英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

英国を拙速なEU離脱に導いた政治家たち(ブレグジット その4)

英国とEUのブレグジット交渉は妥結したようで、メイ首相は今日11月14日14時に臨時閣議を招集したそうです。合意内容や今後の日程については、改めて書かせていただくとして、国民投票以来の混乱で明らかになったことは、EU離脱に対する準備不足、国民のコンセンサス不足です。

 

EUは問題だらけの組織ですから、離脱するという判断は正しいのかもしれません。英国は欧州の一部ではあるけれども、大陸諸国とは常に一線を画していると感じられます。英国がEUに入ってしまったのが間違いだったとのかもしれません。とはいえ、半世紀を経ての離婚ですから、双方に大きな傷を残すことは間違いありません。

 

どこかに、用意周到な老練な政治家集団がいて、それが10年くらいかけて離脱の準備を進め、万端となったところで、離脱の是非を国民投票にかけることができたとすれば、EU離脱の効果は高いだろうと思います。

 

しかし、今回のEU離脱は、明らかに準備不足。今日明かされる協定合意案は、おそらく長い移行期間や北アイルランドを失うリスクを含むものだろうとおもいます。合意案を議会が了承し、批准にこぎつけたとしても、やはり「拙速な離脱」になることは避けられそうもありません。そして、「拙速な離脱」を招いたのは政治家たちだと思います。

 

政治家の中でも最も罪が重いのは、デービッド・キャメロン前首相。全く準備もせずに、「保守党が選挙で勝ったら国民投票をやってもいい」と口を滑らせ、それが選挙公約になり、国民投票で離脱が決まるとさっさと辞任した人物。その無責任さは歴史に残るでしょう。英国をばくちにかけて飛ばしてしまったようなものです。国民投票前に、離脱派が根拠のないウソで固めた宣伝活動をしていたのに有効な反駁さえしなかった責任も重いです。

 

前首相は引退後、自宅の庭に2万5,000ポンドの小屋を買い、それを一缶1万円近いFarrow& Ballのペンキで塗装し、その中で自伝を書いていたそうです。自伝の中身は首相時代の功績を自画自賛するもので、国民投票に至った反省の弁はないらしいです。当初10月に発売される予定でしたが、昨今の政治情勢の厳しさから批判の的になりかねないと、発売を見合わせているそうです。

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キャメロン前首相 デイリーメール紙

キャメロン前首相と同じ位ひどいのがボリス・ジョンソン前外相です。離脱派の旗頭ですが、離脱支持の目的は、英国の首相になることで、投票で離脱派が勝つことを実は望んでいなかったそうです。国民投票後、首相選に立候補しなかったのは、盟友と信じていたマイケル・ゴーブ議員(現環境・食料・農村相)が裏切って首相に立候補したためですが、問題発言が多く、外相在職期間中に英国の外交がめちゃくちゃになってしまったそうです。

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ジョンソン前外相 https://blog.francetvinfo.fr/

 

キャメロン前首相とジョンソン前外相には共通点があり、ともに名門子弟が通うイートン校からオクスフォード大学に進学したお金持ちのドラ息子です。揃ってオックスフォード大学の中でも、最も悪名高い「ブリンドン・クラブ」の会員でした。このクラブは、毎年数名の金持ちの男子学生に入会を認める社交クラブです。悪名高いと書いたのは、学生の分際で、高級レストランで食べ散らかした挙句、店の設備を破壊したり、物乞いの目の前で数百ポンドを燃やして見せつけたりといった非行で知られる団体だからです。


こんなクラブの出身者を国のトップに据える英国民や保守党員の感覚が分かりません。しかし、わがままドラ息子達に政治を弄ばれた結果、庶民の若者がそのツケを払うことになるところにブレグジットのやり切れなさがあります。

 

ついでに言うと、3番目の問題政治家がこの人。庶民の若者達の未来を守るべき役割を期待されている野党労働党のジェレミー・コービン党首、これがブレグジットに関しては、全くの無策だったことも残念です。この御仁、筋金入りの左派社会主義者で、ユダヤ人嫌いの言動で非難されています。保守党の政治家が、英国の政治を滅茶苦茶にしているときに、歯止めをかけることが最大野党の役割として期待されていると思うのですが、この2年間、そういった手腕は全く見られず、ブレグジットの混乱に対して有効な対応を模索する様子も一切みられませんでした。

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コービン党首 Business Insider UK

 

そうした国会対応に不満を持つ議員が、影の内閣を続々と辞任したこともありました。しかし、党内議員の受けは悪いのですが、その不気味なカリスマ性から一般党員の中に熱狂的な支持者がいるそうです。目下英国の産業界の最大の懸念はブレグジット後にコービン党首が首相になることだと言われています。

 

EU 離脱合意案は、今後、英国議会で審議され、承認されて初めてノーディールでない離脱となります。ジョンソン前外相、コービン党首、それからここには挙げなかったけれども、リース・モグ議員などの離脱強硬派や元首相達を含む残留派がそれぞれ合意案に反対票を投じると宣言する中、議会で無事、批准されるのか、まだわかりません。

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ネコに聞いたBrexitの方法

「僕が思うに、出して、出してと何度も訪ねて、いつドアが開くのかと、ドアの前に座ってじっとドアを見つめているのさ。それが僕がすることだよ」

https://www.dailykos.com/stories/2016/7/10/1547062/--Cat-What-s-your-opinion-on-the-UK-leaving-the-EU