーデンが含まれます)、中サイズのスペース・トゥ・グロー・ガーデンが9つ、小さいアーティザン(園芸職人)ガーデンが6つとなっています。
出展されたモデルガーデンは次のURLから見ることができます。
今回のショーで一番人気だったのは、キャサリン・ケンブリッジ公爵夫人がデザインした「自然に帰ろう」というフィーチャー・ガーデンでした。入場は30分~1時間待ち。庭そのものは、美しいというより、人口雑木林の中にブランコや棒切れなどで作った隠れ家や小川、橋などがあり、楽しい懐かしい場所という感じでした。庭で遊ぶジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子などの様子がKensington Royalと言うケンブリッジ公夫妻のTwitterに紹介されています。
今回、私がうれしく思ったのは、日本人ガーデナーが出展した2つの庭、両方が金メダルを獲得したことです。チェルシーフラワーショーで金メダルというのは、なかなか取れるものではなく、映画の題材にもなったくらいです。
今日はその中でも常連の石原和幸さんの庭に絞ってご紹介します。
石原和幸さん(石原和幸デザイン研究所)の庭「グリーン・スイッチ」
https://www.rhs.org.uk/shows-events/rhs-chelsea-flower-show/Gardens/2019/green-switch
石原さんは、過去10年以上にわたり、チェルシーフラワーショーで金メダルを受賞し続けており、このショーの名物男として絶大な人気を誇ります。
アーチザン部門に出展された「グリーン・スイッチ」という作品は、8年連続11個目の金賞となりました。庭のコンセプトは、都市生活の緊張をスイッチ・オフし、自由を味わえる庭というものです。
日本風の庭園で、滝、苔、紅葉がポイントであることは前年同様です。前々回、ご本人に伺ったところでは、苔などはノルウェーから持ってくると話されていました。
よくみると庭の細かいところにも苔が敷き詰められ、庭の外側の壁にもびっしり苔が植えられていて、手が込んでいます。庭の設営期間は2週間ほどと聞きましたが、こんな短期間で、しかも乾燥した気候にもかかわらず、苔はきちんと根付いているよう見えるし、壁からも乾いて落下することなく張り付いているというのは相当高い技術の証だと思います。石原さんの苔の技術は有名で、「苔男(モスマン)」という仇名で知られているのです。
石原さんに前回伺った際、出展費用は約5,000万円ほどで、毎年スポンサー探しに苦労されているとおっしゃっていたのですが、今年は前年と同じ学校法人(大学)GLION Londonのようです。
石原さんのチェルシーフラワーショーに関する番組
次回は、今回初挑戦で金メダルの偉業をなした
北海道出身の二人の若手デザイナーによる「漢方の庭」についてお届けします