英国の庭から~海外生活ブログです

オランダで還暦を迎えた駐妻。英国での5年弱、2度目の駐在生活を終え、オランダ生活も3年を過ぎてしまいました。けたところでロックダウン入り。できる範囲で何をしようかと模索中。

腱鞘炎との闘いの記録

こんにちは!ゐです。

久々の話題は腱鞘炎です。5月中旬に右手親指を傷めてしまい、9月中旬になって9割方、治りました。4カ月間、ああでもない、こうでもないと調べて、自分で対策を講じてみたので、参考までにご報告します。長いのでお時間があるときにでも。 

腱鞘炎になったきっかけ

直接のきっかけは庭仕事でした。前庭のタイルの目地に生えたしつこいスギナを退治しようと、日本の百円均一店で買った太い注射器に除草剤を入れてはスギナに注ぐという作業を繰り返していたのです。作業中、右の親指の付け根がだるくなってきて、段々痛みが増してきました。

2~3日、だましだまし過ごしていたのですが、全然痛みが引かない。さらに親指の関節がうまく曲がらず、「カックン」となるようになってきました。指も腫れてきました。これ、いわゆるばね指というものです。調べると、ばね指は腱鞘炎の典型的な症状のようです。

腱鞘炎とはどのようなものか

人間の手の動きをつかさどっているのは、とよばれる組織だそうです。

指を曲げる時に働くのが手の平側に走っている屈筋腱、伸ばす時にに働くのが手の甲側にある伸筋腱です。これらの腱が骨から大幅にはずれてしまわないようにところどころに靭帯性腱鞘というベルト通しのようなもので留められています。何等かの理由で、腱鞘が傷み、腱がやその周辺が腫れてしまった状態を腱鞘炎と呼ぶそうです。

分かりやすいので図をご覧ください。こちらは日本整形学会のページからお借りしてきました。

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https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/snapping_finger.html

今回、私が傷めたのは手の平、親指の付け根にあり屈筋腱が出入りするある腱鞘のよう。これが腫れて腱がうまくすべらなくなる腱も腫れ、その周辺にも腫れが生じます、その結果、上の方の関節がスムーズに曲がらなくなるそうで、それを「ばね指」と呼ぶのだそうです。狭窄性腱鞘炎が正式名称です。私の症状にぴったりの図が高知県のさとう整形外科のウェブサイトに出ていましたので、お借りしてきました。赤いところが痛い場所です。

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http://www.satoseikei-cl.jp/hand01.html

腱鞘は手首にも2カ所あって、指の背の側の腱つまり、親指を伸ばす伸筋腱に問題があると、手首の腱鞘が炎症を起こすそうで、「ド・ケルバン腱鞘炎」と呼ぶのだそうです。ド・ケルバン腱鞘炎については第一三共製薬のぺージから図をお借りしました。

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https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/51_kensyoen/

安静にすればいいのか

さて、痛みが強まるにつれ、じっとしてはいられないので何か良い治療法はないかと連日のように検索してみました。異口同音に安静にして、固定し、使わないことが推奨されています。推奨されている固定用のテーピングをして、ジェルタイプの痛み止めを塗って様子を見てみました。日本に多い貼るタイプの痛み止めは、オランダにも売っているのですが、日本の3倍くらいとべらぼうに高く、種類も少ないのです。

しかし、全く効きません。日増しに痛くなる一方。

そもそも、テーピングをしようが、何をしようか、主婦にとって利き手の親指を固定したり使わないようにすることは至難の業なんです。いや、主婦でなくても親指と言うのは実にいろいろなことに使う。それに加えてオランダのものは何でも硬い。玄関のドア、冷蔵庫の扉、調味料の蓋、こういうのを開ける作業が積み重なったのも、手に負担がかかる要因でしょう。

