英国の庭から~海外生活ブログです

欧州調査歴25年以上のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

英国アンティークのお楽しみ(その2 時代の呼び方)

1回目を書いてから、大分時間がたってしまいましたが、久しぶりに英国アンティークの話など。今回は、英国アンティーク品の購入や鑑賞に不可欠な時代の名称と様式についてご説明しましょう。(ちょっと学校の教科書みたいになってしまいました。でも、アンティーク屋さんに行くときに、必ず出てくる用語です。)

 

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 アンティーク品の様式とその時期

一般に流通している英国アンティーク品の大半は18世紀以降のものです。でも、観光名所、特に貴族の館に行くと、エリザベサン様式、ジャコビアン様式、カロリアン様式などの家具が置かれています。また、19~20世紀には、こういった昔のスタイルのリバイバルブームなどがありました。様式の名前をよく耳にするので、せめていつ頃の時代かわかるように一覧表を作ってみました。

↓箱の中に色を付けられるような気もしますが、右の欄をぶち抜きにするだけで力尽きてしまいました(笑)。

君主 様式の名称 スタイル
1558-1603 エリザベス1世 エリザベサン ゴシック
1603-1625 ジェームズ1世 ジャコビアン
1625-1649 チャールズ1世 カロリアン バロック
1649-1660 共和政Commonwealth クロムウェリアン
1660-1689 チャールズ2世 王政復古Restoration
1685-1689 ジェームズ2世
1689-1694 ウィリアム&メアリー ウィリアム&メアリー
1694-1702 ウィリアム3世 ウィリアム3世 ロココ
1702-1714 アン クィーンアン
1714-1727 ジョージ1世 前期ジョージアン
1727-1760 ジョージ2世 中期ジョージアン
1760-1811 ジョージ3世 後期ジョージアン 新古典主義
帝政様式
1812-1820 リージェンシー リージェンシー
1820-1830 ジョージ4世
1830-1837 ウィリアム4世 ウィリアム4世 折衷様式
1837-1890 ビクトリア ビクトリアン
1890-1901 アーツ&クラフツ
1901-1910 エドワード7世 エドワーディアン アールヌーボー
1910-1936 ジョージ5世 ジョージ5世 アールデコ

 

だいたい「王様の名前+様式」 なのですが、わかりにくいのは、上の表の2,3番目にある「ジャコビアン」「カロリアン」です。ジャコブとはジェームズの愛称で、ジェームズ一世時代を指します。この人はエリザベス1世の後継者としてスコットランド王からイングランド王になった人です。エリザベス女王に対する陰謀を企てたという罪で斬首された女王メアリ・スチュワートの息子です。

ジェームズ1世の治世までがゴシック様式。その特徴は、金、赤、青、緑など派手な色使い、中世の教会の尖塔などのようなとがった装飾などです。また、この時代、英国の海運技術が急速に発達したので、交易でもたらされたアジアの風物や海のモチーフなども取り入れられたそうです。

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エリザベス1世(左)、ジェームズ1世(右)by Wikimedia
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エリザベス女王時代の3本脚の椅子 Cotehele, Cornwall by Wikimedia Commons

イングリッシュ・バロックの時代

「カロリアン」はその息子、チャールズ1世のラテン語名に基づくものです。歴史的には激動の時代でした。フランスのような絶対王政を目指したチャールズ1世は、国民の猛反発にあい、清教徒革命で斬首されてしまいました。

清教徒革命で王制を倒し、厳格な清教徒だったクロムウェルが共和政治を行った時代は「クロムウェリアン」と呼ばれます。

その後、清教徒が推奨する禁欲的な生活への不満から王政復古となり、放漫な政治への不満から王を追放した名誉革命までの二人のスチュワート朝の国王の時代(チャールズ2世、ジェームズ2世の時代)は「王政復古の時代Restoration」と呼ばれます。

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CharlesI, Cromwel, CharlesII, James II クロムウェル以外はWikimediaから

名誉革命でオランダから迎えたのがオレンジ公夫妻「ウィリアム&メアリー」です。メアリーが亡くなると自身も英王室の血を引くウィリアム公がウィリアム3世として即位します。チャールズ1世からウィリアム3世の時代までが、イングリッシュ・バロック様式の時代です。

 この時代、壮大な建物が作られた時代でした。例えば1666年のロンドン大火で焼失したシティ地区に建立されたセント・ポール大聖堂や、チャッツワース、カースル・ハワード、ブレナム・パレスなどがそうです。

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セントポール大聖堂(クリストファー・レン設計)

