英国の庭から~海外生活ブログです

欧州調査歴25年以上のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

英国の新聞早わかりガイド

 

 英国の新聞は発行部数が日本と比べて格段に少ないです。しかし、発行部数が少ない分、それぞれのカラー、特に政治スタンスを強く打ち出して、選挙や国民投票前など、各紙が対立した記事を載せます。どのような新聞がどのような政治スタンスなのか、EU離脱をどう考えているのかご紹介しましょう。

 

 次のグラフは2017年2月に世論調査会社YouGovが調べたものです。全国紙8紙がどの程度右、左寄りかという質問に対して、回答を集めたものです。赤が濃いほど左寄り、青が濃いほど右寄りです。

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YouGovが2017年2月下旬に行った調査

詳細にご関心のある方は以下をどうぞ!

https://yougov.co.uk/topics/politics/articles-reports/2017/03/07/how-left-or-right-wing-are-uks-newspapers

 

左寄りから右寄りの順に私の勝手な感想と各紙の2016年のEU離脱国民投票時のスタンスをご紹介しましょう。

 

The Guardian/The Observer(日曜版)

発行部数(14万部/17万部)EU残留派。 

www.theguardian.com

1821年に創刊。最も左寄り、労働党支持、一般紙(Broadsheet)の1つ。タブロイド版。労働党、自民党を支援していますが、中産「リベラル」層向けの新聞。

 

EU離脱関連の報道内容やコメントでは一番まともに感じます。文章も読みやすいです。しかし何より、この新聞社の偉いところは、記事を全部を無料公開していることです。そして内容に賛同した人に購読料を払ってもらうスタイルです。だから実は米国人が最大の読者らしいです。購読料を払わなくても読めますので、是非、どうぞ!

 

The Daily Mirror/The Sunday Mirror 

発行部数(52万部/41万部)EU残留派

www.mirror.co.uk

左寄り。大衆紙。タブロイド紙。スポーツとセレブのゴシップ情報満載です。労働者階級寄りですので、王室には批判的のようです。一昨日のフィリップ殿下の追突相手の次のようなコメントも掲載されています。

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The Independent 

EU残留派

www.independent.co.uk

中道、リベラル層対象。1986年に発刊し、どの政党にも肩入れせず、完全に独立した立場を維持するのがポリシー。

一般紙(Broadsheet)の1つでしたが2016年3月にウェブ版だけになりました。発行部数はウェブ化前は5万部程度に落ち込んでいたようです。この新聞は創業時に各新聞社の辣腕記者が集まったそうで、内容は面白いです。硬軟取り混ぜて色々な記事があります。他にはない話題もあります。時々、フェイスブックやツイッターに登録しておくと、おや?と思うようなニュースが入ってきます。The Guardian同様、無料で公開されており、有料にすると広告なし版が読めます。The Guardian同様お勧めです。

 

TheTimes/The Sunday Times 

発行部数(42万部/73万部)EU残留派

www.thetimes.co.uk

右寄り上述した通り、1785年に創刊し、現存する世界最古の日刊紙。タブロイド版。一般紙(Broadsheet)保守党支持。購読対象は保守層。

 

内容は決して右寄り過ぎることはなく、色々な記事が出ていて量が多いです。あくまでも私の主観ですが、若干切れ味が鈍い印象。言葉は格調高いのかもしれませんが、そこまで読み取る英語力がこちらにありません。でも、歴史や芸術の記事は面白いです。

 

The Daily Telegraph/The Sunday Telegraph 

発行部数(36万部/28万部)EU離脱派

www.telegraph.co.uk

一般紙(Broadsheetと呼びます)の中では最も右寄り。保守党支持。

 

保守層の中でも特に愛国主義的な層を対象としており、王室の話題も毎日出てきます。また、チェルシーフラワーショウを後援していて、ガーデニングの記事、ガーデニング通販も毎週出ています。ガーデニングのページ、王室のぺージは面白いです。離婚したヨーク公夫妻が再び同居していて「世界一幸せな離婚生活」を送っているという記事は秀逸でした。

 

ただし、EU離脱に関しては、離脱支持で、その論理はかなり???です。ボリス・ジョンソン前外相を記者として雇って言いたい放題書かせています。ブログネタになりそうな変な記事が時々あるので、見ずにはいられませんが、これ一紙だけとなると微妙です。

 

The Sun/The Sun on Sunday 

発行部数(140万部/103万部)EU離脱派

www.thesun.co.uk

大衆紙。タブロイド紙。右寄り。保守党支持。パパラッチを雇ってセレブのえげつない写真を載せていることでも有名。EU離脱にあたっては、愛国精神をあおり、かなり強力に離脱運動をしていました。

 

Daily Express/The Sunday Express 

発行部数(32万部/28万部)EU離脱派


www.express.co.uk

1900年創立の大衆紙。タブロイド紙。右寄り。保守党とさらにEU懐疑派の英国独立党(UKIP)を支持しています。王室セレブのゴシップが大好きな新聞。愛国的な右翼が購読層。

 

The Daily Mail/ The Sunday Mail 

発行部数(122万部/103万部)EU離脱派

www.dailymail.co.uk

1896年創刊。大衆紙。タブロイド紙。右寄り。愛国的かつ労働者階級でもあまり教育レベルが低くない層を購読者層に設定している模様です。

 

EU離脱を扇動したとして、キャメロン首相から編集長解任要求が出たほどです。内容に信ぴょう性がないとウィキペディアに引用を禁止されるほどろくでもない媒体。書いている方は楽しいでしょうね。

 

