英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

EU離脱交渉妥結(ブレグジット その5)

英国のEU離脱交渉が妥結したと11月14日、欧州委員会と英国政府から発表されました。14日夜には英国政府のウェブサイトに585ページに及ぶ協定文書(案)が公表されました。

 

メイ首相は、14日14時に閣僚会議を招集して内容の説明を行ったのですが、かなり難航したようで、19時に閣内合意を得たと発表しました。

 

しかし、その時点で約10名の閣僚が不服だと表明したそうで、翌朝9時前に交渉の主役だったドミニク・ラーブEU離脱担当相が辞任しました。辞任理由は後述しますが、交渉担当者が辞任するほど、英国にとって問題のある合意内容だということです。

 

合意文書への批判の口火を切ったのはトニー・ブレア元首相で、「これは妥協compromiseではない。無条件降伏capitulationだ」と述べ、再度の国民投票を要求しました。その後、capitulationという単語があちこちで使われています。離脱派は「ノーディールの方がマシ」との主張を繰り返していますし、2度目の国民投票を要求する声も高まっています。

 

また、メイ首相自身に辞任を求める動きや解散総選挙などの話も出ていますが、代わりの首相候補がジョンソン外相以下、パッとしません。そこがメイ首相の強みと言えるでしょう。ポンドや株価が下落する中、水道会社の株価も下落、これはコービン労働党首(水道会社の公営化を目指している)の首相就任を危惧してのものだそうです。

 

さて、辞任したラーブ離脱相の後任はまだ決まっていないようです。他の閣僚も辞任しする中、マイケル・ゴーブ環境・食糧・農村地域相に打診があったものの、ゴーブ氏自身も閣僚を続けるか迷っているとのうわさがあります。首相府の猫ラリー君も「打診があったけど断った」とツィート。深刻なニュースの中にこんなジョークが紛れ込むのが英国のおもしろいところです。

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さて、ラーブ離脱相の辞任理由ですが、2点挙げています。両方とも北アイルランド国境問題に関するもので、1つは、バックストップと呼ばれる移行期間後の北アイルランドの取り扱いについて、英国の他の地域と異なる扱いにすることは英国の一体性を脅かすということ、この制度の運用期間には期限がなく、英国が不要と判断しても、EUの了解なしには廃止できないことです。主権の侵害につながるこの制度を受け入れることは国民への裏切りにつながる。それならノーディールのがマシだというのが同氏の考えです。

 

同氏の辞任は、驚きを持って報道されていましたが、14日朝のガーディアン紙には「辞任もあり得る」と書かれていましたので全くの予想外でもないようです。同紙はラーブ氏を含む離脱派の辞任について「EU離脱が実際には全く機能しないことを思い知ったからだろう」と書いていますが、同紙は残留派、デイリーテレグラフは離脱派で、新聞ごとに論調が大きく違うのが英国の特徴です。

 

協定合意文書の内容については、14日からBBC の各分野の専門家が手分けして解説しており次のページに出ています。私もダウンロードしてみてみましたが、ラーブ離脱相の辞任理由にもなった北アイルランドの取り扱いが大きくそれだけで100ページ以上にもなる一方、通商、漁業などについては、移行期間中の交渉に先送りされていました。

https://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-46208764?intlink_from_url=https://www.bbc.co.uk/news/topics/cwlw3xz0lvvt/brexit&link_location=live-reporting-story

 

メイ首相は15日には、3時間ほど議会で説明を行い、「ノー・ディールか、ブレグジット撤回か、この合意を支持して交渉を進めていくかだ」と述べ、合意案への支持を求めましたが、同首相への不信任案を集めるグループがいる上、閣内協力をしていたアイルランドの民主統一党(DUP)が不満を表明しており、議会承認に必要な賛成者が果たして集まるのか、いよいよ混沌としてきました。

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