とはいうものの、1週間もすると、夜間、眠っている間に無意識に指を深く曲げてしまい、元に戻らなくなって指の付け根の腱鞘があるあたりに激痛が走り、目を覚ますという困った現象が出てきました。その痛いこと。痛さに耐えかねてある晩、木工用の棒を絆創膏で親指に留めつけてみました。その翌日には金属の板をつけてみました。これは固定効果は高いです。寝ている間に指が曲がることはありません。でも血行が悪いせいか、しばらくすると指が冷たくなり痛みがさらにひどくなりました。安静と言われているけど、実際にところ、血行が悪くなってしまうので治癒につながるのか?疑問が出てきました。

夜間に必要なサポーター

そうは言っても夜間に無意識に曲げてしまうのを避ける意味でなんらかの固定は必要

日本だと腱鞘炎用のサポーターのようなものが多々売っています。Amazon.jpで「腱鞘炎 ばね指」で検索したら1,000件以上もヒットしました。それに価格も安い。オランダの場合、Amazon.nlはあるものの、家庭用雑貨などの品揃えはお粗末な限り。それ以外のサイトをみても、あまり種類がありません。しかも寝ている間に指が曲がらないように支える力のあるような品はいずれも1点35ユーロ以上。私に合うSサイズも中々売っていない。それでも近所の薬局で1つ買ってみたけど全然効果はありませんでした。

苦肉の策として、お手製ギプスのようなものを作ってみました。ヤクルトの容器を切って親指の関節にゆとりを持たせて巻き付けて絆創膏で留めて就寝する。これは多少楽になりました。もし、私のような海外在住で、自分で作ろうと思う方は、容器をはさみで切った後、ギザギザしているので爪やすりなどでなめらかにしたり、角を爪切りなどで丸くすると不快感が少なくなります。素材はヤクルト容器が硬すぎもせず、柔らかすぎもせず具合がいいです。

こんな感じ。夜間にうっかり深く曲げてしまわないようにつけるサポーターです。注意する点としては、ちょっと「あそび」がある方が良いようです。自分でちょうどいいゆるみを作ったり、手の平側はやや細めにすると無理なく指を緩く曲げられます(まっすぐ伸ばし過ぎない方が良いみたい)。

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このように、ヤクルトの容器を好みの形、サイズに切り、絆創膏でとめるだけ。

治療法にはどのようなものがあるのか

さて、この厄介な腱鞘炎、掛かりやすく長引きやすいリスク群というのがあるようです。NHKの番組によると1.手指を使う人、2.女性(特に更年期、妊娠・出産期)、

3.糖尿病の人、4.人工透析を受けている人、5.関節リュウマチの人。

まずい。私は1~3まで該当するじゃありませんか。しかも「糖尿病のある人は、末梢の血液が滞ることや、炎症を起こすと治りにくいことから、腱鞘炎を起こしやすくなると考えられています」。ガーン。

しかしここに1つの重要なヒントが含まれています。「抹消の血液が滞ると炎症は治らない」ということは「抹消に血液を流れやすくすれば炎症は治る」ともいえるでしょう。

さて、自分のリスクの度合いがわかったもので、腱鞘炎と自覚してから、あらゆるサイトをみてみました。そして見つけた治療法は次の通りです。

1.外科で行う治療

 ①当該の指とその周辺をギプスで固めて6週間ぐらい全く使わない

 ②傷めた腱のあたりに直接ステロイド剤等を注射

 ③手術(肥厚して通りにくくなっている腱を切ってしまう)

2.テーピング

3.鍼灸、ツボマッサージ、肩甲骨裏の筋膜リリース

4.運動療法(手を開いたり閉じたりするグーパー体操とか、全身の筋トレとか)

他にもありますが、上記が主要なものです。

2~3を自分でやってみようと、見よう見まねでテーピングをしてみたり、ツボにピップエレキバンを貼ってみたり、筋膜リリースもどきをやってみました。グーパー体操も殆ど1日中やってみました。

結論から言うと、素人がなにをやっても全く効きません

しかしやっている間にそれぞれの方法に習熟してきました。結局、1の外科的に患部にアプローチする方法以外は、どれも自己治癒力で治すという趣旨なんです。

そして、自己治癒力で治すというのは、できる人とできない人がいることがわかりました。例えば、10~20代のスポーツ選手、こういう方々はが治った療法を私が試しても、潜在的な自己治癒力が違う。元々の身体能力が低い上に、ホルモンが枯渇し、糖尿病やら老化現象でマイナス要因の多い私。末端の筋肉に届く栄養が足りないのです。

鍼治療を10回やったら良くなったという20代のスポーツ選手の話なども多々ありましたけど、彼らですら10回もかかった治療法、アラ還の私だったら何回かかるんだろう?

