英国の庭から

欧州調査歴25年のリサーチャー兼駐在員妻です。英国在住歴は通算10年。庭仕事のかたわら、言いたい放題つぶやきます。

EU離脱交渉、進展なし (ブレグジット その3)

10月17日、18日と2日間にわたってブリュッセルで開催されたEU首脳会議が終わり、「ブレグジット交渉については進展がなかった」という発表がありました。交渉開始時点では、この首脳会議があたりで合意することが期待されていたのですが、まったく進展しなかったようです。

 

11月中旬に行う予定とされていた臨時首脳会議も、EU側が「交渉が進展したら開催する」と条件をつけて撤回したそうです。かくして、交渉は引き続き行われるものの、交渉合意がいつになるのか予想がつかなくなってきました。クリスマス前に何とか合意してほしいものです。

 

メイ首相は62歳、アニマル柄を愛し、大振りのネックレスが好きな女性校長みたいな雰囲気の人物です(同じアラ還というわけですが、ちょっと趣味が違うかも)。キャメロン首相が賭け飛ばした連合王国をなんとか守ろうと、離脱派からも残留派からも中途半端と批判されたEU離脱案「チェッカーズプラン」を掲げて交渉に臨んでいます。四面楚歌にも似た厳しい環境の中、よく頑張るなぁ・・と感心。

 

EUというのは、担任教師がいない学級会のような集まりです。生徒が28人いて、そのうちの一人が「もう嫌だ。こんなクラス、出て行く!」と騒いで飛び出すようなもので、級友にしてみれば「変な奴。勝手にすれば~!」みたいなイメージ。そう考えれば、同等の立場で交渉が成り立つ方が不思議ですが、そうは思わないのが英国人。敗戦を知らないせいか、いつも母国語で交渉できて相手を言いくるめることが当たり前になっているせいか、自らの主張を一方的に要求することに何のためらいも感じない。主張が受け入れられないと一々「驚いている」のだからすごい国民性です。

 

まあ、それでも、さすがに期限切れが目前に迫る中、新聞を見ていると悲壮感が増しつつあります。最大のネックとなっているのは北アイルランドの扱いです。

 

EU側は「アイルランドと北アイルランドの間に物理的な国境(ハードボーダー)を設けないのなら、北アイルランドだけはEUの関税同盟に残っても良い」という妥協案を出してきたのですが、英国側は「ハードボーダーは作りたくないけど、北アイルランドだけを関税同盟に残すようなことはできない」と主張しています。

 

北アイルランドだけを関税同盟に残すことは、北アイルランドの主権を失うに等しく、国内の政治基盤が脆弱で北アイルランドの政党DUPの閣外協力を仰いでいる中、この問題はアイルランド紛争の再燃の懸念も含んでいるし、メイ首相としてもなかなか妥協できそうもありません。

 

今後の見通しですが、交渉妥結できた場合、双方は協定案の批准手続きに入ります。EU側では淡々と進む可能性がありますが、英国側では、議会で紛糾する可能性がかなりあります。というのは、合意案は議会での承認が必要なのに、既に相当数の議員がメイ首相の合意案に反対すると表明しているからです。

 

仮に合意案が議会で否決されると、その後はどうなるでしょう?メイ首相にはいくつかの選択肢があります。議会を解散して選挙を行う、メイ首相自身が辞任する(そのあとはどうなるのかわかりません)、新たな合意案を作成し直す等々だと思いますが、いずれも時間がかかりそうです。

 

国民の中に、離脱前に国民投票を要求する運動も盛り上がっており(これも何を問う国民投票なのか、明らかではないのですが)、今週20日(土曜日)にはそのためのデモ行進がロンドンで行われるそうです。ロンドン市長、カリスマ料理研究家デリア・スミスなど、かなりの数の著名人が参加すると報じられています。

 https://www.theneweuropean.co.uk/top-stories/anti-brexit-events-in-my-local-area-including-protests-marches-and-socials-1-5464362

 

そういうわけで、今月に入ってノーディールに向けた準備が始まっているとの報道が散見されるようになりました。スーパー大手のテスコがクリスマス以降、食料の在庫を増やすと発表したほか、最も貨物量が多い高速道路M26(フランスとつながるユーロトンネルやドーバー港とロンドンを結ぶ高速道路)ではトラック専用の待機駐車場を建設するため来月中旬から1か月間、夜間の通行を止めて工事を行うそうです。

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 (写真はEuropean Councilウェブサイトから)