このメール紙ですが、マイクロソフトがデマニュースを防ぐために始めた第3者機関 The NewsGuard による警告が掲載されるようになったそうです。(Guardian紙1月23日付)

 

www.theguardian.com

 

以下はYouGov調査に入っていなかった有力紙。

Financial Times 

発行部数(18万部)EU残留派

www.ft.com

日刊経済紙。政治的には中立。紙の色からピンク・ペーパーと呼ばれることもあります。2015年秋に日本経済新聞社に買収されて、日本の記事が増えたように思います。月1回の付録のHow To Spend Itは、数百、数千万円の品物ばかりが掲載されています。また、不動産のページも、世界のトップリゾートやニューヨークの摩天楼の物件など、数十億円のものばかりです。「高級紙とはこれだよ」と言う感じです。

 

London Evening Standard 

発行部数(86万部)EU残留派

www.standard.co.uk

右寄り。保守党支持。主にロンドンの駅で無料配布されている日刊の夕刊紙です。タブロイド版ですが、タブロイド紙ではなく、無料配布とは思えないほど充実した内容です。ロンドンにいらした方はただですので、是非お読みください。購読層は、ロンドンに通勤するサラリーマン層。

 

City A.M. 

発行部数(8万部)EU離脱派

http://www.cityam.com/

右寄り。保守党支持。ロンドン市内シティ周辺で毎朝、無料配布されている日刊紙。タブロイド版。購読対象はシティ周辺で働くビジネスマン。内容もビジネス、政治、経済などが中心。

 

Metro 

発行部数(145万部)EU離脱派

metro.co.uk

中道。サンを抜いて、英語圏では発行部数が最大となった全国で無料配布されている日刊紙。タブロイド版。Evening Standard紙よりスポーツやセレブのゴシップが多く、ほとんどタブロイド紙。日本のスポーツ紙のような印象。これもロンドン市内駅、大通りなどに午前中はおいてありますので、旅行でいらした方はご覧ください。

 

以上、各紙の発行部数は2018年11月時点のもの(四捨五入しました)。

発行部数にご関心がある方はこちら。各紙、発行部数減に悩んでいるようです。

https://www.pressgazette.co.uk/national-newspaper-online-abcs-web-figures-in-double-digit-drop-as-print-circulation-falls-across-the-board/

 

以下は、メイ首相がEUとの合意案妥結を発表した翌日の各紙の第1面。

 

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2018年11月15日付各紙1面

<タイムズ紙はどうして「高級紙」なのでしょうか>

日本の報道をみていると、英国のタイムズ紙に対して、「高級紙」と冠言葉をつけることが多いです。最近も眞子様のご婚約問題について、次のようなコメントがありました。「高級紙『タイムズ』で報じられたことがショックでした。タブロイド紙や大衆紙とは違います。」(皇室ジャーナリスト氏)
 
はて?タイムズ紙はタブロイド版です。えげつない新聞を意味するタブロイド紙という意味では違いますけど。昔はタブロイド版の新聞はセンセーショナルなゴシップばかり扱う新聞ばかりだったので「タブロイド紙」という言葉ができたのですが、今やFT、テレグラフ、メール以外はほとんどタブロイド版。

2つ目はタイムズ紙が、日本人が「高級」と考えるほど高級かどうかです。確かに、この国の大衆紙よりは高級です。でも、日本だって大衆紙はありますけど、それと比較して朝日、読売新聞を「高級紙」なんて呼ばないですよね?「日刊の全国紙」です。

私の職場では現在、フィナンシャル・タイムズ(FT)、タイムズ、ガーディアン、テレグラフの4紙を購読しています。昼休みなどに目を通していますが、朝日、読売新聞と比べてタイムズ紙の内容が高級か?といえば、答えはNO。よほど日本の新聞の方が高級です。

確かに、貴族が昔、執事にアイロンをかけてもらって読んでいたのがタイムズだったと思います。でも、タイムズの編集長だって、今、「高級」と言われて喜ぶかは疑問ですね。面白くしたいとは思っているでしょうが・・さらに言うと、↑の皇室ジャーナリスト氏のコメントでが示す「影響力」も発行部数がたったの42万部だし、どうでしょう?

その意味では、真の影響力ある高級紙はFTだと思います。世界中の富裕な財界人はたいてい購読しているでしょうし。

 

<新聞選びは、階級よりも関心や教育水準と関連>
同様に、よく「英国で何新聞を読むかでお里が知れる」みたいなことを言う人もいるのですが、昔は階級と新聞購読が直結していたようですが、今はだいぶ事情が違ってきています。

 

なぜって、英国は日本ほど新聞の配達があてになりません。年中、配達漏れがあるし、雨の日はビニールもかけない状態でビルの軒先に投げ付けていくので、びしょびしょになっています。近所の家で新聞を購読している家があり、時々配達に遭遇しますけど、道路から20メートル以上ある玄関に向かって放り投げるのです。たぶん、どこか破けてますよね。配達代も安くなく、紙媒体を定期購読する人は減る一方です。
 
既にインデペンデント紙がWeb版だけに移行していますし、他紙も早晩、追随するでしょう。そうなれば、「さりげなく」も「お里」も関係ない。それに、ロンドンの場合、毎日、朝はフリーペーパーのMETRO、夕方はEvening Standardが各駅や大通りに置かれています。こちらの富裕層の多くは遠距離通勤なので、皆さん、それを手にもって電車に乗ります。

 

だから、どの新聞を選ぶかは、階級よりも、その時々の関心や読者の教育水準に直結していると思います。

 

長くなりましたがこの辺で。