それに鍼や整体治療で一発で治ったというのなら、その治療法に効果があっただろうと思います。でも10回となると本当に治療による効果だったのか、治療に要した数週間で自然治癒したのか、実際のところわかりませんよね。

まあそんなことより、今年はコロナでロックダウン状態。来たばかりのオランダで良い鍼の先生を探すというのも億劫だったので、鍼灸治療は断念しました。

腱鞘炎の深刻な弊害

炎症を起こした腱鞘というのはせいぜい数ミリの筋肉です。昨年、五十肩をやったときも炎症を起こした部分というのはせいぜい数ミリなり数センチの筋肉でした。しかしその故障によるインパクトたるやすさまじいものです。

しかも、五十肩の時、効いたテーピングも一切効かない。炎症を減らそうとイブプロフェン剤や喘息の時にもらっていたステロイド剤を飲んでみたり、蕁麻疹の時、処方されたステロイド軟こうを痛む腱鞘のあるあたり塗ってみたのですが全く効きません。

つまり手や指は、それほど、薬剤や栄養分が届きにくいということです。糖尿病などで手や足の指が壊死してしまうというのはこういうことなんだとよくわかりました。

利き手の親指の痛みというのは、予想以上に大変でした。何をするにも親指と言うのは大活躍なんです。一番大変だったのは、トイレで脱いだジーンズを履こうと引き上げたり、玄関の鍵をまわすこと、ペットボトルの蓋を開けること、そのたびに激痛が走ってはうめいていました。

そしてもっと大変だと思ったのは、1カ月半くらいしたあたりから、ちょうどコロナのロックダウンで、外出も外食もできないという事情もあったのですが、精神面にもおかしな影響が出てきたのです。何をするにも億劫。午前中から眠い。午後も気が付くとソファーで横たわって昼寝ばかり。PCに向かうのもキーボードが使いにくいので、スマホを眺めては寝落ちするばかり。と、どろどろと鬱っぽくなっていったのでした。

外科的治療を試してみる

このままではいけないと思って、外科的治療の模索を始めたのですが、ロックダウン下のオランダでは医療サービスを受けること自体が容易ではありませんでした。掛かりつけ医に電話をしても留守番電話しか応答してくれない(しかもオランダ語)。そこで、日本人駐在員向けの医院に行き、手専門の外科医を紹介してもらうことになりました。我が家は夫の会社が掛けてくれている医療保険でカバーされましたけど、留学生などで自費でオランダに来ている方は大変だと思います。診断と紹介だけで140ユーロですもん。

しかも、日本だと思い立ったらすぐに外科にかかれるのですが、オランダでは整形外科の分業が進んでいて、手専門の外科でなければ応じてもらえません。外科治療をしようと思い立ってから、手専門の外科の予約がとれるまでには6週間もかかりました。そして待ちに待った7月20日、Hand Clinicという手専門の外科に行きました。

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外科医は腱鞘炎の治療法は上記の通り、3通り(固定、注射、手術)あると説明してくれて、その長所と短所の説明がありました。①ギプスで固定は、生活上の不便が著しい。➁の患部に直接炎症を止める薬を注射する方法はその場で可能だが、効くまでに3~6週間、効く人はせいぜい6~7割程度、さらに3カ月~半年ぐらいで再発する人が多い。③の手術は99.7%は治癒するが、さらに6週間待ち。

診察当日にできるのは注射しかありません。手の平(親指の付け根)に注射って考えるだけでも痛そうでだったものの、否応なく選択しました。まあ耐えられないほどではありませんでしたが、その晩はむしろ痛みが強まった感じで、翌々日になってようやく頑固な痛みが引き始めました。