英国文化はずっとヨーロッパ大陸、特にフランス文化の影響を受けてきました。11世紀にノルマン人によって征服されてから支配階級は長らくフランス語を話していたし、その後も常にフランス文化を模倣してきたのです。

 スチュワート朝の時代は、チャールズ1世の妹がフランス王ルイ14世の弟のオルレアン公に嫁ぐなど、密接な縁戚関係も持っていました。だから、ベルサイユ宮殿などで使われていた金ぴか、左右対称、飾りが大量についた豪華な家具や装飾品を取り入れました。また、形は同じながら、金ピカにせず英国人好みの木目を出したものなどもありましたが、デザインはかなり装飾的です。有名なチッペンデールの家具などもこの時代のものです。

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チッペンデールの椅子

クロムウェリアンはそうした風潮への反発の時期ですから当然、地味目です。しかしあまり見たことがありません、と書きかけたところで、そういえば、前の家にありました。(地味な農家風の家具です。庶民はこんな感じの家具を使っていたのでしょう)

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1682年に結婚したときの記念品のようです

今も人気のクィーン・アン様式

オレンジ公夫妻が跡継ぎを残さなかったので、即位したのが妹のアン女王です。この時代は大陸ではロココ主義の時代で、華美な装飾が多かったのですが、英国ではむしろ地味で簡素になりました。クィーン・アン様式と呼ばれます。特徴は猫足がついた家具。上のバロックの時代に比べると簡素ながら優雅というのが特徴です。この時代、たくさんの移民が米国に渡ったのですが、これは優美さと簡素さがマッチしているということで、人気が続き、米国の上流階級に取り入れられ、現在でもクラシックな家具とか住宅などによく使われています。

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© National Trust / Lynda Aiano 

上の写真は典型的なクイーンアン様式の椅子です。アン女王は、気の毒な女性で、17回妊娠し、5回死産、7回流産したそうです。生まれた5人の子供は殆ど乳児期に死亡し、唯一幼児時代を生き延びた長男は11歳で亡くなりました。いくら乳幼児死亡率が高かったとはいえ、彼女の体質(免疫疾患の模様)と、医学や栄養学のレベルの低さが悲劇の原因でしょう。

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アン女王 by Wikimedia Commons

 アン女王の後継者候補には、名誉革命で王位をはく奪された父ジェームズ2世の息子(腹違いの弟)がいたのですが、カトリック教徒だったということもあって、自分の継承者に指名することはなく、わざわざドイツのハノーバーから国王を迎えました。これがハノーバー王朝の始まりです。

 

ハノーバー王朝の王様というのは歴代、ジョージという名前で4代続きました。これがジョージアンと呼ばれる時代です。前半はクィーンアン時代とスタイルが大きくは違わないのですが、後半になるとフランス革命が勃発、ナポレオン時代の帝政様式などが入ってきます。

 

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帝政時代の家具

3代目のジョージ3世が、精神疾患にかかり、皇太子が摂政を務めた時代がリージェンシー(摂政)時代です。この時代がちょうどナポレオンの時代と重なります。そして、摂政皇太子がジョージ4世となり、その弟のウィリアム4世が亡くなると、姪のビクトリアが即位して、長い治世が始まります。

 

ビクトリアンは多様な様式が混ざった時代

ビクトリア女王の時代は、幕末から明治の時代です。ビクトリアンと呼ばれる時代ですが、60年もあります。

ビクトリア時代の治世の前半は、新婚で幸せであまり頭の良くない女王の好みを反映して、派手でやぼったい感じのデザインが多いです。家具などは、過去の時代のリバイバルと新しいものの折衷様式、フランスのデザインの取入れなどいろいろなものが混じった感じです。

女王の治世の末期,1880年頃からウィリアム・モリスによるアーツ&クラフツ運動がおこり、自然を題材とした手作り風の家具やインテリアが多く作られました。

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ウィリアム・モーリスの壁紙

女王の長男、エドワード7世の時代、エドワーディアンは第一次大戦前のアールヌーボーの時代です

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Vitrail de la porte d'entrée du salon de musique (House for an art lover, Glasgow) by Wikimedia commons

そしてその息子ジョージ5世の時代(エリザベス女王のおじいさん)の時代は、王様の名前ではなく、アールデコの時代となります。

その後の製品は、まだ、100年経っていないので、「アンティーク」ではなく「ビンテージ」「セカンドハンド」と呼ばれています。

 

駆け足で説明してしまいました。

言葉で説明しても、なかなかぴんと来ないと思いますので、今後も写真を見つけたら追加したいと思います。ご参考になれば幸いです。