症状が改善するまでには、予想以上に時間がかかり、親指のばね指現象がなくなるまでに約2週間、親指の腫れ、手の引き攣れたような感じがなくなったのはほぼ1カ月後、時々腱の部分がしくしく痛むような感じからほぼ解放されるまでに2カ月近くかかりました。

おかげさまで9月末の時点で、95%ぐらい治った感じ。腫れはひきました。でも親指の付け根の部分が時々チクチクします。これが「痛かった記憶」によるものなのか、あるいは筋肉の傷や炎症がまだ残っているのかはわかりません。この治療法の問題は再発し易いことで、早い人では3カ月、半年もするとかなりの比率で再発するようです。

再発を防ぐために

ともあれ、腱鞘炎が治るに連れ、精神的にも浮上してきました。

そうなると次の課題は再発をいかに防ぐかです。まずは原因究明が必要です。

ここで夫の事例をご紹介すると、夫も2年近く前に腱鞘炎を患ったのです。彼は手首が痛くなるタイプ。ロンドンの日本クラブ診療所でステロイドの注射をうってもらって、さらにロンドン在住の天才的な気功の先生にも2回くらい通ってほぼ治癒したそうです。治療後、それまで使っていた重たい手提げタイプのビジネスバッグをやめてリュックに買い替えたそうです。ロックダウンで出張や外回りが減ったことも幸いし、今のところ再発していません。

私の場合、直接のきっかけは庭仕事ですが、その少し前から右手親指に少し違和感がありました。その原因は3月に購入したiphone11。これが前の機種(6plus)よりかなり重いことと、プッシュボタンがなくなって親指で弧を描く動きを頻繁に行うのが負担となっていたのです。

というわけで、最近は左手でスマホをもったり、スマホで読書するのをやめてもっと軽いKindleで読書をするなど右手の負担を減らしていますが、左手を多用しているせいか、最近左側がテニス肘っぽくなってきました。

もうひとつ、多くのウェブサイトが指摘しているように、手のトラブルというのは腕や肩や姿勢や筋肉の不足に遠因があるのです。だから根本治療としては、全身を改善しなくてはダメということでストレッチをしたり筋トレを始めています。

さて、そのストレッチ法ですが、色々と見比べて一番、良さそうだと思ったのはシドニー在住のセラピストしょうじ先生の「腱鞘炎を根こそぎやっつける方法」と言うビデオです。腱鞘炎がひどい時期にはこの方法をとっても炎症を引かせることはできませんでした。でも、予防に有効そうです。

www.youtube.com

次に腱鞘炎になったら

さて、今回の腱鞘炎は何とか勝利を収めたものの、何しろ高リスク群にいる私。おそらく、これが最後ではなく、これは初戦で、今後の人生で何度か再発したり別の指が腱鞘炎になることがあるでしょう。

「腱鞘炎 手術しないで治す」と言う言葉で検索すると無数のウェブサイトを検索することができます。手術はやはり究極の手段で、避けられるものなら避けたいところ。しかし、これは本当にその人の自己治癒力次第。

上述したように、たった数センチの腱の炎症から鬱にもなるわけで、腱鞘炎は軽視すべきではないと思います。

次回、腱鞘炎になったら、速やかに手専門の外科にいって重症化する前に炎症を抑える薬を注射してもらおうと思っています。私の体は自分の力で末端の炎症を抑える能力が足りないと自覚したからです。これ、怖いことで、他の病気の治癒力も低下しているということです。あーあ。

そして、外科的に炎症に対処してから、原因を究明して、問題を取り除きつつ、ストレッチなり全身の運動なり、必要なら筋膜リリースでも鍼灸治療でもしようかと思います。

これをご覧の方で、ご自身の治癒能力に自信がある方に外科に行けと勧めているわけではありません。痛いのは自分なので、ご自身の納得いく方法で対処されるのが一番です。

と言うわけで、長くなりましたが、腱鞘炎との闘いについての報告とさせていただきます。